「肉でも魚でもない」チェコに躍進は期待できず=チェコ 1−0 ポーランド

これ以上の成績を収めるとは考えにくい

グループ首位通過を決めたチェコだが、手堅いだけのチームではこれ以上の成績は望めない 【Getty Images】

 チェコは、ポーランド相手に1−0で当然の勝利を手にし、最も簡単だと言われるグループAを首位で突破することができた。結果だけを見ると立派な成功に思えるが、試合内容に目を移すと、彼らはポーランド戦の後半でしか、好パフォーマンスを見せることができなかったのだ。グループリーグ3試合を通じても、彼らは調和と安定性を欠いていた。チームがうまく機能していたのは、ロシア戦では試合序盤とバツラフ・ピラルがゴールを決めた後半直後だけ、ギリシャ戦では相手の急造ディフェンスラインが統率を欠いているうちに2ゴールを奪った立ち上がりの時間帯だけだった。そして、運命のグループリーグ第3戦では、勝たなければ突破の望みがない開催国ポーランドの精神的重圧に助けられた感が否めない。おかげでチェコは、前半こそ非常に遠慮がちな戦いを演じたが、後半は完全に試合の主導権を握ることができた。とはいえ、決して手放しで喜べるような内容ではなかった。

 ドイツ語には、こんな言い回しがある。「Weder Fleisch, noch Fisch(肉でも魚でもない)」。わたしの母国語であるセルビア語にも、「Niti smrdi, niti mirise(くさくもないし、良いにおいでもない)」という、似たような表現がある。おそらく、皆さんの日本語にも同じような格言があることだろう。これら2つの慣用句は、分類しにくい人物に対して使われる。そして、今のチェコ代表にも当てはまる言葉である。彼らに名札を付けなくてはいけないのなら、「手堅いチーム」となるだろう。だが、それ以上でもそれ以下でもない。そして、手堅いだけでは、ユーロ(欧州選手権)のような大舞台で輝かしい成功を収めることはできない。準々決勝進出はチェコにとってすでに上出来な成績であり、彼らがこれ以上の成績を収めるとは考えにくい。

世界的な選手を数多くそろえていた04年のチーム

 チェコが、優勝候補の一角としてユーロに参加する時代は終わったのだ。わたしは、ユーロ2004のポルトガルでの試合、パベル・ネドベド、カレル・ポボルスキー、ミラン・バロシュといった選手が、オランダ相手に0−2から3−2の逆転勝利を収めた試合の歓喜を今でも覚えている。同時に、準決勝で守備的なギリシャの前に散った悔しさもだ。だが今夜、わたしがブロツラフで抱いた感情は、それらの興奮には遠く及ばなかった。比較することさえできない。04年当時、チェコは世界的な選手を数多くそろえるファンタスティックなチームだった。しかし今、わたしの目の前にいるチームは、平凡な代表チームなのだ。

 何しろ今のチェコは、GKのペトル・チェフがここ8年間で7度のチェコ年間最優秀選手に輝くようなチームなのだ。そして、予選でのチーム得点王は、PKからの3点を含む4ゴールを決めた左サイドバックのミハル・カドレツであり、バロシュ、トマーシュ・ペクハルト、トマーシュ・ネチド、ダビド・ラファタといったFW陣は4人合わせて2ゴールだった。これが、今のチェコ代表の現状なのだ。

 チェコで最高の“フィールドプレーヤー”であるトマーシュ・ロシツキーは、孤軍奮闘して何度か輝かしいプレーを見せかけたが、コンディションが万全でないのは明白だ。ギリシャ戦には前半45分間だけしか出場できず、このポーランド戦はアキレスけんの負傷で欠場した。彼がけがに悩まされることが多いのは非常に残念なことだ。あと数カ月で32歳を迎えるロシツキーにとって、今大会は主要国際舞台での白鳥の歌(最後の晴れ舞台)となる可能性が高いのだから。

もっと魅力的なプレーを披露するかもしれないが

 決して、チェコが決勝トーナメント進出にふさわしくないチームだというわけではない。ただ、どうしても彼らのプレー内容には確信が持てないのだ。世界最高のGKの1人であるチェフにしても、ギリシャ戦で不用意に飛び出してボールを取りこぼし、1点差に迫られるテオファニス・ゲカスのゴールをおぜん立てしてしまう始末だからだ。

 しかし、もしかすると、すでに現実的な目標を達成した上で臨む準々決勝では、全くプレッシャーを感じず、失うものがない状況下で今までよりもっと魅力的なプレーを披露してくれるかもしれない。ピラルと、この試合で決勝点を決めたペトル・イラチェクは好調を保っている。ほかの選手たちも彼らと同じようなレベルでプレーできれば、われわれは今までとは違うチェコを目の当たりにするかもしれない。だが、少なくとも今のわたしは、そうなることが想像できない。

<了>

翻訳:田島大(フットメディア)
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著者プロフィール

1961年2月13日ウィーン生まれ。セルビア国籍。81年からフリーのスポーツジャーナリスト(主にサッカー)として活動を始め、現在は主にヨーロッパの新聞や雑誌などで活躍中。『WORLD SOCCER』(イングランド)、『SID-Sport-Informations-Dienst』(ドイツ)、日本の『WORLD SOCCER DIGEST』など活躍の場は多岐にわたる

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