工藤公康に聞く、藤浪・雄星ら好調の要因

大利実

菊池雄星は「カーブの精度上がった」

ここまで4勝の西武・菊池雄星。同じ左腕の工藤氏は、もっとインコース真っすぐを使えるようになれば、もっと勝てるようになると語る 【写真は共同】

――パ・リーグのほうでは、工藤さんも一緒にプレーをしたことがある菊池雄星投手が4勝1敗、防御率1.12と抜群の安定感を誇っています。今年の菊池投手は何が変わったのでしょうか?

 一番はチェンジアップを覚えたことです。右バッターの外に逃げていく球として、威力を発揮しています。もともと右バッターのインコースへ、良いストレートを投げられていましたから、チェンジアップを覚えたことで、内と外の両コーナーで勝負をできるようになりました。

――バッターも内と外を張らなければいけなくなったわけですね。

 そうです。あとは見落としがちですが、カーブです。カーブの精度が上がっていますね。これによって「緩急」が生まれ、ストレートをより生かす攻めができています。

――対右バッター、左バッターへの攻めはいかがですか? 右バッターのアウトコースで生きるチェンジアップを、左バッターではどのように使っているのでしょうか?

 左バッターにも使っていますが、右バッターほどの効果は感じません。これは、左と右で打者の「待ち方」が違うことが関係しています。

――待ち方ですか?

 左腕と対戦するとき、右バッターは内角に入ってくるストレートに狙いを合わせていることが多い。バッターはストレートに差し込まれて、詰まるのを一番嫌がるからです。そこに頭があるために、外のチェンジアップが効果的になります。

――左バッターは違うのでしょうか?

 左対左のバッター心理は「外に逃げる変化球に泳がされないようにしよう」です。つまりは、ストレートよりも遅いボールに照準を合わせている。そこに遅いチェンジアップがきたら、右バッターよりは対応しやすいですよね。

――なるほど。何を待っているかで、チェンジアップの意味合いが変わってくるのですね。

 菊池投手がさらに勝てるピッチャーになるためには、左バッターのインコースをいかに攻められるかです。外の変化球が頭にあるバッターに、インコース真っすぐを使えるようになれば攻め幅が広がっていきます。

DeNAの打線vs.パ・リーグ投手が「楽しみ」

――最後に交流戦の見どころについて教えてください。

 横浜DeNAの打線ですね。ピッチャーはやや不安ですが、現時点では打線が好調で、上位チームに食い下がっています。交流戦は、普段対戦が少ないピッチャーと当たること、そして長い連戦が続かないこともあり、「ピッチャー有利」です。その中で、DeNAの打線がどのようなバッティングを見せるか。パ・リーグのピッチャーとの対決が楽しみです。

――パ・リーグで注目のピッチャーはいますか?

 今年、非常に状態が良いのがロッテの成瀬善久投手(4勝0敗、防御率0.85)です。昨年と比べると、テイクバックを少し改良しているように見えます。実は以前のテイクバックでは、球種が分かってしまうときがありました。本人がそこを意識して改良したかは分かりませんが、ここまでは良い内容のピッチングが続いています。

<了>

工藤 公康(くどう・きみやす)

【スポーツナビ】

 名古屋電気高校(現愛知工業大学名電高校)を経て、82年に西武ライオンズ(現埼玉西武ライオンズ)へ入団。在籍13年間で8度の日本一に輝き、西武ライオンズのエースとして黄金時代を支えた。その後も福岡ダイエーホークス(現福岡ソフトバンクホークス)、読売ジャイアンツの日本一に貢献。2004年8月17日、対ヤクルト戦で通算200勝を達成した。2011年に現役引退。2012年より日刊スポーツ評論家、テレビ朝日系列『報道ステーション』の野球キャスターをはじめ、野球評論家、野球解説者として活躍。子どもたちの野球教室も定期的に開催しており、野球の発展と普及活動に力を注いでいる。通算成績224勝142敗3S。

【書籍紹介】

『野球のプレーに、「偶然」はない−テレビ中継・球場で観戦を楽しむ29の視点−』(工藤公康著・カンゼン刊)が4月3日に発売。グラウンドで起こりうるプレーにはすべて理由があり、根拠があります。長いシーズンを戦うプロ野球において、「偶然」が入る要素は非常に少ないのです。
本書では、工藤式の野球の観戦術・見方を29の視点から徹底指南。これらの視点に野球の奥深さが凝縮されています。親子で、野球ファン同士で野球観戦時のお供に、最良の1冊です!

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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