海外移籍の若年化が生むJリーグの価値=ピッチ内外に必要な世界基準の意識
根強い代理人排除の移籍
香川はJリーグで結果を残してから欧州移籍を果たし、日本選手の価値を高めている 【写真:Atsushi Tomura/アフロスポーツ】
田邊氏が「国内ルールがなくなった以上、エージェントもクラブの利益を考えなくてはいけない時代に来ました」と述べるように、主力選手が契約延長を断わり、フリー(ゼロ円)で海外移籍するような時代は終わった。田邊氏のみならず、日本で活躍するほとんどの代理人が「いかに移籍金をとって、Jクラブ、選手双方がハッピーになれるか」という構造を模索している以上、もはやJクラブにとっても最初のプロ契約の交渉から代理人が付いていた方が良い時代に突入しており、高校や大学の監督(教員)が代理人を排除するような行動には出るべきではない。
今後もJスルー移籍や、1年や2年のみのJリーグ経験で海外移籍する事例は増え続けるが、私自身はこの流れを「Jリーグの価値を高めるチャンス」だととらえている。外国語を習得するために母国語のベースが重要であるのと同様、日本人選手として海外で活躍するためにはJリーグでのベースが必要不可欠になると考えているし、Jリーグが日本人選手にとってそういう存在になってもらいたいと切に願う。
「Jリーグでベースを作ること」の意義
田邊氏の意見に加えて、私は「プロとして結果を出す経験」があると考える。海外でも即戦力として移籍し、すぐに適応できれば、それが会得可能であろう。しかし、海外は日本以上に結果至上主義で「結果」を即求められる。そこには、「まだ若いから……」という忍耐や我慢はなく、たとえ複数年契約を結んだとしても期待値以下の活躍であれば、短年や半年での放出もありえる。皮肉な話ではあるが、サテライトリーグが廃止され、23歳以下の若手育成システムに問題を抱えるJリーグの方が、海外よりも若手に対して寛容だという見方もできる。
海外移籍若年化の流れ事態は止められず、また止める必要もない。逆にその流れをJリーグや日本サッカー界の好循環につなげるためにも、今回紹介した問題に対する対策や、「Jリーグでベースを作ること」の意義を議論した上で、Jリーグの新たな価値を生み出す必要があるのではないだろうか。
<了>