【記録と数字で楽しむパリオリンピック】女子20km競歩:藤井3度目、岡田2度目の世界大会入賞なるか
日本からは、24種目に55名(男子35名・女20名)の代表選手が出場し、世界のライバル達と競い合う。
現地に赴く方は少ないだろうがテレビやネットでのライブ中継で観戦する方の「お供」に日本人選手が出場する全24種目に関して、「記録と数字で楽しむ2024パリオリンピック」をお届けする。
なお、これまでにこの日本陸連HPで各種競技会の「記録と数字で楽しむ・・・」をお届けしてきたが、過去に紹介したことがある同じ内容のデータや文章もかなり含むが、可能な限りで最新のものに更新した。また、記事の中では世界選手権についても「世界大会」ということで、そのデータも紹介している。
記録は原則として7月21日判明分。ただし、エントリー記録などは五輪参加標準記録の有効期限であった24年6月30日現在のものによった。
現役選手の敬称は略させていただいた。
200mから1500mにおいて、予選で落選した選手による「敗者復活戦」が導入され、これによって予選で敗退した何人かが復活して準決勝に進出できることになった。
ただ、各種目での敗者復活戦の組数や何人が準決勝に出場できるのかなどの条件がこの原稿執筆時点では明確にされていない。よって、トラック競技の予選・準決勝の競技開始時刻のところに示した通過条件(○組○着+○)は、「敗者復活戦」がなかったこれまでの世界大会でのものを参考に記載したため、パリではこれとは異なる条件になるはずだ。
日本人選手の記録や数字に関する内容が中心で、優勝やメダルを争いそうな外国人選手についての展望的な内容には一部を除いてほとんどふれていない。日本人の出場しない各種目の展望などは、陸上専門誌の8月号の「パリ五輪観戦ガイド」や今後ネットにアップされるであろう各種メディアの「展望記事」などをご覧頂きたい。
大会期間中は、日本陸連のSNS(X=旧Twitter or Facebook)で、記録や各種のデータを可能な範囲で随時発信する予定なので、そちらも「観戦のお供」にしていただければ幸いである。
現地と日本の時差は、7時間で日本が進んでいる。競技場内で行われる決勝種目は、日本時間の深夜から早朝にかけての競技である。
猛暑の中での睡眠不足にどうぞご注意を!
女子20㎞競歩
・決勝 8月1日 16:20(1日 09:20)
藤井3度目、岡田2度目の世界大会入賞なるか
24年2月の日本選手権の上位3名が代表となった。
日本選手権を大会新&自己ベストで制した藤井菜々子(エディオン/エントリー記録&自己ベスト1時間27分59秒=24年)は21年東京に続き2度目の五輪。世界選手権は19年ドーハから3大会連続出場なので、5大会連続の世界大会となる。
日本選手権2位で16年リオデジャネイロ、21年東京に続いて3度目の五輪となるのは岡田久美子(富士通/エントリー記録1時間29分03秒=24年・自己ベスト1時間27分41秒=19年=日本記録)。世界大会には、15年北京・16年リオ・17年ロンドン・19年ドーハ・21年東京・22年オレゴン・23年ブダペストと8大会連続の代表だ。ただし、23年ブダペストは35kmに出場予定だったが、直前の腰椎捻挫により無念の欠場となった。
3人目は柳井綾音(立命館大・3年/エントリー記録&自己ベスト1時間29分44秒=24年)。参加標準記録1時間29分20秒には届かなかったがワールドランキング32位(6月30日時点は36位)で出場権を得た。23年ブダペストに続いての日の丸だ。岡田と柳井は、今回初めて採用された男女混合リレーにも出場する。
ドーハから5大会連続の世界大会となる藤井は、19年ドーハ7位、22年オレゴン6位と2度入賞している。21年東京五輪は入賞まであと31秒の13位。パリでは五輪初入賞を決めたい。
岡田は、19年ドーハで6位入賞。五輪は、16年リオが16位、21年東京が15位。三度目の正直の五輪で入賞を目指す。
柳井は、23年ブダペストは30位だったが、その半月前の中国・成都でのユニバは6位入賞。22年U20世界選手権は銅メダル。初の五輪でしっかりと力を発揮し、20歳の若い力を25年東京世界選手権以降にもつなげたい。
◆五輪&世界選手権での入賞者と最高成績・最高記録◆
<五輪>
最高成績は、
<世界選手権>
入賞者は、
12年ロンドン五輪の渕瀬は当初「11位」でのフィニッシュだったが、2位と5位の選手がのちにドーピング違反で失格して順位がふたつ繰り上がって9位となった。さらに、11年後の2023年3月になって世界新記録で優勝したロシア選手のドーピング違反が確定し、最終的には当初の11位から順位が3つ繰り上がって8位入賞となった。これにより、渕瀬は世界選手権に続き五輪も入賞。女子競歩での五輪初入賞者となった。
◆五輪&世界選手権の1・3・8位の記録◆
1999年の世界選手権から距離が10kmから20kmになった。
「1位・3位・8位の記録」は以下の通り。
◆2011年以降の世界選手権&五輪での気温・湿度、トップの5km毎のタイム◆
2011年以降のスタート時の「気温・湿度」、「先頭の5㎞毎のスプリット」、「前半と後半」のデータは以下の通り。
なお、スプリットは各地点を先頭で通過した選手のタイムから算出したもので、優勝者のものとは限らない。五輪の20㎞競歩については5㎞・15㎞のタイムが不明のため、5㎞は4㎞&6㎞、15㎞は14㎞&16㎞の通過タイムから推定した。「前後半差」の「△」は、後半の方が速かったことを示す。
なお、カッコ付きの優勝記録は、トップでフィニッシュした選手がのちにドーピングで失格したもの。リザルトからは抹消されたが、その時点ではレースに加わっていたのでそのまま残した。
男子もそうだが次第にペースが上がっていく「ビルドアップ」が多い。特にラスト5㎞のアップが顕著で、高温多湿の19年ドーハ、22年オレゴン以外は、21分前後でカバーしている。もっと細かくみると、18㎞からの残り2㎞は、8分10秒~20秒あたり(5㎞換算20分30秒あたりのペース)のことが多い。暑かったドーハでも8分26秒、ラスト1kmは4分09秒。同じく終始30℃以上で湿度60%台だった東京五輪(札幌で実施)でも8分12秒と4分06秒で最後を上がっている。
19年ドーハ・21年東京五輪・22年オレゴンでの岡田と藤井、23年ブダペストでの藤井と柳井の5km毎は、以下の通り。
上記、19・21・22・23年の岡田・藤井・柳井の2km毎の通過順位は、以下の通り。
10km過ぎから順位を上げていくことができた時に入賞を手にしている。
10㎞過ぎから振るい落としのサバイバルが始まり、15㎞まで生き残った選手でメダルや優勝を目指しての「ヨーイ、ドン!」となることがほとんどだ。
◆8月1日のパリの過去3年間の気象状況◆
19年ドーハと21年東京(競歩は札幌で開催)はともにタート時に30℃を超える高温、22年オレゴンも25℃だったが、パリはどうか?
レースがスタートする8月1日午前9時20分(日本時間16時20分)に近い過去3年間のパリの気象状況は以下の通り。
参考までに、男子のレースがスタートする7時30分からのデータも示した。
【過去3年間の8月1日のパリの気象状況】
ということは、「優勝」「3位」「入賞」のラインもかなり高くなってくる可能性があるということだ。
野口純正(国際陸上競技統計者協会[ATFS]会員)
【パリ2024オリンピック特設サイト】
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