佐藤琢磨、意味ある13位フィニッシュ=4度目のインディ500は苦しいレースに

吉田知弘

1年前の最終ラップから始まった挑戦

13位に終わった琢磨。4度目のインディ500は苦しいレース展開を強いられた 【Getty Images】

 2013年のIZODインディカー・シリーズ第5戦は、97回目を迎えた伝統のインディアナポリス500マイルレース。現地時間の26日、米国・インディアナ州のインディアナポリス・モーター・スピードウェイで決勝レースが行われ、唯一の日本人ドライバーとして参戦した佐藤琢磨(AJフォイトレーシング)は13位に終わった。

 今年は日本人として初めて同シリーズ戦で優勝。ポイントリーダーとして迎えた自身4度目のインディ500は、実は1年前の最終ラップから始まっていた。昨年の決勝、19番手からスタートした琢磨はレース終盤に2位までばん回。最終ラップに入るところで首位のダリオ・フランキッティ(チップ・ガナッシ・レーシング)の横に並び、サイド・バイ・サイドの状態でターン1へ進入する。これには長年、インディアナポリスに通い続けたレースファンからも大歓声が沸き起こり、ターン1に注目が集まった。しかし追い抜くことができず、バランスを崩してウォールにクラッシュ。フランキッティに軍配を上がった。それでも、高いリスクを背負いながら“優勝だけを目指して”果敢に挑戦していった勇敢な日本人ドライバーの姿に、アメリカのレースファンは釘付けになった。

 あれから1年。過去4度インディ500を制したAJ・フォイト氏がオーナーを務める名門チームAJフォイトレーシングに移籍した今シーズンは、開幕戦から好調を維持する。第3戦のロングビーチ(米国)で日本人初の優勝を飾ると、続く第4戦サンパウロ(ブラジル)では2連勝目前の最終ラップ最終コーナーで、ジェームス・ヒンチクリフ(アンドレッティ・オートスポーツ)に逆転を許したが、2位で表彰台を獲得した。これによりトータル136ポイントでシリーズランキング首位に浮上して、伝統の1戦を迎えた。昔からの伝統に従い、決勝の2週間前から練習走行などのイベントがスタートすると、昨年最もレースを沸かせてくれたドライバーが現ポイントリーダーとして聖地インディアナポリスに帰ってきたということもあり、初日からサインを求めるファンが彼のもとへやってくるシーンが何度も見られた。日本だけでなく、現地アメリカのファンも「琢磨のリベンジ」に期待して今年のレースウィークはスタートしていった。

天候に振り回され、不完全燃焼な予選に

 18日の予選1日目「ポール・デイ」。1台ずつ出走して4周連続でアタックし、その平均スピードが速かった順で決勝のグリッドが決まる伝統のルールで、今年も予選が始まろうとしていた。ところが直前に雨が降り出し、路面はウエットコンディションに。オーバルコースでは、雨が降った時点でセッションは中断されることになっており、今回も路面が乾き切るのを待ち、予定より2時間半近く遅れて予選が始まった。出走順は恒例のくじ引きで決められ、琢磨は2番目。いつもなら路面温度が上る前の早い段階でアタックすることができる有利な順番なのだが、雨の影響で路面状況が微妙に変化した今回は逆に後半のドライバーが有利になる。琢磨は与えられた状況下で必死にアタックを試みたが、結果は18位に終わる練習走行ではトップ10に入っていただけに不完全燃焼の予選となってしまった。

前半のスピンが大きな痛手となる

 悔しさが残る予選から1週間。いよいよ第97回インディ500決勝レースの日を迎えた。インディアナポリス・モーター・スピードウェイは分厚い雲に覆われ、途中で雨が降る心配も残る中、200周(800キロ)に及ぶレースがスタートした。6列目の外側、18番手スタートの琢磨は、序盤の混戦をうまく利用し、少しずつ順位を上げていく。およそ4分の1にあたる48周を終えたところで、6位までポジションアップ。予選までの不振がうそだったような走りでトップ集団を追いかけた。しかし、このあたりからマシンに異常が発生する。例年は気温30度を超える中で行われているインディ500だが、今年は16度と季節外れのコンディションに。この変化にマシンを合わせきれなかったことで、タイヤに予想以上の負担がかかり、少しずつバランスが狂い始めていった。

 そんな中、予期せぬ事態が発生する。57周目のターン2で前を走るマシンが予測とは異なるラインで走行。それに対応しきれなかった琢磨はマシンから発生するタービュランス(気流の乱れ)を浴びてコントロールを失い、スピンを喫してしまう。幸運にもウォールにヒットせず、マシンへの大きなダメージはなかった。それでも、1周約40秒で周回するコースでは大き過ぎるタイムロスとなり27位まで後退。さらに周回遅れに陥ってしまい、優勝争いのチャンスを完全に失ってしまった。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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