寺戸が大逆転KO勝利で王座死守 梶原はKO負けでベルト海外流出=Krush

長谷川亮

壮絶なダウンの応酬を制しベルトを死守した寺戸 【t.SAKUMA】

「Krush.21」が12日に都内・後楽園ホールで開催され、ダブルメーンイベント第1試合で2012年を代表する一戦が生み出された。
 この日行われたのは寺戸伸近が王者に君臨するISKA世界バンタム級タイトルマッチ。これまで4つのベルトを腰に巻き、ヨーロッパ最強の呼び声高いアンディ・ハウソン(イギリス)を相手に迎え、寺戸が昨年奪取した王座の初防衛戦を行った。

■いきなり2度のダウンで絶体絶命の寺戸

 初回、寺戸は得意とする右ローをさっそく効かせる好調な滑り出し。パンチのコンビネーションから右ローへつなげ、ハウソンにダメージを蓄積していく。これで意識を下に落として右ストレートを決め、寺戸はラッシュを掛けんとするが、そこへハウソンは右スイングフックをカウンターで返してヒット。これで寺戸の足を止め、歴戦の雄(63戦53勝29KO9敗1分)らしい只者でなさを見せる。

 しかし嵐は2Rに吹き荒れる。ハウソンの右ローに右ストレートをカウンターした寺戸は、これでフラつかせてそこから再度のラッシュに入る。ダウン寸前に思われたハウソンだが、なんと右スイングフックを当て逆に寺戸をダウンさせる。この日このパンチがよく当たるハウソンは、立ち上がった寺戸にさらに右スイングフックを連打し2度目のダウンを与える。

乱戦にケリをつけた右ストレート

2度のダウンから右ストレートで大逆転KO 【t.SAKUMA】

 KO勝ち目前のハウソンは寺戸の前蹴りも弾き飛ばして前へ行く。絶体絶命に思われた寺戸だが、KO狙いでガードの空いたハウソンを左フックでとらえてダウンを取り返す。
 信じられないといった表情を浮かべるハウソン。しかしまだ余力は十分で、寺戸に右クロスを当てダウンを迫る。だが、寺戸もダメージの残る様子ながら右ストレートを返してとらえ、ハウソンはクルリと回転するように背を向け2度目のダウン。
 どちらももう倒れられない崖っぷちの展開となったが、寺戸はさらに右ストレートを突き刺し2R2分07秒、3度目のダウンを与えてKO勝ち。1ラウンドの間に5度のダウンが飛び交う乱戦を大逆転で制し、タイトルを死守した。

 試合後マイクを取った寺戸は「打たれて言うことを忘れちゃいました」とさすがに激闘のダメージを感じさせたが、今月26日にKrush名古屋大会が行われることを受け、「僕と(山本)優弥のキックボクシング人生が始まった広島でもKrushをやらせてもらいたいと思います」とアピール。宮田充Krush代表が「来年やりましょう」と答えると、観客は寺戸の勝利とともにこれを祝福し、紙一重の勝負で王者を追い詰めたハウソンにも健闘を称える拍手を送った。

王座の国際化を歓迎した梶原だったが…

ガードの下がった梶原に左ハイが直撃 【t.SAKUMA】

 ダブルメーンイベント第2試合ではKrush−63kg級タイトルマッチが行われた。昨年末、大和哲也を破り初防衛を果たした梶原龍児がフランスよりトーマス・アダマンドポウロスを迎えて2度目の防衛戦。トーマスは昨夏初来日し、梶原の同門・尾崎圭司を強打と強蹴で下した強豪だ。
 海外からの対戦相手となり、Krush王座のインターナショナル化を歓迎した梶原だが、やはりトーマスは一筋縄ではいかない相手だった。

 尾崎を痛めつけた右ローをトーマスはこの試合でも1Rから放っていく。梶原は3分3R、短期決戦となるタイトルマッチではローキックを効かせられないと踏んでいるかカットせず、また浴びても表情を変えることなく、じりじりと出てトーマスにプレッシャーを掛ける。だが、トーマスのローキックは鈍い音を立てて決まり、威力を感じさせる。

 トーマスは2Rも右ローに力を込め、これで梶原の出足を止める。それでも前に出る梶原だが、ペースは取れない。しかしワンツーから左ボディーをつなぎ、これが効いたトーマスはガードが落ちる。だが、トーマスはここで弱気にならず逆に前へ出て梶原に左ボディーを返し、下がった梶原のガードが落ちているのを見て取ると左ハイ。これが見事にとらえ、梶原は横向けにバタリと倒れてノックアウト(2R1分42秒)。

 Krush王座が海外へ流出する事態となったが、「コンニチワ! アリガトウ! Krushで戦うことができチャンピオンになることができてとてもうれしいです。日本が大好きです。私がKrushのチャンピオンです!」とトーマスが日本愛とKrush愛を前面に出し語ると、場内は新王者を温かな反応で迎え入れた。

「Krush.21」

8月12日(日)東京・後楽園ホール

<ダブルメインイベント第2試合(第10試合)Krush−63kgタイトルマッチ 3分3R>
○トーマス・アダマンドポウロス(フランス/Team Busonera/ISKAフランス3冠王/挑戦者)
(2R1分42秒 KO)
●梶原龍児(チームドラゴン/王者)
※トーマスが第2代王者に輝く。梶原は2度目の防衛に失敗。

<ダブルメインイベント第1試合(第9試合)ISKA世界バンタム級タイトルマッチ 3分5R>
○寺戸伸近(Booch Beat/王者)
(2R2分07秒 KO)
●アンディ・ ハウソン(イギリス/バッドカンパニー/挑戦者)
※寺戸が初防衛に成功。

<第8試合 GAORA杯・Krush −63kg WILDRUSH League 2012公式戦 3分3R>
○塚越仁志(シルバーウルフ)
(判定2−0)
●高橋幸光(はまっこムエタイジム)
※30―28、30−29、29−29

<第7試合 GAORA杯・Krush −63kg WILDRUSH League 2012公式戦 3分3R>
○NOMAN(DTS GYM)
(判定2−0)
●TaCa(triple−y)
※30−28、29−29、30−29

<第6試合 Krush −70kg Fight 3分3R延長1R>
○山崎陽一(シルバーウルフ)
(判定3−0)
●藤元洋次(OZMOSIS)
※29−28、30−27、29−28

<第5試合 Krush −55kg Fight 3分3R延長1R>
○木村健太郎(サバーイ町田/J−NETWORKバンタム級王者)
(延長判定3−0)
●鈴木優也(スクランブル渋谷)
※三者10−9
※本戦判定は30−29、29−29、29−29

<第4試合 Krush −60kg Fight 3分3R延長1R>
○翔・センチャイジム(センチャイムエタイジム)
(判定3−0)
●渡辺 武(Booch Beat)
※30−28、30−27、30−26

<第3試合 Krush −63kg Fight 3分3R>
○栗原圭佑(Fighting Kairos)
(判定2−0)
●宇都宮城(u.f.c)
※29−28、29−28、28−28

<第2試合 女子−52kg契約 2分3R>
○朱里(WNC/ボスジム)
(2R1分06秒 KO)
●エミNFC(ナゴヤファイトクラブ)

<第1試合 Krush −60kg Fight 3分3R>
○北井智大(チームドラゴン)
(判定3−0)
●闘士(池袋BLUE DOG GYM)
※28−26、28−27、28−27

<オープニングファイト第3試合 Krush −60kg Fight 3分3R>
○レオナ・ペタス(バンゲリングベイ・スピリット)
(1R1分40秒 KO)
●高橋龍太郎(マッハ道場)

<オープニングファイト第2試合 Krush -55kg Fight 3分3R
○Yo−Hei(KSS健生館)
(2R2分38秒 KO)
●今井良次(ポゴナクラブ)

<オープニングファイト第1試合 Krush −60kg Fight 3分3R>
○誠哉(チームドラゴン)
(2R2分5秒 KO)
●桑名大輔(FKC)
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著者プロフィール

1977年、東京都出身。「ゴング格闘技」編集部を経て2005年よりフリーのライターに。格闘技を中心に取材を行い、同年よりスポーツナビにも執筆を開始。そのほか映画関連やコラムの執筆、ドキュメンタリー映画『琉球シネマパラダイス』(2017)『沖縄工芸パラダイス』(2019)の監督も。

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