史上初の兄弟騎手GIワンツー! デムーロ弟が兄撃破=桜花賞

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無念の負傷、忘れてはならない丸山元気の存在

丸山のアドバイス通りの競馬、アユサン(左)は中団追走から直線を一気に突き抜けた 【スポーツナビ】

 日本での初GI、それも兄ミルコとの一騎打ちを制しての勝利に喜びを爆発させたクリスチャンだったが、もちろん、アユサンの激走があってこその勝利だ。直線残り100メートル、末脚の勢いでは外から迫るレッドオーヴァルに分があるかと思われたが、そこから再び差し返しての1着なのだから、アユサンも相当な能力の持ち主だ。決して展開が向いてのフロック勝ちではない。クリスチャンが言う。
「手塚調教師からは『出来は前走より3倍いい』と聞いていたし、中団で脚をタメて最後に末脚を伸ばすだけでいいとアドバイスされて、その通りの競馬になった。直線で1頭になって抜けだしたときはソラを使っていたけど、外からレッドオーヴァルが来てくれて、また闘志を燃やしてくれた。並ぶ形になったのが良かったね。本当にいい馬だし、きょうに関しては馬が完ぺきでした」

 一方の手塚調教師も、今回のアユサンの出来に関しては絶大な自信を持っていたという。
「チューリップ賞のあと、本当に状態が良くなりましたね。最後に差し返したのも、彼女の状態の良さが出た結果だと思います」

 そして忘れてはならないのが、前日6日のレース中の落馬負傷によりこの桜花賞での手綱を握れなかった主戦・丸山元気の存在だ。先週、今週と2週続けて美浦から栗東まで来て調教に騎乗し、アユサンの状態アップにひと役。一歩、一歩いっしょに歩んできた相棒の晴れ舞台に、直前のアクシデントで騎乗できなかった丸山の無念は相当なものだろうが、それでも丸山は、手塚調教師を通じてアユサンの特徴を余すところなくクリスチャンに伝えたという。そのアドバイスが、今回の『中団でタメて、最後に脚を伸ばす』作戦にバッチリと生きたのだ。手塚調教師が言葉を強めて、こう語った。
「彼いなくして、この桜花賞は勝てなかったと思いますね」

手塚調教師「もっと『上』があると思っている」

オークスでは堂々の主役へ、さらにパワーアップして府中での二冠獲りに挑む 【スポーツナビ】

 また今回の勝利は、“究極の出来”に仕上がった上での乾坤一擲の脚、というわけでもない。もっともっと成長の伸びしろがあると、トレーナーは語る。
「まだまだ完成されてなくて、ポテンシャルが非常に高い馬。1枚ずつベールを脱ぐごとに強くなっていく印象ですね。私としては、もっと『上』があると思っているんです」

 次なる目標は当然、牝馬クラシック二冠目のオークス。東京2400メートル樫の舞台だ。「2400メートルでも大丈夫。それくらいの力を持っている」とクリスチャンが太鼓判を押せば、手塚調教師も「現状では距離も大丈夫でしょう。それに、左回りの方がさらにいい。もうひと皮むかせて、オークスに向かいたいですね」と、二冠も視野に入れたような口ぶり。混戦桜の女王が踏む樫の舞台は、脇役ではなく堂々ヒロインとして――脱ぎ捨てたベールの代わりに女王の風格をその身にまとい、いざ府中で二冠獲りだ。

悔しい4着武豊「逃げられなかったのが……」

桜花賞6勝目を狙った武豊だったが、クロフネサプライズは悔しい4着 【スポーツナビ】

 一方、武豊騎乗の1番人気クロフネサプライズは4着に敗れた。レースは直線を待たずして堂々の4角先頭。前走チューリップ賞を再現するように、このまま一気にゴール板を駆け抜けたかった。しかし、自身の史上最多を更新する桜花賞6勝目は、直線半ばで破れてしまった。
「3コーナーからジワッと行けましたけど、先手を取れたら良かった。逃げられなかったのが痛かったですね。内の馬が結構飛ばしていましたから」
 スタートはまずまず。そこから折り合いに気をつけながら徐々にペースアップし、2番手から駒を進めたが、現状はハナを切る形がベストなのか。折り合い完ぺきとまでは行かなかったという。多少の力みを残したフォームでの追走が、最後の最後に響いてきた。
「先頭に立った4コーナーあたりからはいいリズムで行けました。直線も踏ん張れるかなと思ったんですけど、前走ほどの反応がなかった。前半で少し力んでしまった分だと思います」
 坂を上がったところでデムーロ兄弟に一気にかわされてしまい、最後は馬券圏内の3着からも脱落する4着。武豊も悔しさをにじませる敗戦となった。しかし、先行勢が軒並み大敗する厳しい流れのなか、ただ1頭、掲示板に残る奮闘。最高の結果こそ出せなかったが、世代トップクラスの地力は証明したはず。巻き返しのチャンスはきっとやって来る。

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