「箱根をステップに世界へ」窪田、大迫らがつむぐエースの系譜=金哲彦が箱根駅伝の注目選手を解説
早大・大迫「力ある選手」も、もっとチームを引っ張る走りを
学生長距離界のエースとして、ロンドン五輪代表にあと一歩に迫った早大・大迫。チームを勝利に導く走りができるか 【Getty Images】
実際に目の当たりにしたのですが、日本選手権で悔しがるシーン(日清食品グループの佐藤悠基とのラストスパート勝負に惜敗)は印象に深く残っています。早稲田のエースとして、そして学生長距離界のエースとして、彼自身も自覚を持って練習、試合に取り組んでいると思います。
――箱根駅伝での過去2回の大迫選手の走りを振り返ってください。
彼は仕事はするし、気持ちの良い走りを見せてくれますが、チームを引っ張る走りをしているかというと必ずしもそうではないですね。チームが勝つため、タイムを稼ごうという考えがあると思いますが、彼がこれまで走ってきた1区は「流れをつくる区間」。力でぶっちぎる必要はないですよね。しかし、タイムを稼ごう、力でぶっちぎろうという思いからか、走りが硬くなる傾向が見てとれますね。
――大迫選手にはエース区間「2区」で勝負してほしいという声も聞かれますが、2区での適性をどう見ますか?
彼はケニアの選手みたいな走りが特徴ですね。やわらかく、典型的なストライド走法で、歩幅の大きな走りをしますね。
2区は上りというほどではありませんが、後半に2つの坂がありますから彼のようなスピード型の選手は不向きかもしれませんね。
ただ、そうは言っても力のある選手ですので、2区に彼を配置するという選択は十分考えられます。現在の早稲田の戦力を考えると、2区に大迫くんというのは濃厚だと思われます。
――世界を見据えている大迫選手の課題を挙げるとしたら何でしょうか?
彼の場合、走りに気持ちが前面に出るタイプで、それが時に硬い走りになっています。もっと冷静に走ってほしいですね。気が強すぎるのか、自分がしたい走りをしようと集中するあまりに、硬い走りになってしまっているので、もっとリラックスしてレースに臨んでほしいと思います。
青山学院大・出岐、まぐれだと言われないような快走を期待
出雲駅伝でゴールテープを切る青山学院大・出岐。マラソンで世界と戦えるランナーにとの期待も大きい 【写真は共同】
ここまでうまく走れていますね。彼はピッチ走法で体が小さいですが、その分全身を使って、力強く、筋力を使った走りをしますね。心肺機能は非常に強いものを持っていると思います。
――今年はマラソン(びわ湖毎日マラソン)にも挑戦していましたが?
彼はトラックで勝つ選手というよりもロードで勝負した方がいいと思います。自分の特徴を生かすためには、と考えてマラソンに挑戦したのだと思いますね。
びわ湖でのマラソンは出来過ぎでした。駒大は普段の練習でもマラソン練習のような練習をしていますが、青山学院大はそういった練習はしていないです。今回のびわ湖は彼の能力の高さで乗り切ったように思いますので、マラソンで世界と戦っていきたいと思っているのなら、さらに練習をしていってほしいですね。
――前回大会は2区で区間賞を取り、今大会も2区での起用が考えられますが、出岐選手の区間配置についてはどう思われますか?
出雲駅伝の後に故障をしたと聞いていますが、能力的には2区を走ることが十分にできると思いますので、2区での起用だと思います。
今回、青山学院大は出雲駅伝で勝ちましたが、学生3大駅伝で一番勝つのが難しいのは箱根駅伝です。彼にはエース区間で区間賞を取る活躍をしてもらって、前回の走りや出雲駅伝の勝利がまぐれだと言われないように、前回同様な快走を期待したいですね。
――出岐選手は今季で大学を卒業します。来季以降の出岐選手に期待したいことはありますか?
学生の時代にマラソンや世界での戦いを経験できたことは良い経験になったと思います。現在、世界のマラソンでは、2時間5分台が求められていますので、そのタイムを狙える選手になっていってほしいですね。
――箱根駅伝は「世界に通用するランナーを育成したい」と創設された大会です。窪田、設楽兄弟、大迫、出岐ら将来性豊かな選手に今後、どんな期待を持ちますか? また、箱根の経験をどう生かしてほしいですか?
男子長距離界を見ますと、現在、学生たちが非常に強いです。大迫くんのように高校時代から世代トップとして活躍してきた選手もいれば、大学に入ってのし上がってきた選手もいます。非常に学生陸上界は活気があると思います。
選手たちには、箱根駅伝の人気を良い方に捉えてほしいですね。「箱根をステップにして世界に挑む」という志をもってほしいと思います。
彼らが真のエースになれば、それに憧れて、次の世代に良い影響を与えていくことになり、次世代のエースたちを育てることになっていくと思います。彼らの活躍が次の世代に引き継がれていく――そのために、彼らには世界を目指していってほしいですね。
<了>