イチローが語るヤンキース=名門が背負う宿命とは!?

木本大志

「明確なその目標がある」から、どんな試合もあきらめない

ヤンキースでは「ひとつの成功がものすごい喜びを生むし、ひとつの失敗がものすごく精神的にこたえる」と語るイチロー 【写真は共同】

 チームの戦い方、その姿勢についてはこんな話をしている。

「シアトルでの3つ目(日本時間26日)でしたかね、デーゲームの日に、ふと時計を見た瞬間があったんですよ。12時40分のゲームだったんですけど、すでに4時になっていたという。3時間20分経ったゲームってまあまあ長いんですよね。それで、『あぁ』と思いましたね」

 どういうことかというと、それは試合に対する意識の差だとう。

「勝つっていうことに集中していることは大きいんじゃないですかね。明確なその目標がある」

 言い換えれば、どんな試合もあきらめない、という言い方もできよう。28日(日本時間29日)のレッドソックス戦は、5回表の段階で1対6とリードされていた。最終的には試合を落とすのだが、8回には一度、同点に追いついている。

 翌29日(同30日)の試合も7回表まで0対2で負けていて劣勢ムードだったが、8回に追いついた。さらに30日(同31日)の試合も、7回表に2点を奪われて2対5とされたが、その裏にイチローのメジャー通算100号本塁打などで2点を返し、1点差にまで迫っている。

「ひとつの成功がものすごい喜びを生む」

 イチローは移籍前、「相手としてやっていたときは、とにかく最後のアウトを取るまで嫌なチームっていう印象」を持っていたそうだが、ここまで見ていて、確かに4点、5点なら最後までわからない、というイメージだ。

 なぜ、そういう展開になるのか。ヤンキースというチームに少し慣れてきた29日(日本時間30日)――レッドソックスとの試合後、イチローはこんな話をした。

「捨てられるものがない、プレーの中に。常に集中して動かないと1個のフォアボールでものすごい大きな、ゲームを左右する、塁に出るだけでそういう可能性が生まれるので、特にその球場ではね、野球がちょっと違うなぁというふうに思います」

 捨てられるものがない――。その日は、7回に内野安打を放って、すぐさま盗塁を記録したが、これまで以上に「失敗はできないという意識が働いた」そうだ。

 ただ、盗塁を決めた直後、凄まじい歓声が、スタジアムを包む。その反応に対して、イチローが言っている。

「ひとつの成功がものすごく満足っていうか、喜びを生むし、ひとつの失敗がものすごく精神的にこたえる。そういうことは起きるでしょうね」

イチローが感じたことのない緊張感

 これまでイチローは、ワールドベースボールクラシック(WBC)でも、そういう戦いをしてきたはず。オリックス時代には日本シリーズも経験している。しかし、そうであったとしても、ヤンキースに身を置いて感じる1プレー1プレーに対する緊張感、集中力は、ファンも含めて、今まで感じたことのないもののようだ。

 そういう野球をしているのは「初めてかもしれないですね」。

 なぜピンストライプを身にまとうと、そういう野球になるのか? イチローは言った。

「それはこのチームがずっと背負ってきた宿命がそうさせているんでしょうね。そうやってできたんだと思いますけどね」

 背負うものの重みについては、「それを感じられるようになりたい」。
 イチローは今、一歩一歩、そういう世界に身を置きながら、ヤンキースの一員になろうとしている。

<了>

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