中道瞳「目標は全部の大会で優勝すること」=殊勲の五輪サーブ秘話とVリーグに懸ける思いを語る

田中夕子

ロンドン五輪での28年ぶりの銅メダル獲得に貢献した中道。五輪を振り返りつつ、開幕するVリーグについて抱負を語ってくれた 【田中夕子】

 バレーボール全日本女子の一員として出場したロンドン五輪ではセッターとして安定感のあるトスワークを披露し、準々決勝ではベスト4進出となるサービスエースを決めた中道瞳。「仕事ができたのはあれだけ」と語りながらも、28年ぶりの銅メダル獲得に確かな貢献を果たした。そして今度は、全日本から11月17日に開幕するV・プレミアリーグ女子大会に舞台を移す。

「今はとにかくVリーグ」と語るように、4年後のリオデジャネイロ五輪を今はまったく意識していない。「全部の大会で優勝する」と豪語しているだけに、来るVリーグではどんな活躍を見せるのか。そんな中道選手に迫った。(取材日:10月21日)。

意識の変化でサーブの向上を実感

意識の変化でサーブを向上させた中道。ロンドン五輪の中国戦では、ベスト4進出を決める殊勲のサーブを打ち込んだ 【坂本清】

――ロンドン五輪は3位。真鍋政義監督が「ここがすべて」とポイントにしていた中国戦は中道選手のサーブで試合が決しました

 いろいろな方にそう言っていただくのですが、仕事ができたのはあれだけです。何ともないサーブで、打った瞬間に思っていたよりも浮きすぎたので「アウトかもしれない」と思ったのですが(笑)。中国が慌てていて、普段ならミスしないボールをミスしてくれました。それまでも舞子(狩野/久光製薬)と2人で投入されていたのに結果を残せず、2人で真鍋さんに呼ばれて「2枚替えは消防車と救急車やぞ。チームを助けにいく、助けなきゃいけない立場や」と言われていました。セッターとしては結果を出せませんでしたが、サーブで少しは結果を出すことができてよかったです。

――中道選手に限らず、五輪では日本のサーブが効果的でした

 サーブ練習に力を入れてきた成果だったと思います。サーブがいい選手の映像を何度も見たり、自主練習でサーブを打つ時も必ずコーチがついてアドバイスをくれたので、いいイメージで打つことができました。サーブに対する意識が変わったし、自主練習であんなにサーブを打ったのも初めてです。中国戦も、緊張する場面ではありましたが「練習であれだけ打ったから大丈夫」と自信を持ってあの場に立つことができました。

――意識が変わった、とのことですが具体的にどのように変わったのでしょうか?

 練習自体は特別なことをしたわけではありません。各コーナーにコーンを置いてそこを狙ったり、ネットのアンテナにゴムを張ってその間にボールを通したり。今までと違ったのは、サーブの時にボールをどうたたくか、手の押し方、ひじの高さがどうなったらいいのか、角度をどうつければいいかという細かな意識と感覚の部分です。今まではたたき方と言われても力の入れ具合ぐらいしか意識していなかったのですが、たたいてから自分の方に手を引けば落ちるサーブになり、たたくというよりも押してから手を引くと伸びるサーブになる。細かな感覚の部分ではありますが、その意識付けをするようになってからはサーブ自体が変わったのを実感しました。

中道にとって竹下、木村の存在とは

――セッターとして、竹下(佳江)選手には竹下選手の持ち味があり、中道選手には中道選手の持ち味があります。試合の中で自分が出る時、特に意識していたことはありますか?

 常にスタートで出たい気持ちはありましたが、テンさん(竹下)からスタートのポジションを奪いたいというより、テンさんと一緒にメダルを取るためにチームを作りたいと思っていました。そもそも私が呼ばれたのも、テンさんが頑張り続けてくれたおかげだし、全日本はずっと夢の場所でした。そこでテンさんと一緒にバレーができて、今まで諦めずに続けてきて本当によかったと思いました。全日本には東レアローズで一緒にプレーしている選手が多かったので、特にエースの沙織(木村、ワクフバンク/トルコ)とはしっかりコンビを合わせたかった。テンさんが「沙織が負担にならないように」トス配分を意識しているように見えたので、自分が入る時は沙織の調子を上げることを第一に考えていました。

――実際に木村選手次第で勝敗が決まる、という試合も多くありました。エースとして、だいぶ苦しんだ期間もありましたが、セッターとしてはどう見ていましたか?

 去年は本当に苦しんでいました。最終予選の時も、自分が打ちたい時にトスが上がって来ないことで、自分にもイライラしていただろうし。いろんなものと葛藤している沙織を常に見ていました。彼女は「こういうトスがほしい」とか「こういうトスじゃなきゃダメ」というものがない、セッターからすれば一番楽な選手です。今まで出会ったアタッカーのなかで、沙織ほど何でもカバーしてくれるアタッカーはいません。それに甘えて、困った時は沙織に頼るところがたくさんあったのも事実ですね。全日本で速いトスを始めた時も何でも器用にこなせるし、適応能力が高いので、どんなトスを上げてもカバーできる。でも結果として、そのせいで沙織が打つコースが狭くなってしまったり、沙織自身の悩みはたくさんあったと思います。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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