清水エスパルスが直面するかつてない危機=方針転換したゴトビ監督にのしかかる重圧
「ゴトビ辞めろ!」サポーターからの怒声
ホームで広島に大敗し、肩を落とす清水の選手たち。ふがいない結果と内容にサポーターも怒りをあらわにした 【Getty Images】
試合後には、23日のナビスコ杯予選第2戦のジュビロ磐田戦(1−5)に続き約300人のサポーターがチームバスの出入り口を封鎖。アフシン・ゴトビ監督、原靖強化部長、竹内康人社長らが話し合いの場を設けたが、サポーターからは、「ゴトビ辞めろ!」、「強化部は責任をとれ」という怒声が飛んだ。しかし、ゴトビ監督は、「わたしたちは辞めない。巻き返せると信じている。時間がほしい」と断固拒否。竹内社長も、「(監督更迭は)今の段階では考えていません」と繰り返すばかりで、話し合いは平行線をたどった。そして気がつけば試合終了後3時間を過ぎ、辺りは暗闇に包まれていた。
新シーズンへの期待は大きかったはずだが
実際、就任1年目は、小野伸二や高原直泰、岩下敬輔らをチームの軸に配置し、その周りを中堅選手や、加入1年目の村松大輔や高木俊幸ら若い選手で補いながら戦った。FWを3人起用し、ピッチをワイドに使うオランダスタイルを浸透させるのに時間がかかり、なかなか多くの勝利には恵まれなかったが、起用した大前元紀のブレイクなどもあって、リーグ戦を10位で終えることができた。
就任2年目はさらに積極的な若手起用を進めながらも、しっかりと成績を残す。リーグ戦では9位と就任1年目から順位を1つ上げ、ナビスコ杯では準優勝。獲得したばかりの吉田豊、イ・キジェに加え、大卒ルーキーの河井陽介や、2種登録した石毛秀樹の活躍もあって、若手中心のチーム作りが進んでいたように見えた。
そして迎えた3年目。過去2年の成績を受け、新シーズンへの期待は大きかったはずだ。しかし、ふたを空けてみれば開幕から勝利は遠く、不名誉な記録だけが伸びている。
若手がベテランの実力を凌駕していたのか
その理由として、まず1つは指揮官の押し進めた若手主体のチーム作りが挙げられるだろう。脱ベテランについては前述したような理由もあり、ゴトビ監督は積極的に若手を起用しなければならない背景があった。その結果、抜てきされた若手が急激に力を伸ばしていったのは間違いない。新しい戦術をチームに落とし込むには、固定概念のない若い選手のほうが使いやすかったという点もあるだろう。その結果、小野、岩下、枝村匠馬、アレックス、辻尾真二らはシーズン途中でチームを離れることになったし、オフには高原や小林大悟らもチームを去っていった。
また、若手路線へのシフトにはクラブの資金的な問題もある。清水は純資産や年間人件費、予算規模も中位でビッククラブではないため、高年俸のベテラン選手を多く抱えるのは難しい。そうした背景は理解しなければならない。しかし、お金の問題だけで本当に必要な選手、財産をチームに残さなくても良いかと言えば、それは違うだろう。若手が伸びているとはいえ、起用した選手の実力が完全にベテラン選手を凌駕(りょうが)したのだろうか。そうとらえるのは早計だったのではないか。そうした疑問はぬぐえないというのが、ここ2年の状況だった。