工藤公康に聞く、藤浪・雄星ら好調の要因
菊池雄星は「カーブの精度上がった」
ここまで4勝の西武・菊池雄星。同じ左腕の工藤氏は、もっとインコース真っすぐを使えるようになれば、もっと勝てるようになると語る 【写真は共同】
一番はチェンジアップを覚えたことです。右バッターの外に逃げていく球として、威力を発揮しています。もともと右バッターのインコースへ、良いストレートを投げられていましたから、チェンジアップを覚えたことで、内と外の両コーナーで勝負をできるようになりました。
――バッターも内と外を張らなければいけなくなったわけですね。
そうです。あとは見落としがちですが、カーブです。カーブの精度が上がっていますね。これによって「緩急」が生まれ、ストレートをより生かす攻めができています。
――対右バッター、左バッターへの攻めはいかがですか? 右バッターのアウトコースで生きるチェンジアップを、左バッターではどのように使っているのでしょうか?
左バッターにも使っていますが、右バッターほどの効果は感じません。これは、左と右で打者の「待ち方」が違うことが関係しています。
――待ち方ですか?
左腕と対戦するとき、右バッターは内角に入ってくるストレートに狙いを合わせていることが多い。バッターはストレートに差し込まれて、詰まるのを一番嫌がるからです。そこに頭があるために、外のチェンジアップが効果的になります。
――左バッターは違うのでしょうか?
左対左のバッター心理は「外に逃げる変化球に泳がされないようにしよう」です。つまりは、ストレートよりも遅いボールに照準を合わせている。そこに遅いチェンジアップがきたら、右バッターよりは対応しやすいですよね。
――なるほど。何を待っているかで、チェンジアップの意味合いが変わってくるのですね。
菊池投手がさらに勝てるピッチャーになるためには、左バッターのインコースをいかに攻められるかです。外の変化球が頭にあるバッターに、インコース真っすぐを使えるようになれば攻め幅が広がっていきます。
DeNAの打線vs.パ・リーグ投手が「楽しみ」
横浜DeNAの打線ですね。ピッチャーはやや不安ですが、現時点では打線が好調で、上位チームに食い下がっています。交流戦は、普段対戦が少ないピッチャーと当たること、そして長い連戦が続かないこともあり、「ピッチャー有利」です。その中で、DeNAの打線がどのようなバッティングを見せるか。パ・リーグのピッチャーとの対決が楽しみです。
――パ・リーグで注目のピッチャーはいますか?
今年、非常に状態が良いのがロッテの成瀬善久投手(4勝0敗、防御率0.85)です。昨年と比べると、テイクバックを少し改良しているように見えます。実は以前のテイクバックでは、球種が分かってしまうときがありました。本人がそこを意識して改良したかは分かりませんが、ここまでは良い内容のピッチングが続いています。
<了>
工藤 公康(くどう・きみやす)
【スポーツナビ】
【書籍紹介】
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本書では、工藤式の野球の観戦術・見方を29の視点から徹底指南。これらの視点に野球の奥深さが凝縮されています。親子で、野球ファン同士で野球観戦時のお供に、最良の1冊です!