石川遼が米国遠征で手にしたチャンスとシード権への重圧

米ツアーの制度変更も背景に シードを取るなら今季が勝負

遠征2戦目の「ザ・メモリアルトーナメント」では強豪の中でトップ10に入る健闘を見せた 【Getty Images】

 米ツアーは、来年から大きく制度を変更する。現在、フォールシリーズとして開催されている10月、11月のトーナメントを開幕として、年度をまたいだシーズン制にした上、Qスクールから入る選手に関しては、とりあえず下部ツアーのネーションワイドツアーに出る資格しか与えないなどの改革である。

 今年のマスターズでローアマチュアになったパトリック・カントレイ(米国)がプロ宣言してトラベラーズ選手権に臨んだのも、そうした改変をにらんでのものだろう。石川としても、やはり制度変革の前にシードを確定しておきたいという思いがあったはずだ。
 それがプレッシャーになっていたとは思えないが、全米オープンの初日15位タイからの予選落ちや、トラベラーズ選手権での初日の出遅れなど、内容からすると得意のアプローチにさえがない結果だったように見えた。

「飛距離より精度」――方向転換への試行錯誤

 これまでの石川のコースマネジメントは、ドライバーでとにかくグリーンの近くまで運んで、ウェッジで寄せてバーディーチャンスをつくるというもので、そのために飛距離を伸ばす努力を重ねてきた。しかし、最近は「今から20ヤード、30ヤード伸ばすのは現実的ではない」と、飛距離より精度を重視する方向性を打ち出している。飛距離では平均的な選手ながらワールドランクの首位を守るルーク・ドナルド(英国)に触発された方向転換だ。当然、今までとは違った緻密なコースマネジメントが要求され、「今後の課題になると思います」と石川も発言している。まだしばらくは試行錯誤が続くだろう。

 技術面にせよ、マネジメントの面にせよ、こうした試行錯誤を練習ならともかく、実戦で試すのがスコアメークの妨げになっているのではないかとする批評を耳にすることがある。しかし、「いくら練習でできても、試合でできなければできないのと同じ」というのは石川家の家訓でもある。臆せずトライし続ければ、これぞ石川遼のゴルフと言えスタイルが確立できるはずだ。

 今回の5試合を終えて、シードに関しては「確定というところまでいきたかった」と石川。しかし、90万ドルはもうすぐ手の届くところまで来ている。来季の米ツアーのシード権はほぼ掌中にしたと言っても良いだろう。昨年、ルーク・ドナルドは、欧州と米の両ツアーの賞金王になった。石川遼も……、と期待してしまうのは、期待のし過ぎであろうか。

<了>

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著者プロフィール

長らく週刊ゴルフダイジェストでトーナメント担当として世界4メジャーを始め国内外の男子ツアーを取材。現在はフリーのゴルフジャーナリストとして、主に週刊誌、日刊誌、季刊誌になどにコラムを執筆している。

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