パワーを蓄えるユーロ開幕前夜のキエフ 中田徹のユーロ通信

中田徹

東京の国立競技場のような好立地

8車線あるフレシチャーチク通りも歩行者天国となり、ファンフェスタとスタジアムをつないでいる。キエフも今、ユーロのキックオフを待ちわびている 【中田徹】

 キエフ国際空港の入国審査は簡素化され、入国カードも税関申告書の提出も必要なし。拍子抜けするほどだった。

 ユーロ(欧州選手権)開幕前夜のキエフだが、当地におけるキックオフは6月11日のウクライナ対スウェーデン戦まで待たねばならず、今は盛り上がりのパワーを蓄えている状況だ。

 代表チームの試合会場がウクライナのハルキフに決まった時、オランダでは「遠い」、「不便だ」と失望の声が相次いだ。オランダ代表のファン・マルワイク監督も、「サポーターにとってはポーランドじゃなくて残念。これで応援に来るサポーターの数が減るだろう」とコメントしていた。とりわけ宿泊施設の少なさ、高さは致命的でチケットの売れ行きは伸びず、つい最近もサポーター向けに「まだオランダ対デンマークのチケット(6月9日)が余ってます」というアナウンスがあったばかりだった。

 ところが実際にウクライナに着いてみると町の雰囲気も非常に明るく、キエフで2泊したアパートメントも快適。英語の普及率は低いらしいが、思っていたより通用する。英語が分からない相手でも一生懸命に対応してくれるので、何とか意思は通じている。

 ありがたいのはキエフのスタジアムが町からとても近いこと。独立広場のファンフェスタが日本での渋谷あたりだとすると、そこから伸びるメーンストリート、フレシチャーチク通りは国道246号。さらに小道に入ると巨大なスタジアムが見えて来る。まるで東京の国立競技場のような好立地だ。

美人を見かけることも……

 地下鉄の駅もスタジアムの目の前に着く。欧州標準時から1時間進んでいるため、21時45分(日本時間27時45分)キックオフの試合が多いウクライナだが、キエフのスタジアムの立地の良さは帰りのことを考えると大いに助かる。

 ここのところ、キエフは少し冷え込んでおり、雨も降っている。屋台で食事をとっていても風がびゅーびゅー吹き込んで来る。それでも、おいしい水餃子が体も心も温めてくれる。週末になるとグッと気温が上がる見込みだ。

 日本でも報道されたが、オランダのエネルギー会社が、「ウクライナには美人が多くて男性も誘惑されるから、ユーロ期間中は旦那を現地に行かせず家に閉じ込めて応援させましょう」というテレビコマーシャルを流し、それに対してウクライナ人たちが不快感を表した。しかし、それも仕方ない。キエフでは、まるで渡辺満里奈さんや坂口良子さんのような美人を見かけることがある。

 訪れたのはまだキエフの一都市だけだが、ウクライナに対する印象は大きく変わった。キエフはとても大きな町だが、見どころは歩いて回れる範囲に集まっている。スタジアムもまた町の中。手のひらサイズの快適な滞在になりそうだ。幸い、ホテルやアパートメントも最近空きが出始めてきた。

<了>
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著者プロフィール

1966年生まれ。転勤族だったため、住む先々の土地でサッカーを楽しむことが基本姿勢。86年ワールドカップ(W杯)メキシコ大会を23試合観戦したことでサッカー観を養い、市井(しせい)の立場から“日常の中のサッカー”を語り続けている。W杯やユーロ(欧州選手権)をはじめオランダリーグ、ベルギーリーグ、ドイツ・ブンデスリーガなどを現地取材、リポートしている

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