ベッテル4連勝も、レッドブルチームに生じた誤算=「散々なレースだった」可夢偉は14位に終わる

吉田知弘

4連勝を飾ったベッテル。“他を寄せ付けない強さ”が随所に目立った 【Getty Images】

 2012年のF1世界選手権も残り3戦。第17戦インドGPが28日、インドのブッダ・インターナショナル・サーキットで開催され、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)がポール・トゥ・ウィンを果たし、今季5勝目を飾った。2位は5番手スタートから巻き返したフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)。ドライバーポイントでもし烈な優勝争いを展開している両者は、トップを走るベッテルが13ポイント差を2位アロンソにつけている。

 なお、小林可夢偉(ザウバー)は14位に終わった。

“他を寄せ付けない強さ”が復活したベッテル

 危なげないスタートでトップを死守。その後は2位以下に対して着実にリードを築いていった。33周目にハードタイヤに交換してからもペースは衰えることなく順調に周回を重ね、60周の間で一度もトップを譲ることのないままチェッカーを受けた。今季は7人の勝者が誕生するほど大混戦となったシーズン。前半戦では表彰台に登る機会が少なく、苦しいレースが続いたベッテルだったが、19戦11勝を挙げた昨年のような“他を寄せ付けない強さ”が随所に目立ったレースだった。

 だが、チャンピオン争いという点では一つだけ“誤算”が生じた。最大のライバルであるフェルナンド・アロンソの2位だ。前回の韓国GPでランキング首位に立ったとはいえ、ここでアロンソとの差を1ポイントでも多く広げ、3度目のチャンピオン獲得に向けて貯金を作りたかったに違いない。僚友マーク・ウェバーが2位に入れば、アロンソとのポイント差をさらに大きくできるはずだった。

 しかし、アロンソはベッテルの独走を許さなかった。今回は予選でマクラーレン2台にも先行を許し5番手からのスタートだったが、序盤から積極的に前を狙う走りで4周目に3位に浮上した。その後も辛抱強くレッドブル2台を追いかけ続けると、レース後半になってKERSのトラブルでペースが上がらないウェバーに迫り、48周目の裏ストレートでパス。ついにレッドブル勢の牙城を崩すことに成功した。

 トップを走るベッテルに追いつくことはできなかったが、終盤になってもファステストラップを連発して2位フィニッシュ。今持っている力をすべて出し尽くしたベストな結果と言えるだろう。

 これによりドライバーランキングはベッテルが240ポイントで1位、アロンソが227ポイントで2位となった。当初は16ポイント差がつくと思われていたところを13ポイントに抑えたアロンソ。逆にベッテルは4連勝を飾ったものの、思い描いていたほどの貯金を作ることができなかった。

 数字だけで見ればベッテル有利に変わりはないが、この両者の心境の差が次回のアブダビGP以降、どう影響してくるだろうか。

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著者プロフィール

1984年生まれ。幼少の頃から父の影響でF1に興味を持ち、モータースポーツの魅力を1人でも多くの人に伝えるべく、大学卒業後から本格的に取材・執筆を開始。現在では国内のSUPER GT、スーパーフォーミュラを中心に年間20戦以上を現地で取材し、主にWebメディアにニュース記事やインタビュー記事、コラム等を掲載。日本モータースポーツ記者会会員

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