アルゼンチン無冠時代に夜明けは来るのか=再び手の届く存在となりつつあるW杯

世界最高の陣容を誇るアタッカー陣

メッシ(左)以外にもイグアイン(左から2番目)、ディマリア(左から3番目)、アグエロ(右)と豪華メンバーがそろう現代表 【写真:アフロ】

 ただこうした少数精鋭化の流れは、少し前まで国民のシンボル的存在であり、現在もマンチェスター・シティで良いプレーを見せているテベスの代表復帰の可能性が実質的に失われたことを意味している。

 戦術的には、レギュラーメンバーがそろっている限り変動的な4−3−3が基本布陣となっている。特徴的なのは、左サイドのアンヘル・ディマリアが守備時は3ボランチの一角に収まり、速攻を仕掛ける際には4人目のアタッカーに変ぼうする点だ。メッシが指揮を執る攻撃では、両サイドバックのパブロ・サバレタとマルコス・ロホも積極的な攻め上がりを見せる。

 先日メッシも認めていた通り、アルゼンチンの攻撃スタイルはバルセロナよりレアル・マドリーのそれに近い。相手チームのミスに乗じて、鋭いカウンターで一気に仕留める。その役割を担うアタッカー陣は、3月22日のベネズエラ戦を3−0で勝利した後の会見でサベーラ自身が認めていた通り、恐らく世界最高の陣容を誇る。

14年W杯はまたとない優勝のチャンス

 今予選で大健闘している新興国を相手からの快勝に、過去を振り返ることを知らないアルゼンチンの国内メディアは大いに盛り上がった。75年のコパ・アメリカにて、アルゼンチンがベネズエラに11−0で大勝した記憶など彼らの頭にはないようだった。

 とはいえ当時と今とでは時代が違う。当時のアルゼンチンは現在のバルセロナのように両ウイングと2人の攻撃的MFを起用する、今よりずっと攻撃的なスタイルでプレーしていた。だが今では2、3本連続でパスをつなぐだけでスタンドが「オーレ!」と沸くようになった。

 メッシを筆頭に当時より質の高い選手がそろっているにもかかわらず、スペクタクルを求める声は以前よりずいぶんと少なくなった。だがアルゼンチンの人々が希望を失ったわけではない。W杯は再び手の届く存在となりつつある。しかも次の舞台は南米・ブラジルだ。14年はアルゼンチンにとって、93年のコパ・アメリカ優勝以来続く無冠の時代に終止符を打つまたとないチャンスなのである。

<了>

(翻訳:工藤拓)

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著者プロフィール

アルゼンチン出身。1982年より記者として活動を始め、89年にブエノス・アイレス大学社会科学学部を卒業。99年には、バルセロナ大学でスポーツ社会学の博士号を取得した。著作に“El Negocio Del Futbol(フットボールビジネス)”、“Maradona - Rebelde Con Causa(マラドーナ、理由ある反抗)”、“El Deporte de Informar(情報伝達としてのスポーツ)”がある。ワールドカップは86年のメキシコ大会を皮切りに、以後すべての大会を取材。現在は、フリーのジャーナリストとして『スポーツナビ』のほか、独誌『キッカー』、アルゼンチン紙『ジョルナーダ』、デンマークのサッカー専門誌『ティップスブラーデット』、スウェーデン紙『アフトンブラーデット』、マドリーDPA(ドイツ通信社)、日本の『ワールドサッカーダイジェスト』などに寄稿

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