佐藤琢磨、意味ある13位フィニッシュ=4度目のインディ500は苦しいレースに

吉田知弘

チーム全体で順位をばん回

アクシデントにもチーム全体で順位をばん回。今後もレベルアップが続けば、表彰台につながるレースも増えていくだろう 【Getty Images】

 これにより、この日3度目のフルコースコーション(コース上に危険なものがある場合などに、イエローフラッグが振られ、全車ペースカー先導のもと追い越し禁止となる状態)になると、ちょうどピットストップのタイミングだったため、琢磨より前を走るマシンは全車ピットインする。ここで周回遅れを取り戻すチャンスと判断したチームは、コース上にとどまることを指示。1周多く走ってトップと同一周回にした状態でピットインさせた。そして、ここでもチームクルーが迅速な作業で送り出し、後半戦でばん回するチャンスを作り出した。

 61周目にリスタートが切られると、再びトップ争いを目指して追い上げを再開。しかし、序盤から苦しんでいるマシンバランスは全く直らず、ついにはタイヤにブリスター(表皮部分に穴が開いたように見える異常摩耗)が発生する。ピットストップのスケジュールもライバルと比べて前倒しになっていくなど、なかなかばん回するチャンスを作れない。さらに61周目からレース終盤の194周目までフルコースコーションがなくクリーンなレース展開。毎回リスタートなどで順位を上げてきた琢磨にとっては、不運な後半戦となってしまった。それでもチームとともにあきらめずにできることを確実に実行し、最終的に13位までばん回してチェッカーを受けた。

 琢磨にとって4度目の挑戦だったインディ500。今年初のオーバルコースでのレースと例年を大きく下回る寒いコンディションで行われた決勝という部分で、マシンの状態が100パーセントではなく、さらに予選での雨や序盤のスピンにフルコースコーションが少ないレース展開と、運にも見放される厳しい内容となってしまった。

“シリーズチャンピオン”という目標へ

 順位だけで見ると悔しい結果だったが、これで21ポイントを稼ぎトータル157ポイント。残念ながらランキング首位の座はマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポーツ)に奪われたが、琢磨は11ポイント差の2位と上位をキープすることに成功した。「今回は期待外れだった」と思っているファンも少なくないだろうが、シリーズ戦全体という点で見ると、後々大きな意味を持つ13位フィニッシュになったことは間違いない。

 そして何より重要なのは、苦しい状況下でも予選順位を上回ってレースを終えたこと。今後、チーム全体でレベルアップが進めば予選での順位も間違いなく向上し、表彰台や優勝につながるレース展開に持ち込んで行くことも可能で、それが最終的にチャンピオン争いで必要な「高ポイントの獲得」につながっていく。日本人初のシリーズチャンピオン獲得という目標が待っている琢磨。早速、今週末に行われる第6戦で今回の悔しさを晴らすレースに期待したい。

<了>

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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