「箱根をステップに世界へ」窪田、大迫らがつむぐエースの系譜=金哲彦が箱根駅伝の注目選手を解説

構成:スポーツナビ

全日本大学駅伝では最終区での逆転劇を演じた駒大・窪田は、歴代の駒大エースたちに並ぶ選手に成長した 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】

 第89回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)が来年1月2、3日に開催される。前回大会までその話題を独占してきた柏原竜二(東洋大出身、富士通)が卒業し、箱根駅伝はひとつの時代に幕を引いた。「ポスト・柏原」時代の幕が開く今大会、箱根駅伝の新たな主役になるのは誰だろうか――。駅伝・マラソン解説の金哲彦氏に今回の箱根駅伝での注目選手について解説をしてもらった。

駒大・窪田に「世界で戦っていく」という強い決意を感じる

――各大学の16人のエントリー選手の顔触れを見ての感想はいかがですか?

 驚きはありませんね。順当にメンバーが入ったという印象です。

――まず、優勝候補の駒大では窪田忍選手(3年)に注目が集まりますが?

 もともと強かった選手ですから、前々から注目していました。2年生の時でしたか、ハーフマラソンで1時間1分台を出していますし、5千メートル、1万メートルのタイムを見ても強い選手であることが分かります。
 彼は長い距離を走れる選手です。スタミナ型のランナーと言えるでしょう。また、非常にフォームがきれいですね。

 今年、駒大は出雲駅伝で負けましたが、そこで彼が丸刈りにしたことにも好感を持ちました。丸刈りにしたことだけでなく、次の全日本大学駅伝では気合いを前面に出した走りをしていました。
 国際千葉駅伝では決して本調子の走りではありませんでしたが、学生ながら実業団選手と遜色のない走りができる、ということを証明したと思います。

――窪田選手は箱根駅伝の後に、来年3月のびわ湖毎日マラソンへの挑戦を表明しています。窪田選手のこの挑戦をどう見ていますか?

 彼は日本トップクラスのランナーです。彼が今回、びわ湖に挑戦すると聞き、将来的に世界で戦っていきたいという、彼の強い意志を感じました。決して指導者の考えだけでなく、窪田くん自身が決意したことだと思います。

 駒大では過去、藤田(敦史、富士通)選手がびわ湖で初マラソンに挑戦しましたが、窪田くんは藤田選手と比べても遜色のない記録を出すでしょう。実際、5千メートル、1万メートルのタイムは彼よりも良いわけですから。

――窪田選手自身は2区を希望しているようですが、チーム戦力から2区以外の重要区間での起用もありそうです。金さんが予想する窪田選手の区間配置は?

 これまで5区には“山の神”こと柏原くんがいたので、他のチームが勝とうとすると、序盤から飛ばしていかなければならず、区間配置にも迷ったと思います。
 ただ、今回は柏原くんがいないわけですから、オーソドックスな区間配置でいいと思います。駒大も久々に勝ちたいと思っているでしょうし、私は2区で窪田選手の走りを見たいですね。
 5区ということも考えられると思いますが、5区は特殊区間で適性もあります。それよりは2区を「エース」として堂々と走ってほしいと思います。

「恐ろしくタイムが似ている」東洋大・設楽兄弟

柏原の後、東洋大のエースを引き継いだ双子のエース・設楽兄弟(写真は兄・啓太) 【写真:杉本哲大/アフロスポーツ】

――2連覇を目指す東洋大は柏原選手という大エースが抜けましたが、設楽啓太、悠太(ともに3年)の双子がエースの座を継ぎました。設楽兄弟をどう見ていますか?

 柏原くんが目立っていたので、その影に隠れがちでしたが、彼らは総合力が高く、走力は学生の中で超一流に位置していると思います。十二分に柏原くんの後のエースとして頑張ってくれるでしょう。
 ただ、彼らは柏原くんと同じ役割をするというわけではありません。柏原くんと同じことを期待してはいけないと思います。

――設楽兄弟の走りの特徴は?

 双子のランナーというと、日本陸上界では宗(茂、猛)兄弟ら活躍していた選手がいましたが、再び双子の強いランナーが現れたなと思いました。
 双子のランナーというと、兄弟どちらかが強い、タイムが良いということがあるのですが、彼らは恐ろしくタイムが似ていることにびっくりします。

 二人の走りの特徴はやわらかい軽いフォームです。持久力に優れていますね。こういうフォームは比較的、女性ランナーに多いのです。男性選手の場合、パワーで押し切る走りの選手が多いのですが、設楽くんは二人ともパワーというよりも無駄のないフォームで、飛ぶように走り切るというのが特徴ですね。

――東洋大の現在のエース、設楽兄弟に期待する走りは?

 今年の東洋大は総合力が高く、層が厚いチームです。決してエースである彼ら二人だけに任せきったチームではありません。
 ただ、設楽くん二人とも2区やエース区間で起用されるでしょうから、チームを引っ張る走りは期待したいですね。

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