米国帰りの五十嵐亮太に復調の兆し=鷹詞〜たかことば〜
投球スタイル確立できず「模索」続く
入団会見で、王貞治球団会長(右)にユニホームを着せてもらう五十嵐。王会長から評価を受けたことがソフトバンク入りの決め手となった 【写真は共同】
今年はWBCが開催されたため、投手が日米の違いで苦しむことを認識している読者の方は多いだろう。なかでもクローズアップされたのはボールの違いだ。侍ジャパンの投手陣は米国球の対応に苦慮したが、五十嵐は逆に日本球に戸惑ったのではないか。しかし、五十嵐は笑って否定する。
「ボールは僕も日本製の方が投げやすいと感じました。だから最初から違和感はなかったですよ」
五十嵐にとって、問題はマウンドの違いにあった。
「米国の硬いマウンドは、僕はラクでした」
米国は、日本のマウンドとは違って穴が掘れないほど硬く仕上がっている。
「日本のマウンドは滑る感覚があるからしっかり耐えないといけない。いわゆる下半身を使って投げないといけないんです」
しかし、五十嵐の頭の中は球種のことが優先されていた。米国と同じ投げ方で日本のマウンドに立てば、バランスが崩れるのは当然なのだが、五十嵐はそのことに気付いていなかった。「僕の悪い癖なんですが、何かにこだわってしまうと他がおろそかになってしまうんです」
2軍調整の“荒療治”で調子も上向きに
「ファームに来た時は本当にひどい状態だったけど、今は出来もよくなっている。(1軍昇格は)自分で決められることではないので、連絡待ちですね」
開幕から2か月が過ぎた。「チームには本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです」と五十嵐。しかし、挽回する時間はたっぷりと残されている。
日本復帰にあたり、ソフトバンク入りを決断したのは「王(貞治)会長に評価してもらえたことが、野球人として何よりうれしかったから」だという。そして「僕が高校生の頃、初めて握手をしてサインをもらったプロ野球選手が、現役時代の秋山(幸二)監督でした」。1月の必勝祈願で握手を交わした時、「あの時と同じ、大きくて柔らかい感触でした」と目を輝かせながら興奮を抑えきれなかった。
「勝ち試合の最後に僕が抑えて、ベンチ前で出迎えてくれる秋山監督とがっちり握手を交わしたい。ハイタッチが恒例? それじゃあもったいない(笑)。僕は握手をします」
本格的な暑い夏を迎える前に五十嵐が1軍に帰ってくれば、開幕からやや低迷気味のソフトバンクにもようやく爽やかな追い風が吹くはずだ。
<了>