独島問題が韓国サッカーにもたらした影響=焦点はKFA会長とパク・チョンウの処遇

キム・ミョンウ

韓国世論はKFA会長を“国賊”扱い

ロンドン五輪の日本戦後に「独島は我が領土」のプラカードを掲げたパク・チョンウ。独島問題は韓国内でも大きな波紋を呼んでいる 【写真:AP/アフロ】

 ロンドン五輪のサッカー韓国代表MFパク・チョンウが3位決定戦の日本戦後に独島(日本名・竹島)の領有権を主張するメッセージを掲げた問題が、韓国内の各方面に飛び火し、大きな波紋を広げている。

 中でも最も苦しい立場に追い込まれているのが、大韓サッカー協会(KFA)のチョ・ジュンヨン会長だ。日本サッカー協会(JFA)へ送ったいわゆる“謝罪”の英文メールが発端になり、引責の危機に陥ったと国内メディアが一斉に報じている。

 各紙のタイトルも目を引く。
「屈辱外交、アジアの盟主の地位を揺るがせた」(スポーツ朝鮮)
「レッドカードをもらったチョ・ジュンヨン会長、早期退陣論が拡散」(スポーツワールド)
 韓国の世論は、KFA会長を完全に“国賊”扱いしているが、何が原因でこのような形になってしまったのか――。一連の流れを韓国の反応とともに振り返ってみたい。

JFAに送った書簡には「非紳士的行為」の一文も

 ロンドン五輪の日本戦後にプラカードを掲げてグラウンドを走ったパク・チョンウは、それを観客席から受け取っていた。その姿は確かに写真でも確認されている。これを国際オリンピック委員会(IOC)が、「政治的メッセージを含む宣伝活動はオリンピック精神に背く」と判断したため、パクは銅メダル授与を保留された。
 問題はここからだ。この行為が本人の意思による故意的なものか、あるいは偶発的なものだったのかという点だ。

 IOCはパクのメダル保留後、異議申し立ての関連資料を提出するよう韓国に求めていた。その後、この件に関してIOCのロゲ会長が、14日付の東亜日報のインタビュー取材に応じた。
 ロゲ会長はそこでこう語っている。
「選手は事前に規定を熟知しておくべきだった。例外を認め始めると統制が難しくなる。メダルはく奪か否かについて今話すのは時期尚早で、FIFA(国際サッカー連盟)の調査結果に基づいて処分内容を決めたい」

 つまり、行為自体に問題はあったと判断したが、メダルの扱いについてはFIFAの調査結果次第で決めるということだ。ロゲ会長がそう表明したことから、KFAの動きはより慌ただしくなった。順序としてはIOCやFIFAへの報告を経て、結論を出すべきだった。

 だが、すでに13日の時点で、KFAのチョ・ジュンヨン会長のサイン入りで、JFAの大仁邦弥会長宛に一通の書簡が送られていたのだ。KFAは当初、これを「謝罪文ではない」としていたが、この文面が中央日報によって入手、公開されると“謝罪”と受け取られても仕方がない表現が明らかになってしまった。
 文章の中にはこんな一文が含まれていた。
「非紳士的行為(Unsporting celebrating Activities)」

 KFAがパクの行動を「スポーツ精神に背く行為」と認めたと解釈されてもおかしくないだろう。そんな中、15日にFIFA本部に向かったのがキム・ジュソン事務総長だった。パクの一連の経緯の報告を16日までに済ませて、17日に韓国に帰国した。仁川空港で記者たちの取材に応じたキム事務総長は、JFAに送ったメールに関してこう語った。
「今回のパク選手の件に関して遺憾の意を表明しただけで、メディアで報道されている内容と違って、謝罪の意味ではない。試合中に発生した部分に関して、KFAの立場からJFAへ、公式に遺憾の意を伝えたまでです」

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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