川崎とF・ニッポンのありえないコラボ=等々力のトラックを疾走したフォーミュラカー

江藤高志

今後の連携を模索、コラボチェッカーフラッグも

「異業種とのコラボをやるべき」と実現に向けて尽力したJRP白井裕社長 【江藤高志】

 川崎、JRPの両者が満足した今回のコラボは一過性のもので終わることはなさそうである。そもそも川崎は、他の競技団体との連携に積極的に取り組んできたクラブである。例えば、現在も大相撲春日山部屋や川崎新田ボクシングジムとの交流は続いている。直近では7月10日に川崎新田ボクシングジムが主催した大会にサポーター有志が駆けつけて声援を送っており、同ジムの新田渉世会長が「サポーターのみなさんの応援が糧になりました」とコメントしている。

 一方、春日山部屋は塩ちゃんこが名物グルメとして定着しており、また年に1回の「イッツァスモウワールド2012」が今年も4月28日の広島戦で開催されている。今後は8月4日には春日山部屋キッズスモウ体験が。また9月には5年目となる大相撲本場所の応援ツアーの催行も決まっている。

 その一方で残念ながら7月14日、15日の富士スピードウェイの大会と、8月4日、5日のツインリンクもてぎでの大会は、川崎の試合が重なっており川崎サポーターが大挙して応援に駆けつけることはできそうにない。しかし小檜山広報は驚きの言葉を口にする。

「せっかくこうしてつながりが持てましたし、今後も何かつながりを持ちたいということで、デモ走行した2台に貼ったフロンターレさんのステッカーをそのまま残してレースに出ることになりました。あのサイズだと片側で500万円くらいしますから、両方で1千万円。2台で2千万円分の広告価値があります」

 また、後援会の会員向けに頒布されたコラボチェッカーフラッグを、7月14日、15日の富士スピードウェイでの大会で、いわゆるチェッカーフラッグとして使用すべく申請が進んでいるという。この申請が受け入れられれば、フォーミュラ・ニッポンを筆頭に、F3、ヴィッツ、ランボルギーニ、アジアンGTという5つのカテゴリーのレースすべてで使用されることになるという。

志を同じくする領域はまだ存在する

 ちなみに中嶋、塚越の両ドライバーはデモランを終えるとそのまま応援団が陣取るスタンドに飛び入り参加して応援に加わった。「トレーニングの一環として2人ともフットサルをやっておりサッカーがもともと好きなんですね。そこで聞いてみたら、応援してみたいと。断るのかなと思いましたし、ホテルもちゃんと取っておいたんですけどね」と小檜山広報。またハーフタイムには西城秀樹さんのYMCAをサポーターとともに踊り、等々力劇場を満喫している。彼らドライバーがこうしてJリーグの試合に参加することで、顔が見えにくいモータースポーツの選手とサポーターとに接点ができたことになる。だからこそ、川崎サポーターは今回JRPから富士スピードウェイでの大会で受ける厚遇を含め、どうにか応援したいのだと話している。詳細はまだ煮詰まっていないが、9月22日、23日の2日間スポーツランドSUGOで行われる大会のうち、23日に関しては川崎が絡む試合と日程的にずれている。そこで応援ツアーの実現に向けて関係各位との調整が進んでいるという。

 人気のあるサッカーですら必ずしもスポーツ文化として日本社会に根付いているとはいえない現状がある今、フォーミュラ・ニッポンをはじめとするモータースポーツはスポーツとしての理解を得られているとはいえない状況がある。だからこそ、JRPは自らマスに向けてその一歩を踏み出したのだとも言える。そしてフロントとともにさまざまな企画を楽しんできた川崎サポーターの懐の深さもあり、白井社長をして「大成功でしたね」と言わしめるイベントとなったのである。

 東日本大震災の発災を受け、JRPは2011年9月23日に宮城県名取市において復興支援イベントを開催。フォーミュラ・ニッポンに参戦する全ドライバーが無償で参加し、1150人もの市民とふれあったという。またJRPに対しては「(被災地のために)何かできることはありませんか?」との問い合わせがドライバーから行われているともいう。川崎は東日本大震災の復興支援であるMind−1ニッポンプロジェクトを今も継続して展開している。Win−Winの関係でイベントを成功させたこの両者には、志を同じくする領域がまだまだ存在しているようにも思える。今後、彼らがどんな活動を展開していくのか。非常に楽しみである。

<了>

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著者プロフィール

1972年、大分県中津市生まれ。工学院大学大学院中退。99年コパ・アメリカ観戦を機にサッカーライターに転身。J2大分を足がかりに2001年から川崎の取材を開始。04年より番記者に。それまでの取材経験を元に15年よりウエブマガジン「川崎フットボールアディクト」を開設し、編集長として取材活動を続けている。

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