【ラグビー/NTTリーグワン】石巻で10年越しの公式戦開催。 多くの人の思いを胸に、それぞれのネクストステージへ<浦安DR vs GR東葛>

【©ジャパンラグビーリーグワン】

ディビジョン2のレギュラーシーズン最終戦となる1~3位順位決定戦第3節。浦安D-Rocks(以下、浦安DR)が、セイホクパーク石巻(石巻市総合運動公園)石巻フットボール場でNECグリーンロケッツ東葛(以下、GR東葛)と対した一戦は、48対28で浦安DRが勝利し、2年連続2度目のディビジョン2優勝を飾った。

話は10年前にさかのぼる。2014年9月21日、ジャパンラグビー トップリーグ2014-2015シーズンのファーストステージ第5節。NTTコミュニケーションズシャイニングアークスとNECグリーンロケッツ(当時)の試合に、石巻フットボール場は沸いていた。石巻でトップリーグの公式戦が行われたのは初めてのことであり、東日本大震災の直後から自衛隊の車両基地として使用され、砂利が敷き詰められていたグラウンドも前年に改修工事を終えて、石巻のラグビーにようやく『復興』の光が差してきた時期でもあった。

あれから10年が経った。石巻では2回目となるトップカテゴリーの公式戦を終えて、石巻ラグビーフットボール協会会長の髙橋到さんは、選手が去ったあとのグラウンドを見つめながら言った。

「NECさんも、NTTさんも、東日本大震災のあとからサポートしてくださっていましたので、両チームとはずっとつながりがあったということになります。今回こうして久しぶりにトップの試合を開催できたのは良かったです。私たちのほうも課題がたくさん見えたので、一つずつクリアしていって、次につながるように。いや、次の世代につなげていかなければ、という気持ちです」

トップカテゴリーのチームが輝きを放つその足もとには必ず、豊かなラグビー文化の土壌と、連綿とつむがれてきた歴史がある。そして、その土を耕し、歴史を受け継いできた、数多くの戦士たち――。

浦安DRもGR東葛も、今季に残すはD1/D2入替戦の2試合のみ。チームを支えている多くの人の思いを感じながら、次につながる試合を、次につなげるための試合を。その先に、それぞれのネクストステージが待っている。

(平野有希/Rugby Cafe)

浦安D-Rocksのヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ(右)、飯沼蓮キャプテン 【©ジャパンラグビーリーグワン】

浦安D-Rocks
ヨハン・アッカーマン ヘッドコーチ

「まずは勝利できたこと、(ディビジョン2優勝の)トロフィーを掲げることができてうれしいです。試合のほうは、NECグリーンロケッツ東葛に先制されたものの、そこから落ち着きを取り戻し、スコアが必要なときにしっかりスコアを重ねることができたことにポジティブなものを感じました。セットピースやディフェンスで改善すべき点はありますが、それを踏まえても、アタックでいい面が出たこと、試合のプランを遂行できたこと、(大事な場面で)いい判断ができたことには満足しています。

最後に、サポーターのみなさん。(レギュラー)シーズンをとおして浦安D-Rocksを応援してくださったことに、あらためて感謝申し上げます。自分たちには達成しなければならない目標がまだ残っています。残りの2試合に向けて、万全の準備をしたいと思います」

――試合後のハドルでは選手たちにどんなことを話したのでしょうか?
「まずは試合に勝てたことを喜び、感謝しようと言いました。勝利に対する感謝の気持ちを忘れてはいけません。その上で、一つの仕事(D2で優勝すること)は終えたので、次の仕事に向けてリカバリーをすること、これからの(入替戦を終えるまでの)3週間はチームファーストで行動しようと。自分たちがコントロールできるのは、いつも目の前のことです。過去のことも、未来のこともコントロールできません。次に何をするのか、そこに集中しようと話しました」

浦安D-Rocks
飯沼蓮キャプテン

「今日の試合は風が強い中で、前半は風下からの難しいスタートになりましたが、フォワードがモールで流れをつかんでくれました。どんなに困難な状況になっても、全員がコネクトして、次の仕事に集中するという、今季の練習でずっとやってきたことができたのはポジティブでした。ただ、点差が開いてからは、ペナルティが多くなったり、スイッチが切れてしまう場面があったので、80分間とおして、自分たちのスタンダードでラグビーができるように、もっと意識を高めて練習していきたいと思います」

――D2優勝が決まった瞬間はどんな気持ちだったのでしょうか?
「ここ(D2の優勝)は通過点なので。チーム全員が、ここで喜ぶというよりも、気持ちを切り替えて次に向かうという表情をしていて、(入替戦への)準備ができているなと思いました」

NECグリーンロケッツ東葛のウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ(右)、アセリ・マシヴォウ選手 【©ジャパンラグビーリーグワン】

NECグリーンロケッツ東葛
ウェイン・ピヴァック ヘッドコーチ

「前半は先制したにもかかわらず、規律を保つことができずに、本来あるはずのポゼッションを失って、相手にプレッシャーを掛ける機会を失ってしまいました。一方で、後半は自分たちのやりたいラグビーを見せることができた場面もあって、いいトライも取れました。今日の試合に出た若い選手を含めて、それぞれの選手個人のプレーは良かったですし、ポジティブに感じています」

――特に後半に関して、スタッツは悪くないのに点が取れなかった。そこにはどんな理由があると思いますか?
「今日の試合のような強風の中では、ポゼッションを高めるために、正しいエリアで、正しいプレーを選択し、スコアを重ねることが必要ですが、規律(の悪さ)がそれを阻んでしまいました。さらに、ポゼッションを失ったことで、一人ひとりのタックルも遂行できなくなりました。規律に関しては、次に向けて正していきたいと思います」

――D1/D2入替戦に向けて、リコーブラックラムズ東京(以下、BR東京)をどの面で上回れると思いますか?
「BR東京はセットピースが強いチームですので、まずはそこに目を向けること。それができた上で、自分たちのポゼッションを高めること。そして、我慢してフェーズを重ねることができれば、チャンスをモノにできると思っています。タイトファイブ(フッカー、プロップ、ロックの5人)にはビッグゲームだと認識してもらうこと、一対一のタックルを外さないことと、ペナルティを減らすことが大事です。いよいよエキサイティングな局面がやってきました。160分間(入替戦の2試合の合計時間)をどう使うか、しっかり練って、準備したいと思います」

NECグリーンロケッツ東葛
アセリ・マシヴォウ 選手

「ウエイン(・ピヴァック)ヘッドコーチが言ったとおり、規律のところが課題で、ペナルティも多かったです。(試合では)いい場面もたくさんあったので、ディシプリンを改善していけば、(入替戦では)いい結果が出ると思います。若い選手も、ベテラン選手も、みんなで一つになって、次の試合に向けた準備をしていきたいと思います」
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著者プロフィール

ジャパンラグビー リーグワンは、「あなたの街から、世界最高をつくろう」をビジョンに掲げ、前身であるジャパンラグビー トップリーグを受け継ぐ形で、2022年1月に開幕した日本国内最高峰のラグビー大会です。ラグビーワールドカップ2023を控え、セカンドシーズンとなるリーグワン全23チームの熱戦をご期待ください。

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