ロンドン前哨戦で吉田の連勝がストップ 五輪出場選手の4者4様の結果=女子レスリングW杯

増渕由気子

マットに涙のキス! 浜口がロンドンで引退示唆

「日本で試合をするのが最後だと思った」と語った浜口はマットにキス。 【写真は共同】

 アテネ、北京五輪72キロ級銅の浜口京子は、“前哨戦”で喜びと悔しさを一変に味わった。予選リーグ、決勝の全4試合で1勝3敗、うちフォール負けが2試合と負けこんでしまったが、唯一の白星は北京五輪女王のワン・ジャオ(中国)から、もぎ取ったもの。第1ピリオドは落としたが、第2ピリオドではタックルがさえ、最終ピリオドはスタミナが切れたワンを場外へ押し出すなど、浜口らしさ全開の試合だった。3月のアジア予選(カザフスタン)でも完敗していただけに、「最高の喜びを感じられた。タックルを躊躇(ちゅうちょ)する自分とはお別れです」と京子スマイルも飛び出した。
 
 ただ、勝利の代償も高くついた。ワン戦で2箇所ほど負傷したことが影響し、大会最終日の決勝ではフォール負けで「何もできなかった」と唇をかみ締める結果になってしまった。
 試合終了後、1人マットに登った浜口は、マット中央にキスをした。意味を問われると20秒以上沈黙した後、涙を流して、「ロンドン五輪がありますけど、日本で試合をするのが最後だと思ったので、負けても勝っても最後は自分がやりたいことをやろうと思った」と“日本”に向けて別れの儀式だったことを明かした。
 ラストマッチとなる可能性が高くなったロンドン五輪で、浜口は3大会連続のメダル獲得を成し遂げ、レスリング人生の集大成を飾ることができるか。

小原、48キロ級悲願の金メダルなるか

 女子レスリングはアテネ五輪で正式種目に採用され、今大会で3度目の五輪を迎える。過去2大会で金メダルが取れる力がありながら銀にとどまっている階級が女子48キロ級だ。今回は小原が出場するが、“日本の3度目の正直”は果たせるか注目が集まる。
 
 小原は元51キロ級の選手で、同時代には6度も世界女王になっている折り紙つきの選手。2度の引退を経て、ロンドン五輪を目指して10年に48キロ級で再復帰した。10年、11年と世界女王に君臨し、30歳で迎えるロンドン五輪では、吉田、伊調と同じく金メダルの本命として臨む。だが、48キロ級は世界でも層が厚くてレベルが高く、日本選手に見劣りしない好敵手が数多くいるのが特徴だ。

 今大会でも小原と互角に戦ったのは中国とロシア。ともに1ピリオドを先取さてしまった。「一番の反省点は、グラウンドが全然だめ。グラウンドでも失点したので、ディフェンスを磨き、アンクルホールドで攻撃もできるようにしたい」

 ただ、収穫は十分にあった。他の3選手が3度目の五輪と経験があるのに対し、小原は初代表。10年に初めて五輪マークをつけて臨んだ広州アジア大会では、国際戦初の黒星を喫した。「五輪代表に決まってから、すごく不安があった」と語るなど、不安な状態で迎えたW杯で全試合勝利できたのは大きかった。予選リーグは3試合ともに1番手を務めて日本に勢いをつけ、決勝は4番手としてチームの優勝を決定付けた。「課題も見つかり、五輪に対して自信とやる気が出てきた」と小原にとって、W杯は五輪へのいいステップになったようだ。

<了>

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著者プロフィール

栃木県宇都宮市出身。作新学院高〜青山学院大・文学部史学科卒業。高校まで剣道部に所属し、段位は2段。趣味は、高校野球観戦弾丸ツアーと、箱根駅伝で母校の旗を携えての追っかけ観戦

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