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誤算続きでも風間監督更迭の可能性は低い
川崎に浸透する選手たちの自発的な意識

選手を大人として扱うチーム作り

風間監督は選手を大人扱いするチーム作りを進めているが、結果を求められるシーズンでもあるため、このままでは批判の声も大きくなるだろう
風間監督は選手を大人扱いするチーム作りを進めているが、結果を求められるシーズンでもあるため、このままでは批判の声も大きくなるだろう【写真:アフロスポーツ】

 思うように結果が出ない川崎は立て直せるのだろうか。この問いに対し「簡単ではない」と答えたい。ただし、この言葉からは悲観的な意味は排除してある。風間監督ははぐらかすが、いくつかの状況証拠から、チーム作りをする上で監督が選手たちを大人として扱い、自律して戦えるチームを作っているのは確実だ。自律して戦えるチームとは、試合で目の前の状況に能動的に対処し、プロとして生活を律することができる集団のことである。


 一例を上げる。昨シーズン途中に就任した風間監督は、試合前に対戦相手のスカウティング結果を伝えるミーティングを原則廃止した。スカウティングは、影でチームを下支えするものとの認識があったため、これには驚かされた。風間監督はこれについて「選手たちは対戦相手のことは分かっている。そこに過剰に(情報を)与えるというのは……。それから(スカウティングの)見方が違っていたら、それは良い情報ではない。自分たちで判断するためにグラウンドの中でやってくれればいい。子どもじゃないんでね」と述べている。つまり、知りたければ自分で調べればいいし、相手のその日の調子もある。だから究極的にはグラウンド上で見極めることを求めているのだ。その結果、選手たちは各自で情報を集め始めたのである。


 選手を大人として扱う姿勢は、練習にも表れている。例えば10時から練習が始まると、今まではフィジカルコーチが先頭に立ち、選手全員でストレッチを行ってきた。しかし風間監督は、100〜150メートル程度の軽いジョギングのみでいきなり練習を始める。そこには練習時間はサッカーのためのものであり、ウオーミングアップは、それぞれの選手が意識して行うべきだとの考えが含まれている。選手たちは練習の開始時間に合わせ、必要だと考えるケアを行えるだけの余裕を持ってクラブハウスに集まるようになった。もちろん、寝坊するなどして事前の準備ができない選手であっても、10時の練習時間にさえ間に合えば問題はない。ケガが発生するなどした場合、結果的に損をするのはその選手であるとの考えなのである。


 試合翌日の練習も特徴的だ。開幕戦の翌日は、時間を決めて選手をクラブハウスに集め、クールダウンの意味を持つストレッチを行っている。これは西本コーチがシーズン前から始めているメニューで、器具を使い筋肉に負荷をかけて必要な個所を伸ばし、メンテナンスするというもの。ナビスコカップ第1節の横浜FM戦を境に、クールダウンを目的とした試合翌日の練習は基本的に休みとなった。休みたければ休めばいいし、体が気になる選手は自分で判断してクラブハウスに集まり、ストレッチを含めたケアをする方式に改めたのである。

議論を呼ぶさい配の意味

 批判されることの多い選手交代についても、ピッチ上の選手たちによる能動的な解決を期待していると考えることが可能だ。今季リーグ戦で3枚の交代枠を使い切ったのは、開幕戦の柏戦、第3節の鳥栖戦、そして第7節の仙台戦の3試合のみ。敗戦した柏、鳥栖の2試合はさておき、仙台戦に関しては負傷者の発生による交代が2枚含まれており、非常事態だったことは明らかである。


 風間監督は交代枠を残すことが多い。敗れた第6節の横浜FM戦では88分に1枚のみの交代だった。第8節のFC東京戦は、70分と82分の2枚のみ。交代をしない傾向についての質問は多いが、そのたびに風間監督が答えてきたのが、流れを重視しているという点だ。例えば第5節の湘南ベルマーレ戦を前にした4月5日の練習後に、「選手の入れ替えだけがカード(を切ること)ではない」と述べ、「要所要所ではしっかりみんなやってくれている。交代選手も時間は短くても90分ぶんの働きをしてくれるので信頼している」と話している。


 選手交代と同様の考え方ができるのが、フォーメーションの流動性や先発起用選手の多さである。今季は4バックで臨んでいるが、第2節の大分戦のように3バックで入った試合もある。また選手のポジションも田中裕介のように左右両サイドバックはもちろん、ボランチでも起用された例をはじめとし、それぞれの選手が複数のポジションや組み合わせを経験している。


 また、先発を経験した選手数は、8節を終えた時点で20人に上る。この数字は、リーグで上位に位置する大宮アルディージャ、浦和レッズ、横浜FMに比べても多い。ケガ人の発生が先発経験選手の多さの一因と言えるが、それよりも監督のチーム作りの方針がこの数字に表れている。これで結果を出すには、誰がどんな選手とどんなフォーメーションでも、ピッチ上で戦いを完結させる自律した個が必要になる。

江藤高志
江藤高志
1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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