内田篤人が望む最高のプレー=重要視する守備でのチーム貢献

一番大事なのは自分の試合をすること

内田は新戦力の補強のうわさにも、「自身の仕事をするだけ」と気にしていない。しかしイングランドへの興味もあるようだ 【Bongarts/Getty Images】

 内田が負傷している間に、代役を務めたマルコ・ヘーガーも注目を集める一人だった。守備のマルチ職人であり、SBとしても信頼に足る仕事を果たし、さらにはゴール前でも危険な存在となった。内田は「ケラー監督がやって来てから、チーム内での競争が激しくなった感覚があります」と考えている。ただし、競争を恐れることはない。「けがをしていようがいまいが、僕は常にチーム内での居場所を見つけなければいけないんです。シャルケのポジション争いは激しくて、誰も手を抜いたパフォーマンスなどできません」。それこそが、サッカーの世界をうまく回す原理である。

 さらには、来季の新たな競争相手のうわさも飛び交う。現在バイエルンでプレーするラフィーニャの古巣復帰の憶測が流れ、スポルティング・リスボンのセドリク・ソアレスに関する報道もある。だが、内田は「そのことは考えません」と笑う。彼にとっては、クラブがレベルを保ち、また上げるために、新戦力を獲得するのは当然のことなのだ。「僕は自分の試合をするだけです。それが僕にとって、一番大事なことなんです」。

 契約は2015年まで延長されたが、ファンに「ウッシー」と呼ばれる彼は、もっと長くゲルゼンキルヘンに残ることを想像するかもしれない。

思い描く新しい挑戦

「もしシャルケが15年以降も僕を必要としてくれるなら、ここに残りたいと思います。でも、もう必要ないと言われたら、イングランドでプレーすることを思い描くかもしれない」

 イングランドは香川真司のみならず、内田のことも引きつけている。だが、クラブの名声などよりも、プレミアリーグのスタイルに、内田はチャレンジを見い出している。なぜなら、彼の生来のプレーと正反対のものであるからだ。

「(イングランドでの)競り合いでは、フィジカルとパワーがさらに重要になってきます。もちろん、その点にも引かれます。僕のスタイルを、さらに良いものにしてくれるでしょうからね。そういうものを見つけ出したいんです」

 だが、現段階ではそのような話は出ていない。内田はシャルケで幸せを感じており、このクラブとともに高い目標を掲げている。今季の優勝はもはや不可能だと内田は笑うが、チャンピオンズリーグ出場権は狙い続けている。その目標へ向かい、シャルケは正しい道の上にいる。

 インタビューの途中、チームメートのジャーメイン・ジョーンズが部屋へと入ってきて、不思議そうな顔をした。「ドイツ語を話せるのに、どうして日本語でインタビューするんだい?」。内田は照れたように笑うだけだった。
 
 ドイツ語の質問の意味を理解できるし、時には通訳が口を開くのを待たずして、すぐに答えることもある。サッカー用語も解するが、あえて記者とドイツ語で話そうとはしない。10年からシャルケにいるというのに。いつになったら、ドイツ語でのインタビューをするのだろう? 「18年後にはね」。内田は笑った。その時にも、彼はまだシャルケにいるかもしれない。

<了>

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著者プロフィール

フランソワ・デュシャト 1986年生まれ。世界最大級のサッカーサイト「Goal.com」でドイツ語版の編集長を務め、13年からドイツで有数の発行部数を誇る「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)でドイツ西部のサッカークラブを担当する。過去には音楽の取材もしていた。ツイッターアカウントは@Duchateau。自身のサイトはwww.francoisduchateau.net。 ダビド・ニーンハウス 1978年生まれ。20年以上にわたり、ルール地方のサッカークラブに焦点を当て、ブンデスリーガの取材を続ける。09年からは「WAZ」紙のサイト(http://www.derwesten.de/)で記者を務める。ツイッターアカウントは@ruhrpoet。自身のサイトはwww.david-nienhaus.de。

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