27歳・田沢純一“未完の豪腕”が完成するとき

杉浦大介

大きい上原の存在「本当にとても良い環境」

今度どこまで成長するのか、チーム内での期待も大きい 【写真は共同】

 右ひじもすでに100%の状態に戻り、思い描いた通りのリリースポイントで投げられるようになった。起用法も徐々に定まったことで、日々のルーティーンも確立されて来ているはず。そして、昨季は低迷したチームも復活し、現時点でア・リーグ東地区の首位に立っている。

「去年も去年で学ぶところは大きかったけど、今年も良いですよね。特に今年はブルペンに同じリリーフ投手の上原(浩治)さんがいるんで、凄く勉強になっています。例えばスプリッターのこととか技術的にも話してくれるし、冗談を言ってリラックスできたり。あれだけ実績のある人なので、本当にとても良い環境だと思っています」

 新たに上原という師匠も得て、今の田沢が非常に快適に日々を過ごせていることは伝わって来る。このままチームも勝ち進めば、プレーオフ争い、さらにはポストシーズンの大舞台でのデビューも視界に入って来る。長い紆余曲折を経て、今の田沢は収穫の時期に近づいているのかもしれない。

豪腕リリーバーはどれだけ大きくなるのか

 ただ……その一方で、この未完の大器にはそこそこの状態で満足して欲しくないとも思う。今後も伸びやかに成長し、さらに迫力を増し、ポテンシャルを完全開花させて欲しいと願わずにはいられない。
 日本では本格派で売っても、よりパワフルなメジャーではかわす投球に走る日本人投手も見て来た。そんな中で、トミー・ジョン手術後の田沢純一は、1〜2イニングなら力の投球でメジャーの猛者たちを圧倒できる希有な逸材である。しっかり身体をケアし続け、多少の失投でも球威で打者を討ち取れるような支配的な本格派に育っていって欲しい。

「まあ、たまたま真ん中にいっても空振りが取れたりすることはありますけどね……ただ、やっぱり良いコースに投げれるに越したことはないので」
 筆者の勝手な期待を伝えると、いつも通りの淡々とした答えが帰って来た。もちろん、その通り。飛躍の前には土台の部分を徹底させなければならず、この謙虚な姿勢の先にさらなる向上が見えて来る。

 日本時間6月6日には27歳の誕生日を迎え、全盛期はこれから。心身ともにピークを迎えるであろう数年後までに、メジャーの魅力を体現できる豪腕リリーバーはどれだけ大きくなるのか。その完成形が拝める日を楽しみにしているのは、もう筆者だけではないはずである。

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著者プロフィール

東京都生まれ。日本で大学卒業と同時に渡米し、ニューヨークでフリーライターに。現在はボクシング、MLB、NBA、NFLなどを題材に執筆活動中。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボール・マガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞・電子版』など、雑誌やホームページに寄稿している。2014年10月20日に「日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価」(KKベストセラーズ)を上梓。Twitterは(http://twitter.com/daisukesugiura)

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