快進撃を続ける柏のアジア制覇の可能性=ACLでの戦いを最優先するチーム戦略

鈴木潤

アジア制覇を意識した柏の大型補強

全北現代モータースを下し、ベスト8進出を果たした柏。ここまでACLで6勝2分と無類の強さを誇る 【写真は共同】

 日本勢で唯一AFCチャンピオンズリーグ(ACL)に勝ち残っている柏レイソルが、ラウンド16で全北現代モータースを下し、ベスト8進出を果たした。 今シーズンの柏はACLでは依然として無敗を続けており、全北現代戦でのホーム・アウエーの連勝を含めてここまで6勝2分とアジアでの強さが際立つ。

 柏は、シーズン開幕前から明らかに“アジア制覇”を視野に入れていた。パルチザン・ベオグラード(セルビア)時代にUEFAチャンピオンズリーグでゴールを量産したFWクレオを広州恒大から、韓国代表右サイドバックのキム・チャンスを釜山アイパークから獲得。国内からもアルビレックス新潟から鈴木大輔、横浜F・マリノスから谷口博之と狩野健太の2人とJ1で十分な実績を持つ実力派を加えた。話題性では浦和レッズに主役の座を奪われたが、この豪華な顔ぶれをみると、柏の補強もまた“大型”と呼んで差し支えないだろう。

 さらに、プレシーズンに行われた、ちばぎんカップと富士ゼロックス・スーパーカップにおいては、ネルシーニョ監督が「勝ちにいく」としながらも、テストマッチの様相を色濃く打ち出し、“アジア仕様”の3バックシステムを試して2月下旬から開幕するACLに備えるなど、タフなアジアの戦いを見据えながら新シーズンへの準備を進めていた。

昨シーズンのアジアでの経験を糧に躍進

 同じくACLに出場したサンフレッチェ広島、ベガルタ仙台、浦和の3チームとは異なり、柏は2年連続でACLに出場し、昨年の経験を今年の戦いに反映できたという決定的な違いがある。昨シーズンもグループステージを突破し、ラウンド16まで勝ち進んだとはいえ、選手たちは今あらためて1年前の戦いを振り返り、「余裕がなかった」と話す。海外への長距離移動、日本とは全く異なるプレースタイル、球際での激しいぶつかり合い、スタジアムの独特な雰囲気、ジャッジの基準の違いなど、クラブ史上初めて挑戦するACLに昨シーズンの柏は苦しんだ。

 だが、苦しんだ経験が糧となり、クラブ全体が事前準備では選手の負担を極力減らすため移動日程など最善の手を尽くした。選手もまた「1回出場して、しばらく間が開くのではなく、連続で出場してすぐに経験を生かせることが大きい」と大谷秀和が説明するように、昨年体感したアジア独特の戦い方を今年の戦いに生かした。例えば初戦の貴州人和戦。この中国でのアウエー戦での白星発進がその後の快進撃を生むのだが、昨シーズンに同じ中国の広州恒大との対戦を経験していたことで、選手たちは「広州のアウエーを経験していたので、中国のスタジアムがどのような雰囲気か分かっていた」と、あの殺伐とした空気と、ボールが柏陣内に転がるだけであたかもチャンスが訪れたかのように観客がヒートアップする状況を事前にイメージしながら、試合に入ることができている。

 また、グループステージ第3戦の水原三星ブルーウィングス戦では、不可解な判定から相手に4本のPKが与えられる難しい試合展開となる。しかし、そのジャッジにも過剰に反応しすぎず、むしろ「日本とは違う」と割り切り、集中を切らさずに得意のカウンターから立て続けに加点し、6−2というスコアで水原三星を撃破した勝利は、間違いなく昨シーズンの経験が存分に発揮された一戦だったと言える。

1/2ページ

著者プロフィール

1972年生まれ、千葉県出身。会社員を経て02年にフリーランスへ転身。03年から柏レイソルの取材を始め、現在はクラブ公式の刊行物を執筆する傍ら、各サッカー媒体にも寄稿中。また、14年から自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信している。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント