ジョーンズHCが語る日本ラグビーの未来=“ジャパンウェイ”で世界に衝撃を
ラグビー日本代表について語ったエディー・ジョーンズHC 【スポーツナビ】
2003年にヘッドコーチとしてオーストラリアをワールドカップ(W杯)準優勝、07年にはアドバイザーとして南アフリカをW杯優勝へと導いた世界屈指の名将は「“ジャパンウェイ”を確立し、15年W杯で日本を世界中から称賛されるチームにしたい」と語った。
トップチームを作るには7〜8年かかる
チャンピオンチームを作るためには、通常は世界レベルの試合を7年間する必要があります。03年のW杯で優勝したイングランドのクライブ・ウッドワード監督が最初に指揮したのは、1998年のオーストラリアとの一戦。その試合でイングランドは0−76でオーストラリアに大敗しました。まだ若かったジョニー・ウィルキンソンを起用しましたが、彼はひどいプレーをしたのです。
しかし、03年のW杯の決勝では、そのウィルキンソンが劇的なドロップゴールを決めてオーストラリアを破り、イングランドを優勝に導きました。このように、チャンピオンチームを作り上げるためには、多くの時間が必要です。03年のイングランドは、総キャップ数(代表チームの選手たちの合計出場試合数)が650にものぼりました。経験豊富でスクラムも強く、自分たちのプレーに100パーセントの信念を持っている。そういうチームを作り上げたのです。
07年W杯で優勝した南アフリカも、多くのメンバーが00年からともにプレーしていました。そして同年のU−20W杯で優勝したメンバーのうち、9人ほどが07年のW杯でもプレーしました。南アフリカもまた、6〜7年かけてチームを作り上げたのです。
19年のW杯で日本が準々決勝に進むためには、この7年間にあらゆる面において正しい選択をしていかなければなりません。選手の選考、コンディション面、プレー面などすべてです。そして15年のW杯では、世界のトップ10に入りたいと思います。
「can’t do」ではなく「can do」の視点で
「なぜ日本はこういう状況なのか?」と様々な人に問いかけました。すると、日本人は「体が小さいから」、「プロの選手が少ないから」、「日本は農耕民族だから」などと答えます。体が小さいことは事実ですが、それを変えることはできません。しかし、強くなることはできますし、速くもなれます。俊敏性を伸ばすことも、賢くなることもできます。「can’t do」で考えるのではなく、「can do」を考えるのです。不利なことを利点に変えることが大切です。日本人はチームワークに優れています。ラグビーというのは、非常に複雑なスポーツで、日本のチームワークを重んじる伝統はアドバンテージになります。
わたしはオーストラリア、南アフリカ、イングランドでコーチをして、いろいろな選手を見てきました。しかし、日本人ほど潜在能力がある選手を見たことがありません。加えて日本には素晴らしいインフラがあります。そして高校、大学とラグビーをやれる環境があり、世界でも有数の企業がラグビーをサポートし、最新の設備も整っています。そんな利点も踏まえて「can do」という精神を持たなければなりません。
日本は、今後3年間で30試合の国際試合をしていきます。そのなかで、特に二つの点を強化していきたいと思います。それはストレングスとセットプレーです。まずストレングスについては、食事を改善します。日本の食べ物は、タンパク質の量がラグビー選手にとってはふさわしくありません。選手が取る栄養を変え、ストレングスのプログラムを変えていく必要があります。
セットプレーも強化が必要です。欧州遠征でルーマニア、グルジアと対戦した際、マイボールスクラムからのクリーンボール獲得率は17パーセントでした。この2試合に関しては、連勝を飾りましたが、本来ならこのパーセンテージで試合に勝つことはできません。現実的にトップ10に入るには確率を90パーセントまで上げないといけません。そのためには日本独自のスクラムを築く必要があります。世界の強豪をコピーするだけではダメなのです。よりタイトで、低く、ダイナミックなスクラムを組んでいきたい。それは「can do」。できることなのです。