“もうひとつのCL決勝”に臨む熊谷と大滝=日本人女子選手が欧州最高の舞台で覇を競う

栗原正夫

ドイツ語を駆使して味方へコーチング

準決勝のアーセナル・レディース戦でフル出場し、勝利に貢献した熊谷(左)。ドイツ語を駆使したコーチングも光った 【写真:アフロ】

 フランクフルト対リヨン。この対戦カードを見て、それが何を意味しているか分かる人は、サッカーファンであっても少ないだろう。

 今週、ミュンヘンで行われるチャンピオンズリーグ(CL)決勝(19日、アリアンツ・アレーナ)は、バイエルン対チェルシーだけではない。こちらもれっきとしたUEFA(欧州サッカー連盟)冠の大会。2009年に大会方式が一新され、3年目を迎えたUEFA女子CL(17日、オリンピアシュタディオン)である。

 例年同様、本家CLの2日前に、同都市で開催される。そして、今年は両チームに、日本人選手がいることで小さいながら話題となっている。

 フランクフルトの正式名称は1.FFCフランクフルト。かつて高原直泰や稲本潤一がいたアイントラハト・フランクフルトとの関係はなく、女子単独のサッカークラブである。ここに所属するのは、なでしこジャパンのメンバーでもある熊谷紗希だ。昨年の女子ワールドカップ(W杯)終了後に浦和レッズレディースから移籍すると、1年目ながら主力として多くの試合に出場している。

 アーセナル・レディースとの準決勝ではファーストレグにセンターバックとして、セカンドレグではボランチとしていずれもフル出場。トータル4−1での勝利に貢献した。現地で取材した筆者が驚いたのは、以前より落ち着きがあるように見えたプレー以上に、そのコーチングだ。1回3時間、週3日で通うなかで手にしつつあるドイツ語を駆使し、味方に身ぶり手ぶりを交えながら指示を出す姿は、中心選手そのものだった。当初は「サッカーは言葉でするものじゃないと思っていた」と言うが、「言葉ができる方が自分を出せるし、やりやすさが違う」と、学んだドイツ語はピッチで大いに生かされているという。

最大の舞台で出番は回ってくるか

 ただし、171センチとなでしこジャパンでは最も身長の高い熊谷でも、世界的に見れば180センチ代の選手も珍しくなく、決して大きい部類ではない。だからこそ、「1対1の勝負は永遠のテーマ」と語るように、それなりの手応えを感じつつも局面での戦いにはまだ課題は多いとする。

「日本との一番の違いは、パススピードと個の強さ。日本のうまいと、こっちで求められるものは質が違う。狭いエリアでのボール回しなら、わたしはめちゃめちゃ輝けるんですけど、試合になったら、やっぱりキック力やパワーが違う」

 CLに加え、DFBポカール(ドイツカップ)でも決勝に進出し、ブンデスリーガでもシーズン終盤まで優勝争いを演じてきたフランクフルト。だが、20節(全22節、5月6日)に首位ポツダムに敗れリーガ優勝の望みが消えると、12日のポカールでも0−2とバイエルンに屈し、残るタイトルはCLのみとなった。熊谷も、リードを許したポツダム戦の前半終了間際に途中交代すると(点を取りにいく中での戦術的交代)、バイエルン戦では90分間ベンチを温め続け、大事な場面でベンチ行きを余儀なくされた。

 シーズンをいい形で締めくくるためにも、熊谷としてはラストチャンスを手にしたいところだが、果たして最大の舞台で出番は回ってくるだろうか。

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著者プロフィール

1974年生まれ。大学卒業後、映像、ITメディアでスポーツにかかわり、フリーランスに。サッカーほか、国内外問わずスポーツ関連のインタビューやレポート記事を週刊誌、スポーツ誌、WEBなどに寄稿。サッカーW杯は98年から、欧州選手権は2000年から、夏季五輪は04年から、すべて現地観戦、取材。これまでに約60カ国を取材で訪問している

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