清水エスパルスが直面するかつてない危機=方針転換したゴトビ監督にのしかかる重圧

飯竹友彦

対照的な姿を見せた横浜FM戦

公式戦12試合連続未勝利。ゴトビ監督にのしかかるプレッシャーは大きい 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 例えば、0−5で大敗したリーグ第2節横浜F・マリノス戦後の会見で、ゴトビ監督はこんなことを言っている。

「何かがうまくいかなくなると、そこからすべてがうまくいかなくなる」

「選手たちはもしかしたら経験だったり、困難を乗り越えていく自信が足りなかったのかもしれない」

「試合で状況が悪くなったときに、選手たちのメンタル的な強さが足りていないかもしれない。それで自分たちのサッカーができなくなってしまう点があったと思う」

 すべてのコメントに共通するのが、ピッチに立つ選手たちの心の問題に関して言及している点だ。

 1つの失点から焦り、自信を失い、自ら崩れていった清水。対照的に横浜FMは、マルキーニョスや中村俊輔、中澤佑二が要所を締め、存在感を放っていた。彼らが相手だったからこそ、自チームの打たれ弱さが余計に目についたのかもしれない。しかし、そういうキーとなる存在、ベテランの経験値よりも、若手中心のチーム作りを重視したのは指揮官であり、クラブの判断でもある。そのツケがついに回ってきたように思える。

指揮官の方針にブレが出始めている

 また、今シーズン採用した3ボランチシステムについても疑問符がついた。これは、新たに指揮官が取り組んだ新システムだった。昨年、多くの試合で相手チームよりもボールポゼッションが高いにもかかわらず、カウンターから失点を許し、勝ち点を落とす試合が目についた。負け試合を引き分けに、引き分けを勝ちに持っていくことができれば目標である優勝争いができる。そのためにトップ下を廃止し、DFラインの前に3人の選手を並べ守備の強化を図った。

 しかし、開幕直前に行ったアルビレックス新潟とのプレシーズンマッチで4失点を喫し、前述の横浜FM戦では屈辱的な5失点を記録。慌てて2ボランチへシステムを戻し、第3節の湘南ベルマーレ戦に臨んだが、一度狂った歯車はなかなか元に戻らないでいる。

 さらに、こうして万策尽きた結果、広島戦では勝利にこだわり、ベテランの高木純平や、けが明けの杉山浩太を起用。脱ベテランとは反するさい配を披露したが、勝利を得ることはできなかった。

 これまでどんなことがあっても自分の意見を曲げることがなかったゴトビ監督。だが、ここにきて3ボランチシステム、脱ベテランと少しずつ指揮官の方針にブレが出始めているのは気になるところだ。それもこれも勝利から約5カ月遠ざかっているというプレッシャーが迷いを生じさせているのかもしれない。

広島戦で見えた光明

 ここまで書くと完全な八方塞がりのように思える。実際、サポーターの我慢も限界に来ている。しかし、個人的には少しだけ広島戦で光明が見えたように感じた。本当に数えるほどの機会だったが、少しだけピッチから可能性のあるプレーを見ることができたのだ。

 例えば、これまではボランチからFWへ縦パスを入れるシーンはほとんど見られなかったが、この試合では何度かFWのバレーに合わせる場面があった。そして、そのバレーのポストプレーからワイドの河井や石毛がゴール前に詰めるプレーがあった。得点こそならなかったが、こうしたプレーには可能性が感じられる。先日、選手たちだけで青空ミーティングをした効果なのか、自分たちで考えてプレーし、打開しようとしているのは間違いない。

「まずは自分のできることをしっかりやる」(杉山)

 周囲の雑音に心を乱されず、今、選手たちが勝つためにやろうとしていること。その気持ちをブレずに持ち続けることができれば、トンネルを抜ける日も近いだろう。1つの勝利をきっかけに事態が好転することは往々にしてあるものだ。

<了>

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著者プロフィール

1973年生まれ。平塚市出身。出版社勤務を経てフリーの編集者・ライターに。同時に牛木素吉郎氏の下でサッカーライターとしての勉強を始め、地元平塚でオラが街のクラブチームの取材を始める。以後、神奈川県サッカー協会の広報誌制作にかかわったのをきっかけに取材の幅を広げ、カテゴリーを超えた取材を行っている。「EL GOLAZO」で、湘南ベルマーレと清水エスパルスの担当ライターとして活動した。現在はフリーランスの仕事のほか、2014年10月より、FMしみずマリンパルで毎週日曜日の18時から「Go Go S-PULSE」という清水エスパルスの応援番組のパーソナリティーを務めている。2時間まるごとエスパルスの話題でお伝えしている番組はツイキャス(http://twitcasting.tv/gogospulse763)もやっています。

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