独島問題が韓国サッカーにもたらした影響=焦点はKFA会長とパク・チョンウの処遇

キム・ミョンウ

韓国国会でも糾弾されるKFA会長

銅メダル獲得に喜ぶ韓国イレブン。悲願を達成した韓国サッカーだが、独島問題が与えた影響は少なくない 【Getty Images】

 だが、その言葉もむなしく、チョ会長は17日に開かれた韓国国会の文化体育観光放送通信委員会に呼ばれ、与野党議員から厳しい質問を浴びせられた。
 以下は議員とKFAチョ会長のやり取りのワンシーンだ。

議員:「パク選手の行為は、オリンピック憲章50条(オリンピック施設での政治的行為禁止)違反なのか?」
チョ会長:「違反ではないでしょう」
議員:「違反ではないと言いながら、なぜ低姿勢なのか。もっと堂々としなければいけないのでは?」
チョ会長:「国内の視点で判断する問題ではなく、外部の視点で判断しなければならないので」
議員:「日本の視点、竹島の視点で、本当によく判断しましたね。一体、国籍はどこですか?」

 まさかここまで言い詰められるとは、チョ会長も予想だにしていなかったに違いない。
 さらに、一般ネットユーザーの書き込みにはこういった意見もある。
「パク選手の行為は、オリンピック憲章に反するものと判断されたのであって、先にIOCにきちんと説明すべきだった」
「大韓サッカー協会もFIFAへの報告を前に日本協会に遺憾の意を表明するとは、機能が麻痺(まひ)しているんじゃないか」
「固有の領土なのに問題になること自体がおかしい」

 一方、スポーツ担当の一般紙記者は開口一番、「タイミングの悪さもあった」と言う。「KFAがJFAにすぐに書簡を送ったのは、今後も日韓サッカー界が良好な関係を続けるための一手だったのはよく理解できます。確かにJFAもそこまで大きく問題視していなかったはず。ですが、イ・ミョンバク大統領の独島上陸に続いて、8月15日は光復節(日本では終戦記念日)があった。国民の気持ちが国家レベルに高まっているときに、明るみになったのがKFAの書簡でした。ましてやパク選手の問題が“独島問題”のプラカードだけに、韓国全体が神経質になっていた感じは否めません」

渦中のパク・チョンウはどのような処遇を受けるのか

 日本に対して“弱腰な外交”を続けたままでは、パクの件も、独島の領有権にも影響を及ぼすのではないかと考える国民が多いということだろう。今回はKFAがこうした世論の流れを読めず、後手に回った点は否めない。

 そうした流れの中、今後の焦点は大きく2つある。
 1つはチョ会長の去就だ。時期が来れば責任をとる可能性を示唆しているが、今後の動きを見守りたいところ。仮に辞めるとなると、今後のサッカー界の動きに影響を及ぼしかねず、決して得策ではないとも考えられる。

 もう1つは、パク・チョンウがFIFAとIOCからどのような処遇を受けるのかについてだ。
 パクは現在、Kリーグ所属チームの釜山アイパークに戻り、コンディション回復に努めている。22日の慶南FCとのアウエー戦に出場する予定だという。また、同じ五輪代表だったキ・ソンヨン(セルティック)はトーク番組でパクのことに触れ、「(騒動の後)かなりショックを受けていたけれど、今はだいぶ良くなりました」と語っていた。

 いずれにせよ、現時点ではFIFAの調査結果、それを踏まえたIOCの発表を待つしかない。メダル授与の可否はもちろん、国際試合の出場停止なども想定されるが、これ以上、日韓双方に遺恨が残るような制裁だけは避けてもらいたいものだ。

<了>

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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