指宿がベルギー2部で見せる精神的成長=チーム得点王として多国籍軍団をけん引

中田徹

チームは大勝も満足しない指宿

ベルギー2部のオイペンでチーム得点王の活躍を見せる指宿 【写真:アフロ】

 4月13日、ベルギー2部リーグ第30節のオイペン対オウデナールデ戦を訪れてみた。ピッチに散らばったオイペンのメンバーは、ベルギー人3人、セネガル人2人、日本人、南アフリカ人、ナイジェリア人、ガーナ人、マリ人、カタール人と8つの国籍にわたった。しかも平均年齢が19.72歳と非常に若かった。オイペンに所属する22歳のストライカー・指宿洋史がこの日の最年長だったのである。

 まだ荒削りだったが、彼らは才能の塊だった。65分、自陣のゴールライン際から始まったカウンターは、フェイントとパスで相手のプレスを外しながらボールを前に運び続け、最後は右ウインガーのバッシー(18歳、ナイジェリア人)の豪快な左足ミドルシュートによるゴールで締めくくった。この一連のプレーは、オイペンの選手たちが持つテクニック、スピード、しなやかさ、パワーを如実に物語っていた。結局、オイペンは4−1で快勝した。

 大勝にもかかわらず、指宿は「個人的には全然納得していない」と自己評価した。パスを前線でさばく機会が少なく、左右からのクロスもほとんど入らなかった。
 チャンスは一度だけあった。55分、味方からのラストパスをフリーで受けた指宿は、一度切り返してGKをかわそうとしたが、ボールをはじかれてしまった。そのこぼれ球を、指宿は無人のゴールにシュートしたが、相手のサイドバックがゴールライン上まで戻ってクリアしてしまった。

「今日は確かに難しかった。中盤にスペースがあったから、前線でボールを収めるというより、中盤で攻撃を構築して勝負という感じだったので、ボールに触れないというのは(試合の)流れ的にしょうがない。それでもやっぱりFWとしてもっと絡んでいかないといけなかった」(指宿)

スペインの香り漂うオイペンのサッカー

 この試合では不発に終わったが、今季の指宿は23試合に出場し、2ケタの10ゴールを記録した。これはサントスと並ぶチーム内最多ゴールである。
「いや、全然満足してないですね。そういうことに対しては悔しい思いの方が強いです。もっとゴールを決めなければいけなかった。ちょっと、けがをしたりとか、今季のことは個人的には納得してないです。もうちょっとやれたんじゃないかという感じはありますけど、残り2試合、全力でやるだけです」(指宿)
 
 フォーメーションは4−3−3。GKのフセイン(20歳、カタール人)も含め4バックがきっちりパスを回しながらビルドアップし、コンビネーションや個人技でボールを前に運び続けるオイペンのサッカーには、スペインの香りが漂っていた。

 今季から指揮を執るのは、エスパニョールやブカステジョンといったクラでの指導経験豊富なマルケス・ロペス。ボランチが不必要にバックパスを出すと、「ボールを下げるな。アタックだ。アリーバ!(スペイン語で『上へ』の意味)」と声を張り上げる。そのスペイン語の指示を、観客も楽しそうに真似をする。

「チーム自体は、ちょっといろいろと複雑なチームなんですけど、サッカー自体は面白いと言えば面白い。チームとして一人ひとり勝手なプレーじゃなく、コンセプトがあって、それに向かって11人でやっていく。1人がポジションを動いたら、次のほかの人がこう動いたりとかいろいろある」(指宿)

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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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