「ドイツ勢が世界の勢力図を塗り替えた」=賛辞を受けるバイエルンとドルトムント

スポーツナビ

衝撃的な2つの大勝劇

ドルトムントはレバンドフスキー(中央)の4ゴールでレアル・マドリーに快勝した 【Getty Images】

 ドイツ勢vs.スペイン勢の組み合わせとなったチャンピオンズリーグ(CL)準決勝は衝撃的な結果に終わった。まず23日、バルセロナをホームに迎えたバイエルンは、ここ数年世界のサッカー界をリードしてきたチームを全く寄せ付けず、4−0と圧勝。リオネル・メッシが負傷明けにより本調子でなかったとはいえ、さすがにここまでの大差を予測した人はいなかったはずだ。

 さらに翌24日、今度はドルトムントがロベルト・レバンドフスキーの4ゴールを挙げる活躍により、レアル・マドリーを4−1と粉砕。グループリーグでレアル・マドリーに1勝1分けと勝ち越したものの、「準決勝では経験に勝るスペイン王者が有利」との見方で占められていた。それだけに、ドルトムントの大勝は驚きを持って全世界に伝えられた。

 ドイツの『キッカー』紙は「バイエルンの祭りから、ドルトムントの祭りへ」と銘打ち、2夜連続で現代サッカーの2大巨頭、バルセロナとレアル・マドリーに完勝した自国チームを称賛した。「レバンドフスキーが狂気を解放した」と見出しを付けたのは、同じドイツの『ビルト』紙だ。ヨーロッパの舞台においてレアル・マドリーから4ゴールを奪ったのは、このポーランド人ストライカーが初めて。今夏のビッグクラブ入りがうわさされるレバンドフスキーは、この快挙でさらに評価を高めたのは間違いない。

 他の列強国でも、バイエルンとドルトムントへの賛辞が並ぶ。フランスの『レキップ』紙が「ほとんど完ぺきなドルトムントがサッカー界に新しい衝撃を巻き起こした」と評価すれば、イギリスの『デイリー・ミラー』紙は「ドイツ 8−1 スペイン。ウェンブリーは(決勝の会場)ドイツ勢によるファイナルを準備すべし」と、すでに決勝のカードは決まったかのように報じている。

「中心はすでにスペインではない」

メッシ(中央)擁するバルセロナもバイエルンに歯が立たず。0−4となすすべなく敗れた 【Getty Images】

 惨敗を喫したスペインのメディアも、ドイツ勢の強さを素直に認めている。『AS』紙は「レバンドフスキーが奇跡を起こす」と取り上げ、このストライカーが見せた驚異的なパフォーマンスをたたえた。また『マルカ』紙は、試合前から舌戦を繰り広げていたドルトムントのユルゲン・クロップ監督と、レアル・マドリーのジョゼ・モリーニョ監督を比較。「クロップはモリーニョを学校に連れて行った」と見出しを打ち、ドルトムントの指揮官に軍配を上げた。さらにマルカ紙は、前日のバイエルン戦で全く存在感を発揮できなかったバルセロナのメッシについて、「行方不明だった」と痛烈に評している。

 ここ数年、欧州のみならず世界のサッカーシーンをリードしてきたのはまぎれもなくバルセロナとレアル・マドリーのスペイン勢。しかし、この結果は2強の支配体制が終えんを迎えていること示唆しているのかもしれない。アルゼンチンの『オレ』紙は「ドイツ勢がサッカーの勢力図を塗り替えた。中心はすでにスペインではない」という論調を打ち出している。

 もちろん、今回の試合結果だけで判断するのは早急だろうが、結果だけではなく試合内容でもバルセロナとレアル・マドリーが完敗したことは否めない。しかも、バルセロナは前線からの素早いプレス、レアル・マドリーは鋭いカウンターという十八番の戦術を相手にやられての敗戦だ。バルセロナの選手や、モリーニョ監督が試合後に述べているように「相手の方が優れていた」というのは率直な感想だろう。

史上初のドイツ対決になる可能性は高い

 ここ数年、ドイツ勢に追い風が吹いているのは間違いない。ファイナンシャル・フェアプレー(収入以上の支出を認めない監視政策で、違反すればUEFA主催大会の出場権をはく奪される)の影響も、健全経営を掲げるドイツのクラブはそれほど受けない。安定した経営はビッグネームを呼ぶことにもつながり、今冬にはバルセロナに黄金時代をもたらしたジョゼップ・グアルディオラが来季からバイエルンの監督に就任することが決定。各国のビッグクラブが触手を伸ばしていた、ドルトムントのマリオ・ゲッツェも、バイエルンに移籍することが内定し、国内に留まる決意をした。優秀な若手が次から次へと頭角を現し、代表チームもメジャー大会制覇を狙える位置につけている。そして今回のCLでの躍進である。決勝のカードが、史上初のドイツ勢対決になる可能性は限りなく高い。バイエルンが決勝に進出すれば、ここ4シーズンで3度目(いずれも準優勝)、ドルトムントは優勝した1996−97シーズン以来となる。ドイツ勢の優勝となれば2000−01シーズンのバイエルン以来12年ぶりだ。

 かつてブンデスリーガは世界最強のリーグとして名を馳せていた。しかし、80年代以降はリーガエスパニョーラ、セリエA、プレミアリーグの影に隠れ、第2勢力に成り下がってしまった。代表でも00年と04年のユーロ(欧州選手権)でグループリーグ敗退。こうした厳しい時代を経験したことで、それまで胡座(あぐら)をかいていた協会やクラブが改革に乗り出し、その効果がついに花開こうとしている。ドイツサッカーが世界の潮流になる日は、そう遠くない未来に訪れるのかもしれない。

<了>
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