川島が本来の姿を取り戻したきっかけ=ヘンク戦で久々に見せた攻撃的な守備

中田徹

川島のスーパープレーで再三のピンチをしのぐ

ヘンクを3−0で下し、暫定2位に浮上したスタンダール。川島(中央)、小野(右から2番目)、永井(右)らもサポーターに笑顔であいさつ 【写真:アフロ】

 ベルギー1部リーグではプレーオフ1の第4節が16日に行われ、スタンダールはホームでヘンクを3−0で破った。この結果、暫定2位となったスタンダールは欧州チャンピオンズリーグ出場圏内に浮上。ベルギー国内でも「スタンダールは優勝候補のひとつとなった」と警戒されるようになった。

 この日、先発した永井謙佑は立ち上がりから、俊足を生かしてヘンクの守備陣をかく乱。とりわけ惜しかったのは6分だった。相手センターバックが処理にもたついているのを見逃さず、ボールを奪いヘンクゴールへ向かって独走した。

 ドリブルを開始した時、永井は「あれ、水まいていたのに伸びないなと感じた」という。そこで「最後、同じ感覚で突いたら伸びちゃった」と中でフリーでいたエゼキエルへとっさのクロスを選択。しかし、相手GKに詰められ、コーナーキックに逃げられてしまった。

 その後、川島永嗣がスーパーセーブを連発した。まず15分、右サイドからのヘンクのクロスをDFカヌーが体に当てる。このルーズボールをトマス・ブッフェルがシュートしたが、勘良く前へ飛び出していた川島がうまく弾いた。

「何かボールがこぼれて来そうな感じがしてたので、出ないと遅いかなと思いました。そこは集中していました」(川島)

 19分にはまたしてもブッフェルが、バイタルエリアで切り返してから左足のシュートを右隅に放ったが、川島が横っ跳びで防いだ。
 スタンダールがMFヨニ・バイエンスのゴールで先制した後も、川島は32分、33分とジョゼフ・モンローズの決定的なシュートをセーブした。川島のアドレナリンがセーブとともに高まり、最後のセーブはガッツポーズと「どうだ!」と言わんばかりの形相を見せた。

永井「(川島の)神の手が伸びた」

 試合はスタンダールが後半に2点を追加したことによって大勝したが、前半の0−0の場面で2度、1−0の場面でも2度見せた川島の堅守がなければ、試合の流れは大きく変わっていたに違いない。永井には「神の手が伸びた」ように感じられたようだ。

 試合後の川島は意外なことを口にした。

「この前の試合(対ズルテ・ワレヘム戦、4−3でスタンダールが勝利)も自分の中でしっくりしなかったし、今シーズンはなかなか何だろう……。自分らしいプレーというか、自分が納得できるようなプレーがここまでできていなかった。そういう意味で今日の試合は本当に自分自身を取り戻したじゃないですけど、そういう感じがしたゲームだったかなと思います」(川島)

 レギュラーシーズン30試合で、13度もクリーンシートを達成した守護神だが、そのパフォーマンスに関してはしっくりしなかったようだ。それを川島はヘンク戦で取り戻した。例えば、15分のボールへの嗅覚鋭い本能を発揮した攻撃的な守備は、本当に久々のプレーだった。

「“自分が仕事をしないといけないという瞬間”に、仕事ができていなかったという感覚がずっとあった。数字的には結果が出ていたけれど、自分の中では“プレーをやりきれているという感じ”がいままではなかった。今日の試合ではそういうのがひとつ吹っ切れた」(川島)

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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