海外移籍の若年化が生むJリーグの価値=ピッチ内外に必要な世界基準の意識
認められる日本の若手選手
近年は海外移籍の若年化に拍車がかかっている。宮市は高校卒業後に欧州へ渡った。 【Getty Images】
その上で、まず切り離しておきたいのが18歳未満の未成年者の海外移籍。FIFA(国際サッカー連盟)の移籍規則においては19条1項に「18歳以上の選手に限り国際移籍が可能」と明記され、18歳未満の選手の国際移籍が禁止されている。例外項目は3つあり、(1)家族がサッカー以外の理由で新しいクラブのある国に移住した場合、(2)EU圏内の選手で、年齢が16歳から18歳までの場合、(3)選手が国境から50キロ圏内に住み、新たなクラブが同じく国境から50キロ以内にある場合。EU加盟国でも陸続きの国境を持つわけでもない日本の未成年者が海外クラブに移籍する場合には、(1)の例外項目を満たす以外に方法はない。よって、本稿でも18歳未満の未成年者の国際移籍の是非を論じることはせず、「若年化」とはFIFAの移籍ルールで認められる「18歳以上」であることを前提とする。
この問題を論じるにあたり話を聞いたのが、稲本潤一(川崎フロンターレ)や中澤佑二(横浜F・マリノス)ら数多くの選手をクライアントに抱える株式会社ジェブエンターテイメント代表取締役で日本サッカー協会認定選手エージェントの田邊伸明氏。田邊氏によると「FIFAの移籍ルールで言うところの『育成年代』たる23歳以下の選手について、欧州からの問い合わせが増えている」状況であり、「中には名前を知らない高校生や大学生の選手も含まれる」という。その要因について田邊氏は、「アンダーの大会での日本の活躍が一つ。それと、香川真司や清武弘嗣のように20歳前後の日本人選手が欧州で活躍していることで、『日本の若手選手は良い素材だ』と認められているのが一つ」と説明する。
ローカルルールは取っ払う必要がある
まず1つ目の問題は、伊藤翔が07年に高卒でフランスに渡った当時から問題視されている選手の年俸上限について。Jリーグでは経営を逼迫(ひっぱく)するような年俸高騰や、Jクラブ間での過度な選手獲得競争を防止するべく、C契約の年俸上限を480万円に設定している。高卒や大卒の新卒選手は余程のことがない限りはC契約からスタートするが、海外クラブにとってそのローカルルールは無関係であるため、Jクラブと海外クラブが競合した場合、そのルールが逆にJクラブにとっての足かせとなる。
お金がすべてではないとはいえ、Jクラブが横並びで年俸480万円のオファーを出してくるのに対し、欧州クラブが同じ選手に1000万円のオファーを出してくれば、Jクラブは到底太刀打ちできない。つまり、今の制度を維持する限りは近い将来、高卒、大卒の目玉選手が軒並み欧州クラブに持っていかれる事態に陥りかねないということだ。田邊氏も年俸上限のルールを「完全にJクラブのネックになる」とした上で、「日本はもう、世界のフットボールの経済構造に入ったわけですから、国際競争力を阻害するようなローカルルールは取っ払っていかないと、いつまで経っても同じステージには上がれません」と言及する。