“もうひとつのCL決勝”に臨む熊谷と大滝=日本人女子選手が欧州最高の舞台で覇を競う

栗原正夫

五輪での秘密兵器に成り得る可能性も

リヨンではバックアッパーの大滝(右)だが、欧州最強チームで日々研さんを積んでおり、五輪ではなでしこジャパンの秘密兵器になる可能性を秘めている 【写真:アフロ】

 フランフルトと顔を合わせるのが3年連続で決勝に駒を進めた昨季王者のリヨンだ。こちらは、男子でも有名なオリンピック・リヨンの女子チーム。近年はクラブの大きさ(資金力)をバックに、フランスを中心とした各国の代表選手を集め、急速な強化を進めている。

 そこでプレーするのが、今春、早稲田大学を卒業したばかりのFW大滝麻未だ。なでしこジャパンでのプレー経験はないものの、昨年の夏季ユニバーシアード中国大会で、6試合8ゴール(得点王)で準優勝に貢献するなど、学生時代には出場数を上回るゴールを挙げてきた。準決勝のポツダム戦では、出場機会こそなかったものの、これまで公式戦4試合に出て4ゴール、フランスカップ準決勝のアラス戦(2部)ではハットトリックも決めている。

 だが、数カ月前まで学生だった大滝が、すぐにポジションを確保できるほど、リヨンは甘い場所ではない。1トップを争うライバルは、昨年の女子W杯でなでしこジャパンと対戦し、ロンドン五輪でもグループステージで同居するスウェーデン代表の絶対的エース、ロッタ・シェリン。大滝の置かれた立場は、あくまでバックアッパーだ。

 しかし、すでにフランスカップを制し、リーグでも16勝3分け(なんと得失点差は+100!)と三冠が現実味を帯びてきた最強リヨンで、その実力の一端でも示せればなでしこジャパン入りはもちろん、一気にロンドン五輪での秘密兵器に成り得る可能性も少なくないだろう。

 大滝自身、日本のトップリーグを経ずに、早稲田からリヨンへと大きなステップを踏んだだけに「戸惑いがないわけじゃない」。しかし、「自分で選んだ道。こんな経験誰もができることじゃない。少しでもチャンスがあるなら、チャレンジしたい」と気負わずに前を見据えているだけに楽しみな存在だ。

3年連続の決勝進出はならず

 一方、そのリヨンに敗れ、3年連続の決勝進出を前に涙をのんだポツダムには、なでしこジャパンのFW永里優季がいたことも触れておきたい。

 一昨シーズンにCL優勝を経験したものの、そのときはPK勝ち。昨年は自らの活躍(準決勝で2ゴール)で決勝進出を決めるも、試合直前に打った痛み止めの注射のミスで欠場を強いられた。それだけに、今季はリヨンとのホーム&アウエー戦に勝って、決勝に進みたい思いが強かったはず。しかし、永里自身「大人と子どもぐらいの差があった」と振り返ったファーストレグでの1−5の大敗が響き、セカンドレグをスコアレスドローに終えるも、あえなく敗退が決まった。「結局、この2試合が今シーズンのポツダムを象徴するゲームになったと思う。ファーストレグがチームとして悪い状態で、セカンドレグがいいとき。それだけ差が出ちゃう。試合ごとにどうなるか分かんない」

 今季も残り2試合となったブンデスリーガでは首位に立つものの、昨年に比べるとドイツ代表FWバイラマイら主力数人が抜けた穴が大きかったのは明らかだ。

 女子サッカーは欧州でも決してメジャーではない。しかし、欧州サッカーはバルセロナやレアル・マドリーだけじゃないし、CL決勝はバイエルン対チェルシーだけじゃない。“もうひとつのCL”にも、また違った面白さがあるものである。

<了>

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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