中道瞳「目標は全部の大会で優勝すること」=殊勲の五輪サーブ秘話とVリーグに懸ける思いを語る
速さ、高さと試行錯誤を繰り返すトス
中道はアタッカーが打ちやすいトスを目指し、日々試行錯誤を繰り返している 【坂本清】
いつも打っている高さだけでなく、速いトスも混ぜた攻撃にチャレンジしていました。沙織自身も「速いトスを打ちたい」という希望があったので挑戦したのですが、打つコースが狭まる分、今までよりも決定率が落ちてしまうことが何度もありました。いろいろやってみて、結果的にセミファイナル、ファイナルは元の高さに戻しました。
――全日本でも速さに挑戦すると掲げながら、アタッカーが苦しんでいるように見えたこともあります。セッターとして速さに挑戦するジレンマはありませんでしたか?
あります。「世界に勝つためには速さが必要だ」ということで速さを意識しましたが、最後はテンさんも高いトスに戻していました。速さに適応できる選手と、高さが必要な選手もいるので、一概に速いトスがいいのかと言われるとわからないですよね。今回、オリンピックでメダルを取れたのも、ある程度の高さがあるトスを江畑(幸子/日立)と沙織が打ちきってくれたのと、レシーブで世界よりも上回っていたからだと思っています。東レの(監督の)菅野(幸一郎)さんと真鍋さんも、セッターとアタッカー出身ということで考え方が違うので、菅野さんは速さより高さが必要だという考えです。今回のリーグではセンターの速さは追求しようと思っていますが、サイドはしっかり打ちきってくれるトスを完成させたいです。
木村不在は痛いものの、どんな状況でも勝ちたい
トルコに移籍した木村(左)の不在は確かに痛いようだが、中道(右)は「どんな状況でも勝つ」と意気込む 【坂本清】
全然(笑)。正直なところ次の全日本も考えられません。とにかく今は、もう一度Vリーグで優勝したいし、「沙織がいないから弱くなった」と言われたくない一心で頑張っているところです。その先に、評価してもらえて全日本があるなら頑張りたいですが、今はとにかくVリーグ、天皇杯、黒鷲旗で優勝することしか考えていません。
――今季から狩野選手も久光製薬に復帰し、セッターにコンバートしました。狩野選手のセッター挑戦についてはどう感じていますか?
すごい決断だし、生半可な気持ちではできないですよね。相当な覚悟がなければならないことだと思うので、正直な気持ちは「舞子頑張れ」と。あの長身でハンドリングもレシーブも上手な人はあまりいないと思うので、素直に頑張れと思いますけど、私も大きい選手には負けたくないと常に思っているので、もっと頑張らなきゃと思います(笑)。
――では改めて、今リーグに向けての抱負をお願いします
目標はもちろん全部の大会で優勝することです。下の子に自信をつけさせたいので、いい経験をたくさんさせてあげたいです。東レの良さは熱く、声を出して、1球に対しても必死で食らいつく貪欲さだと思っているので、そこは誰が出ても変えずに、元気に、今までと違うバレーが見せられるように頑張ります。チームの精神的柱だった沙織がいないのは、実際に痛いです。今年は絶対苦しくなると覚悟もしています。だからこそ、どういう状況でも勝ちたい。簡単には勝てないと思うので、苦しんででも勝てるよう頑張ります。
<了>