現代サッカーの過渡期にあるユーロ=ハンドボール化しつつあるサッカーの未来とは
ドルトムント化はせずバランスを重視するドイツ
今大会のドイツはバランスを重視しており、ドルトムント化はなされていない 【Getty Images】
チャレンジをしなかったわけではない。大会直前の5月末にはバイエルンの選手を除くメンバーでスイスとの強化試合に臨み、アグレッシブにリスクを冒すサッカーを展開した。ドルトムントからもフンメルスのほか、マリオ・ゲッツェ、マルセル・シュメルツァーが先発、イルカイ・ギュンドアンも後半頭から出場している。しかし、結果はスイスの鋭いカウンターを食らい、3−5で敗戦。センターバックの1人がサイドへ引き出され、薄くなった中央を突破されるという、ドイツサッカーにおける失点の何割かを占めるであろうパターンをまざまざと見せ付けられた。
昨シーズンのチャンピオンズリーグのF組でドルトムントが勝ち点4の最下位に沈んだこと、さらに若い選手の国際経験の少なさなどを含め、まだ、ドイツ代表がドルトムント化して世界のタイトルを獲得するには時期尚早なのかもしれない(バイエルン化という声もあるかもしれないが、バルサ同様、外国人のスペシャルな選手が戦術の中心になっていると考え、ドイツのモデルケースにはあえてドルトムントを挙げた)。
筆者は、「今大会は現代サッカーの過渡期にあるのではないか」という印象を抱いている。現代サッカーはポゼッション戦術が浸透したことで、中盤の無駄な攻防を避け、お互いのゴールに近い位置で攻守を繰り出す、いわばハンドボール化しつつあると伝えられている。今後はアタッキングサードからいかに仕掛けるのかという部分により焦点が当たるだろう。しかし、今はそこにチャレンジする段階でリスクをうまく消化できず、やむを得ずバランスを保ってリスクの少ない攻撃を選択しているチームが多いようにも感じられる。
準決勝と決勝を合わせて残り3試合。どのチームが優勝するのかも、もちろん注目しているが、サッカーの未来を感じさせてくれる好ゲームを楽しみに待ちたい。
<了>