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大谷翔平のメジャー挑戦を考える 日ハムが示した韓国の実例とは?
高校生のドラフト1位候補(当時)として初めて、日本球界を経ずのメジャー挑戦を表明した花巻東高・大谷翔平
高校生のドラフト1位候補(当時)として初めて、日本球界を経ずのメジャー挑戦を表明した花巻東高・大谷翔平【写真は共同】

 花巻東高・大谷翔平がメジャーリーグ挑戦を表明してから3週間が経った。


 本人の意思ならば周囲はそれを尊重し、ただ見守れば良いのだろうが、彼の選択について様々な意見が飛び交っている。なぜなら彼が今後の球界を背負うと見込まれる逸材であること、北海道日本ハムがドラフトで指名したこと、そして何よりドラフト1位指名の高校生が直接米球界へ行った前例がないからだ。


 日本ハムは10日、大谷投手側との交渉の際、「自国でのキャリアがアメリカでの活躍にどう反映するか」として、日本人と韓国人のメジャーリーガーを具体例として伝えた。これを聞き「日米の問題でなぜ韓国を例に?」といくばくかの拒否反応を示す人もいるだろう。だが、日本人と同じアジア人であるという点と、日本に比べて具体的な事例があることから韓国が「参考」になる点も少なからずある。

高卒即米国入りの韓国選手の現状

<韓国人メジャーリーガー年齢別キャリア一覧>(拡大してご覧ください)
<韓国人メジャーリーガー年齢別キャリア一覧>(拡大してご覧ください)【ストライク・ゾーン】

 これまでにメジャーリーグでプレーした韓国人選手は、アジア人投手最多の124勝を残した朴賛浩(現・韓国ハンファ)や、ワールドシリーズ優勝を経験したサブマリン・金炳賢(現・韓国ネクセン)をはじめ12人いるが、多くの日本人メジャーリーガーのようにプロ球界を経験した後、メジャー入りしたのは2人しかいない。その2人はサムソン・リー(李尚勲=中日−レッドソックス)と具臺晟(オリックス−メッツ)で、いずれも韓国から日本を経由してアメリカへ渡っている。つまり、韓国人メジャーリーガーのほとんどがアマチュアから直接米球界入りしているということだ。右の図は彼らの年齢ごとのキャリアを表したものだ。

<高校出身韓国人メジャーリーガー成績一覧>(拡大してご覧ください)
<高校出身韓国人メジャーリーガー成績一覧>(拡大してご覧ください)【ストライク・ゾーン】

 プロ経験なくメジャーリーガーになった10人の中で、高校生の時に渡米したのは4人。2009年のワールド・ベースボール・クラシックで日本相手に3度先発した左腕投手の奉重根(現・韓国LG)と、同大会で韓国代表の中軸に座り、現在もインディアンスに在籍する左の外野手・秋信守、今年オリックスにテスト入団するも、一度も一軍登板なく戦力外となった白嗟承、そして07年の北京五輪・アジア予選で代表入りした柳済国だ。

 左の表は彼らのメジャーリーグでの成績、契約金、年度別の年齢などである。また、比較対象として、この4人と同じように高校から米球界入りし、メジャーリーガーとなった日本人投手、マック鈴木の成績も掲載する。


 この4人は高校生の時点で120万ドル(約9600万円)以上の契約金を提示された有望株だった。一方で、柳済国がカブスと契約した01年の時点で、メジャーに昇格できなかった高校出身選手も4人いる。その4人の契約金の平均は63万7500ドル(約5100万円)で、メジャー選手になった4人の半分以下だ。契約時のスカウトの目は確かだったということになる。

 中でも秋信守はメジャー昇格4年目の26歳の時に、コンスタントに試合に出場するようになり、現在まで確固たる地位を築いている。


 しかし、秋信守以外の3選手が、高校時代の評価通りの成績を残したかというと判断が分かれるところだ。また彼らは共通して、渡米からメジャー昇格まで5〜6年を費やしている。このことから多くの専門家の言葉通り、高卒選手がメジャーリーガーになるには、数年間の修業は避けられないようだ。


 前述したとおり歴代の韓国人メジャーリーガーは12人いると記したが、06年に柳済国がメジャーに昇格したのを最後に、新たにメジャーに上がった韓国人選手は1人もいない。その間、米球界と契約した高校生は21人にも上るが、彼らの多くが2A以下でプレーし、3Aに上がった選手はごくわずかだ。21人の契約金の平均は47万5000ドル(約3780万円)で契約金なしで米球界入りした高校生も3人いる。この21人の中からメジャーリーガーが生まれていない理由には、過去にメジャー入りした4選手に比べて、もともと評価が高くなかったというのも原因としてあるだろう。

室井昌也
室井昌也
1972年東京生まれ。韓国プロ野球の伝え手として、2004年から著書『韓国プロ野球観戦ガイド&選手名鑑』を毎年発行。韓国では2006年からスポーツ朝鮮のコラムニストとして韓国語でコラムを担当し、その他、取材成果や韓国球界とのつながりはメディアや日本の球団などでも反映されている。現在「室井昌也の韓国野球を観に行こう!」(ラジオ日本)に出演中。またWBCでは公式プログラムの執筆や中継局の情報提供を担当している。有限会社ストライク・ゾーン取締役社長。