モイズ就任がユナイテッドにもたらす影響=注目される香川の起用法とルーニーの去就

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ファーガソン監督の後任としてマンU監督に就任したモイズ氏 【Getty Images】

 サー・アレックス・ファーガソンの退任発表からわずか1日。マンチェスター・ユナイテッドの新監督が早くも発表された。大方の予想通り、エバートンの指揮官・デイビット・モイズが来季から“赤い悪魔”(マンチェスター・Uの愛称)を率いることになった。契約期間は6年。ビッグクラブ初挑戦の監督にとっては異例の長期契約となる。モイズは就任にあたり、「史上最高の監督の後を継ぐのは、とても大変なことだが、ユナイテッドを指揮する機会はそう訪れない。来シーズン、監督のポストを引き継ぐのがとても楽しみだ」とクラブの公式HPを通じてコメントした。果たして、モイズはエバートン時代の成功をユナイテッドにもたらすことができるのか。彼の経歴を振り返りつつ、その可能性を探ってみたい。

無名の選手を安価で獲得し、ポテンシャルを引き出す

 モイズは、1963年4月25日、スコットランド生まれの50歳。ファーガソンと同じくグラスゴー出身である。現役時代はセルティックなどでDFとしてプレーし、キャリアの最後に所属したブレストン・ノースエンドで98年から監督となった。エバートンの指揮官に就任したのは2002年3月。降格の危機に瀕(ひん)していたチームをすぐさま立て直し、残留させたことで評価は一気に高まった。翌02−03シーズンには7位でフィニッシュし、各クラブの監督たちの投票によって選ばれる年間最優秀監督に選出された。またこのシーズン、モイズは当時16歳のウェイン・ルーニー(現ユナイテッド)を抜てき。ルーニーはその期待に応え、リーグ戦30試合無敗を続けていたアーセナルの記録をストップするゴールを決めるなど、衝撃的な活躍を披露した。

 ルーニーに代表されるように、モイズの薫陶を受けて飛躍した選手は多い。デンマーク代表のトーマス・グラベセン(すでに引退)はエバートンでの活躍が認められ、レアル・マドリーにステップアップ。レアル・ソシエダでポジションを確保していなかったミケル・アルテタを期限付きで獲得(のちに完全移籍)すると、チームの絶対的な司令塔へと育て上げた。アルテタは、11−12シーズンに多額の移籍金を残して、アーセナルへと旅立っている。チャンピオンシップ(2部リーグ)のミルウォールに所属していたオーストラリア代表のティム・ケーヒル(現ニューヨーク・レッドブルズ)は、加入後すぐにチームの攻撃の要となり、プレミアリーグで計56得点を挙げた。

 現在のチームにもベルギー代表のマルアン・フェライニや、イングランド代表のレイトン・ベインズら、ビッグクラブのターゲットとなっている選手がいるが、彼らもまたエバートンに移籍する前は無名の存在だった。財政面の問題で大型補強ができない以上、限られた予算で安い選手を獲得し、彼らのポテンシャルを最大限発揮させることで、チーム作りを行う。これがモイズという監督の特長だ。

気になるルーニーとの関係

 モイズの指揮官としての才に疑いの余地はない。そうでなければプレミアリーグという過酷なリーグにおいて、ひとつのクラブで11年間という長期政権を築くことなどできないはずだ。彼の上を行くのは、ユナイテッドの監督を27年間務めたファーガソンと、17年間アーセナルを指揮しているアーセン・ベンゲル監督だけである。ユナイテッドが異例とも言える6年間という長期契約を提示したのも、指揮官に対する期待の表れだろう。

 しかし、懸念点がないわけではない。とりわけ、現役時代を通じて世界的ビッグクラブを一度も経験したことがないモイズが、偉大なる前任者の後を継ぐというのは並大抵のことではない。ましてやユナイテッドには各国の代表選手が多く名を連ねている。チーム戦術はもちろんのこと、求心力もこれまで以上に求められるはずだ。

 気になるのはルーニーとの関係。前述の通り、ルーニーからすれば、自分をプレミアリーグの舞台にデビューさせてくれた恩人にもあたるはずなのだが、以前発表した自叙伝において「モイズは自分を妬んでいた」などという批判的な記述から、訴訟問題に発展した過去を持つ(結果はルーニーの敗訴)。エバートン退団もモイズとの関係悪化が原因のひとつと言われており、再び同じチームとなることで、混乱が起きないとも限らない。案の定、『デイリー・ミラー』紙をはじめとした現地メディアは、「モイズはルーニー放出を準備している。代わりにフェライニ獲得を希望」と報じている。「ルーニーも移籍を志願した」と伝えられており、マンチェスターを離れることが現実味を帯びてきた。これまではうわさがあがるたびにファーガソンが火消しを行い、事なきを得てきたが、監督交代のタイミングを機に、新たな挑戦に向かうことも十分考えられるだろう。

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