岡崎と内田の右サイドがもたらすもの=ザックジャパンの新たな武器になり得るか

元川悦子

どうやってお互いの良さを生かすか

内田(写真)は岡崎のストロングポイントを視野に入れ、サポートに徹することを第一に考えているという 【写真:中西祐介/アフロスポーツ】

 こんな事情もあり、2人は今、どうやってお互いの良さを生かすかを積極的に話し合っているという。

「ウッチー(内田)ともよく話してますけど、まずは一発でおれが裏を取れるのが一番いいかなと。もちろんコンビネーションは必要だけど、仕掛けた時にウッチーが空くわけだから、やっぱり自分の基本は仕掛けること。おれのサイドは『ゴリゴリ行く』のが特徴ですからね」と岡崎が言えば、内田も「オカちゃん(岡崎)は完全に使われるタイプなんで、僕が後ろでサポートすればいい。むしろ僕が行かない方がオカちゃんが生きるくらい。そういう使い方が分かってきたのは大きいと思います」と相互理解が進んでいることを強調する。岡崎のストロングポイントを視野に入れ、内田はサポートに徹することを第一に考えているようだ。

 とはいえ、内田自身ももともとは「使われるタイプの右サイドバック」。日本代表では、中村俊輔のようなタメを作れる選手に攻め上がりのタイミングを図ってもらいながら、生かされてきた過去を持つ。シャルケ04でも「前で起点を作ってくれる(ジェフェルソン・)ファルファンとコンビを組んだ時が一番いい仕事をする」と評されている。ゆえに、周りに関係なく前へ出るFWタイプの岡崎と縦関係を構築することに、当初は多少の戸惑いを感じたことだろう。

 お互いの感覚的なギャップを埋めるには、練習を重ねるしかない。だが、ザックジャパン発足後の日本代表は、長い時間を共有できる機会が2011年のアジアカップしかなく、思うように連係向上を図れなかった。しかし、今回は最終予選3連戦。先月23日のアゼルバイジャン戦を含めると、3週間近い調整時間を得られた。彼らはピッチでボールを蹴るだけでなく、宿舎でコミュニケーションをとる機会も持てた。ヨルダン戦で日本の右サイドが輝きを放ったのも、この効果が大きかったといえる。「僕がうまくサポートすれば、右でも十分崩せるなっていう手応えを持てた」と内田も試合後、うれしそうに話していた。

 岡崎の方も、内田をできるだけ生かそうという意識を日に日に強めている。これも前向きな要素である。

「仕掛けながらコンビネーションを作ることは意識してます。裏を狙ったり、インサイド、アウトサイドのカットインでゴールを狙ったり、外に抜け出してクロスとか、いろいろ工夫をすれば、ウッチーや圭佑を使うこともできる。ハセさん(長谷部)からボールが出てくるタイミングでウッチーが上がって、おれが中に入るっていう形もここへきてすごく良くなってきた。そういうのを増やせればいい」と本人も意欲的にコメントしていた。

キーポイントになる右からの崩し

 2人の関係がさらに向上し、同サイドにいる本田や長谷部らのサポートが厚くなれば、右サイドの迫力は一段と増すだろう。香川と長友の知名度が上がれば上がるほど、対戦相手は左を消す意識を確実に強めてくる。それだけに、右からの崩しは今後の日本攻撃陣のキーポイントになるはずだ。

 12日に行われる最終予選第3戦のオーストラリア戦は、まさに彼らの真価が問われる重要な一戦といえる。

「アジアカップの決勝もそうだったけど、相手は体もでかいし、瞬間的なスピードもあるから、かなり崩しにくいと思います。でもサイドで人数をかけることができれば、チャンスは作れるはず。前回の対戦時は佑都のところで結構崩せてましたし、そこが1つのアドバンテージだと考えてますけど、今回、向こうがそこをどれだけ警戒してくるか分からない」と本田も神経を尖らせていた。左サイドが徹底マークを受ける分、右サイドを機能させなければ、最終予選最大のライバルからアウエーの地で勝ち点3を得るのは非常に難しいことなのだ。

 それを、岡崎と内田も十分認識している。

「ここまでは相手が相手だったけど、攻撃のイメージの共有は進んでいる。僕としては、むしろもっと右に来てほしいと思えるようになった。右からどんどん崩せば、左よりもできるんじゃないかなという手応えもあります。そういう意味でも次のオーストラリア戦がすごく大事になる」と岡崎はあらためて決意を固めていた。そして内田も「向こうはアジアカップの決勝で負けてるから、すごい意気込みで来ると思う。今までの相手はアジアでしたけど、オーストラリア相手に今まで積み上げていたことができれば、すごく面白い」と目を輝かせた。

 日本の新たなホットラインが宿敵相手にどんなプレーを見せるのか。ヨルダン戦の4点目のように、人数をかけた分厚い攻撃からゴールにつなげることができるのか。そこに注目しながら、オーストラリアとの大一番をじっくり見たい。

<了>

2/2ページ

著者プロフィール

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。Jリーグ、日本代表、育成年代、海外まで幅広くフォロー。特に日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から5回連続で現地へ赴いた。著書に「U−22フィリップトルシエとプラチナエイジの419日」(小学館刊)、「蹴音」(主婦の友社)、「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年」(スキージャーナル)、「『いじらない』育て方 親とコーチが語る遠藤保仁」(日本放送出版協会)、「僕らがサッカーボーイズだった頃』(カンゼン刊)、「全国制覇12回より大切な清商サッカー部の教え」(ぱる出版)、「日本初の韓国代表フィジカルコーチ 池田誠剛の生きざま 日本人として韓国代表で戦う理由 」(カンゼン)など。「勝利の街に響け凱歌―松本山雅という奇跡のクラブ 」を15年4月に汐文社から上梓した

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント