ザック監督「本田の交代は考えた」=W杯アジア最終予選 豪州戦後会見

スポーツナビ

今野は見事な仕事をしてくれた

――日本には「しまった」という言葉がある。選手を代えて失点したことで、どんな言葉や映像が浮かんだのか?

 むしろ交代のカードを切ってからチャンスを演出したと思っている。確かに「しまった」という言葉を使ったが、それは交代直後に長友が裏に抜けてゴールを狙い、中央に本田がフリーでいたシーンを見た時のことだ。

――本田と岡崎(慎司)は合流から日数がない中での出場になったが、今日の本大会出場を決めるためには、多少無理をしても使う必要があるという判断だったのか?

 チームというのは、さまざまな特徴や長所を持った選手たちをうまく組み合わせて作るものだと思っている。クロスがうまい選手もいれば、パスがうまい選手もいる。ゴールに向かうのが得意な選手もいる。本田はウチのトップ下の選手だが、彼の何が違うかというと、前でキープできるという特徴を持っている。対戦相手がオーストラリアということで、フィジカルも強いということで起用した。

 右の岡崎は、ザックジャパンの得点王だし、疲れているように見えても、このチームの中で最も多くゴールに向かうことができる選手だ。岡崎に代えて清武(弘嗣)を投入したのは、わたしが清武のことが大好きだからだ(笑)。やはり代表は集まる機会に限りがあるので、クラブチームのように選手をいじりづらい状況は確かにある。交代カードを3枚切ったが、入った3人は本当によくやってくれたと思う。

――長友をポジションチェンジして長く使ったが、左足でクロスを上げるシーンがブルガリア戦も含めてあまりなかった。コンディションはどうなのか。また、コンフェデ杯に連れていって戦えるのか?

 長友が抱えている問題は、合流する前に1カ月半くらいトレーニングができなかったことだ。コンフェデ杯に行く前に、約10日くらい期間があるので、スタッフと一緒に彼のフィジカルコンディションを上げていこうと思う。今夜もよく走ってくれた。ここからコンフェデ杯でまでに、長友、本田、またシュツットガルトでなかなか出番がない岡崎にしても、フィジカルコンディションをもっと上げる必要があるが、それまで10日ほど準備期間がある。一番大変だったのが今日で、ロングフライトや不安定な状況がある中、みんな自分たちの仕事を全うしてくれたと思っている。

――守備陣の評価はどうか。特に(ティム・)ケーヒルを止めた今野(泰幸)について

 今日はみんな、本当によくやってくれた。その中でも今野がケーヒルのマークに付くということで、非常に難しい役割を担っていたわけだが、実績のある選手に対してしっかりと抑えてくれた。また、途中で入った栗原もいい出来だったと思うが、とりわけ今野は見事な仕事をしてくれた。

チームとして成長しないといけない

――今日はいいパフォーマンスだと思ったが、試合前に選手にどんな声をかけたのか?

 選手たちには、これまでの戦いや順位表を見れば、われわれがアジアでナンバーワンであると。今日の対戦相手は強くて難しいとはいえ、自分たちが持っている実力を見せつけて、アジアでナンバーワンであることを証明しようと言った。

――去年、フランスやブラジルと対戦したとき「チームの方向性は間違っていない」と語っていたが、W杯までの1年を考えた場合、何か新しいものに取り組んでいくのか。それとも精度を高めていくことを考えているのか?

 その質問に答える前に、チーム全体で向上心を持って、チームとして成長しないといけないという気持ちを持つ必要があると思う。向上心を持っていれば、あるいは成長していこうという気持ちがあれば、もしそうならなかったとしても現状はキープできる。逆に現状をキープしようとすると、右肩下がりになるしかないと思っている。具体的に成長とは何か。当然チームの中に、クオリティーを高めるために、より力のある選手を連れてくることだ。またチームとしてのスピードやプレーの精度を高めること、さらには新しいことを試す、何かオプションを作るということも成長を高めることだと考える。

――3年前に日本に来て最も驚いたことは何だったか?

 今は2013年の6月4日、午後10時50分だが、この3年間でサプライズだったことを挙げるならば、2014年のワールドカップが開幕しても、話は終わらないと思う(笑)。

――(ホルガー・)オジェック監督は会見で、引き分けという結果に対して非常に機嫌が良かった。そこで質問だが、両チームとも引き分けで良い試合で失点し、そしてハンドでPKを得た。この2つの現象をどうとらえるか?(湯浅健二/フリーランス)

 今日のような2つのエピソードが立て続けに起こることは、(これまでのキャリアで)たくさん試合をしてきたけれど、あまり覚えていない。オジェック監督が気分が良かったのも頷ける。彼らはあと2試合、ホームで戦うことができるし、今日のゲーム内容としても負けるリスクはあった。それでも向こうは先制して、引き分けに持ち込まれたことは悔やんでいるかもしれないが、自分たちの状況と試合内容を照らし合わせて、引き分けでもOKと思ったのではないか。過去のオーストラリア戦では、李忠成がアジアカップ決勝で決めてくれたこと、そしてアウエーのブリスベンで取られないはずのPKを取られたことが思い出される。あのPKがなければ、もう少し早く(予選突破を)決められたのではないか。

<了>

※質問者に関しては、掲載許諾の確認が取れた方のみ明記しています。記名のない方は確認が取れていない方ですので、拒否されている訳ではありません。

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