新生オランダ代表、若い力に未来を託す=若返りと結果を同時に追求

中田徹

前半のオランダはDFのミスが目立った

ファン・ペルシー(中央)のゴールなどでトルコを下し、白星発進。オランダ代表はW杯予選を通じて若返りを図り、同時に結果も求める 【VI-Images via Getty Images】

 欧州でも9月8日から2014年ワールドカップ(W杯)・ブラジル大会の予選が始まった。10年のW杯・南アフリカ大会では準優勝という素晴らしい結果を残したオランダ代表だが、2年後のユーロ(欧州選手権)2012では3戦全敗という屈辱を味わった。チームの立て直しを託されたルイス・ファン・ハール監督は、若返りと結果の2つを同時に追求しなければならない。

 オランダにとって初戦の相手はトルコだった。UEFA(欧州サッカー連盟)スーパーカップでチェルシーを4−1と破ったアトレティコ・マドリーのエムレ・ベロゾグル、アルダ・トゥランらテクニックに優れた選手が多い好チームだ。ファナティック(熱狂的な)なサポーターが1万7000人も集結するとあって、オランダの苦戦が予想された。

 実際、前半のオランダは何度も危ない場面があった。キックオフから1分、早くもトルコはCKからビッグチャンスを迎えたが、オメル・トプラクのヘッドはゴールを外れた。14分にはオランダのGKクルルとDFインディのコミュニケーションミスが起こり、インディのクリアが危うく自軍ゴールへ吸い込まれそうになった。24分にはDFウィレムスがボールを失い、アルダ・トゥランがGKクルルと1対1になるもシュートを外した。FWウムト・ブルトの高さも脅威だった。41分にはそのウムトのヘッドがバーをたたいた。

 このように振り返ってみると、前半のオランダはDFに個のミスが目立ったこと、そして空中戦で勝てなかったことから多くのピンチを招いていた。ファン・ペルシのヘディングシュートにより1−0で折り返したものの、流れはトルコに傾いていた。そこで指揮官がとった策は、若手(DFヤンマート、MFクラーシ)を若手(DFファン・ライン、MFフェル)に代えてチームを立て直すことだった。前半をファン・ハール監督はこう振り返る。

「何人かの選手がいつものレベルに達していなかった。これがわれわれにとってブレーキとなったが、それでもチームオーガニゼーションは保ちながら戦えていた。われわれが与えたピンチは“個”のミスから生まれたもの、もしくは2度のCKからだった。うちのチームは背が低い。クラブでの試合でもヘディングに強くない。そのことは今日の試合でも見てとれた」

 ヤンマートとクラーシは共にこの日が代表デビューマッチだったが、フィジカルで脆さを露呈した。そこでパワーのあるファン・ラインとフェルを入れて、トルコの後半のパワープレーに対抗したのだが、この2人もまた、トルコ戦が代表2試合目という初々しさだった。

極端に若い守備陣を引っ張ったのはハイティンハ

 後半、トルコは4トップとも呼べる布陣をとってオランダの4バックと1対1の状況を作り続けたが、時間の経過と共に攻めあぐねた。逆にオランダは中盤の数的優位を生かして試合をコントロール。前半、決して良かったとは言えないインディ、ウィレムスも調子を戻していった。

「(足をつったハイティンハに代わって入った)フラールも含めて、わたしは途中出場の3人の選手にとても満足している。後半、トルコは2度チャンスがあったものの、それは彼らがリスクをとって反撃に出たから。オランダが改善されたのは明らかだった」(ファン・ハール監督)

 ロスタイム、ナルシングが2−0となるゴールを決めた。国を背負って戦う若者たちの重荷が下りた瞬間だった。20歳のインディは61歳のファン・ハール監督に向かってジャンプしながら抱きついて、そして転がった。今、チームの雰囲気は最高だ。
「チームで一番の巨漢がわたしに向かって突進してきた。これはヤバいとわたしは彼と抱きあいつつ微妙に力をかわした」(ファン・ハール監督)

 試合後、評価を高めたのはハイティンハだった。今季、所属先のエバートンでほとんど出場機会がないのは今後の懸念材料だが、この28歳のベテランはGKクルル(24歳)、DFヤンマート(23歳)、インディ(20歳)、ウィレムス(18歳)という極端に若い守備陣を引っ張った。

 若返りと結果を両立させたトルコ戦の勝利の後、今回の代表にファン・デル・ファールト、アフェライ、ファン・デル・ビール、ナイジェル・デ・ヨンクが招集されなかったこと、フンテラール、カイト、マタイセン、ステケレンブルフがベンチに座ったままだったことは、ほとんど忘れ去られていた。代わりにオランダ人が思い出したことは、前回、ファン・ハール監督がオランダ代表の指揮を執った時、02年日韓大会のW杯予選初戦、対アイルランド戦を2−2で引き分けたことだった。

 次はアウエーのハンガリー戦だ。前回のW杯予選でオランダはハンガリーを4−0と下したが、今回はそう簡単にはいかないだろう。もしかしたら負けることだってあり得る。そんなリスクをとりつつも、オランダは若い力に懸ける。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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