イチローが語るヤンキース=名門が背負う宿命とは!?

木本大志

名門、ヤンキースに移籍したイチロー。その雰囲気は「理想的」だという 【写真は共同】

 8月1日(日本時間2日)、デーゲームの取材を終えて帰ろうとすると、ヤンキー・スタジアムの広いコンコースで、子どもたちが野球をしていた。
 おそらく、選手や関係者の子どもだと思うが、よく見ると、ピッチャーをしているのはマーク・テシェイラだった。

 名門、ニューヨーク・ヤンキース。

 外からは見たことがあったが、これまで中からチームを見る機会はなかった。選手らのプライドが高く、取材をするにも敷居が高いのかと思ったが、そんなテシェイラの姿はイメージを変えた。

 では、もっと内側――選手から見たヤンキースはどんなチームなのか。移籍から約2週間。イチローの言葉をたどっていくと、それが垣間見える。

勝っても負けても変わらない「理想的」な雰囲気

 まず、クラブハウスの雰囲気。移籍初日の試合後、「今日一日だけですけど」と断った上で、こう話した。

「ここに流れている空気っていうのは、ダグアウトもそうですけど、もの凄く落ち着いた空気で、気持ち良かったですね。静かなわけではない、ただ、ガチャガチャうるさいだけではない。そのバランスが、好みだと僕は感じました」

 同じような話は、ニューヨークでの初日にも口にしている。

「クラブハウスの空気っていうのは理想的。このアメリカという国でクラブハウスの中であれだけ落ち着いた、動じない空気というか、おそらく勝っても負けても気持ちが大きく動かないであろうというようなことを想像させる」

 比較するのがマリナーズしかないが、確かにマリナーズの場合、勝った場合と負けた場合の試合後の雰囲気はまるで違う。勝つと音楽が鳴り響き、負けると音楽はない。

 選手の対応も、勝っても負けても変わらなかった。例えば、28日(日本時間29日)のレッドソックス戦では同点とした直後の9回に、カーティス・グランダーソンのミスで試合を落としたが、グランダーソンは試合後、30〜40人のメディアに囲まれながらも、淡々と取材に答えている。その4日後、今度は本塁打を打って囲まれたが、グランダーソンの声のトーンは一緒だった。

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