南北の壁を越えた“2人のパク”=バーゼルで目標を同じくするコリアンたち

キム・ミョンウ

注目はパク・チソンから“2人のパク”へ

バーゼルに所属するパク・チュホ(左)とパク・クァンリョン。CLでは同じ舞台に立った 【写真:アフロ】

 チャンピオンズリーグ(CL)の決勝戦が間近に迫ってきた。今さら、各チームのCLの戦いぶりを振り返ることもないと思うが、スイス・スーパーリーグ(1部)のFCバーゼルがグループリーグでマンチェスター・ユナイテッドを2−1で下し、初めて決勝トーナメントに進出したのは記憶に新しい。

 決勝トーナメント1回戦はバイエルン・ミュンヘンに2試合合計1−7で敗れたが、今季は早くも4月に国内リーグ優勝を決めて3連覇を達成。15度目のリーグ制覇となり、近年攻撃的なサッカーで飛躍している。

 そんなチームに2人のコリアンが所属しているのを知っているだろうか。

 1人は2009年に鹿島アントラーズ、10年からジュビロ磐田でプレーし、11年6月にFCバーゼルに完全移籍した韓国代表経験のあるDFパク・チュホ。08年に来日し、水戸ホーリーホックでプロになったあと、左サイドバックでの高いパフォーマンスが認められて各チームでレギュラーを獲得。着実に力をつけて欧州クラブへ移籍を果たした。

 もう1人は、パク・チュホと同時期に移籍してきた朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)代表FWのパク・クァンリョンだ。昨年のワールドカップ(W杯)・アジア3次予選にも出場した19歳の若き大型FWで、チームとは5年契約を結んだ。188センチ、83キロと恵まれた体格を生かしたポストプレーやヘディングを得意とし、北朝鮮代表FWの鄭大世(FCケルン/ドイツ)も「おれよりも体格が大きいのに、足元のプレーもしっかりしている。まだ若くてムラがあるけれど、経験を積めば必ず世界で通用するプレーヤーになる」と語っていた。

 これまで、韓国メディアはマンチェスター・ユナイテッド(マンU)所属のパク・チソンについて、CLでの活躍ぶりを何度も報じてきたが、今季はバーゼルの“2人のパク”を大きく取り上げるメディアが多かった。

CLでの「歴史的瞬間」

 そのきっかけとなったのが、昨年9月のCLグループリーグのマンU対バーゼルの試合だ。結果は3−3のドローだったが、その試合でパク・チソン、パク・チュホ、パク・クァンリョンの3選手が同じピッチに立ったのだ。

 パク・チソンとパク・チュホの韓国選手同士がCLで対決したのは初めてで、パク・クァンリョンが北朝鮮選手としてCLのピッチに立ったのも初めてだった。こうした話題を韓国メディアが放っておくはずがなく、新聞、ネットなどは一斉に「歴史的瞬間」と大きく報じた。その背景には韓国と北朝鮮が世界唯一の分断国家ということから、「北と南の選手が同じチームでプレーすることはない」という既成概念があるからだ。

 サッカーをしていなければ会うこと、話すことがない韓国と北朝鮮のパクはかくして、サッカーで目標を同じくするチームメートになった。これは両選手ともまったく想像していなかったに違いない。

 2人の話題が韓国で大きく取り上げられたのは、何もこれだけではない。今年3月13日の米国のスポーツ専門チャンネル『ESPN』のウェブサイトに「コリア・ユナイテッドFC」と題した記事がアップされたときもそうだった。内容はFCバーゼルに所属するパク・チュホとパク・クァンリョンに関するコラムだ。

 そこにはFCバーゼルのハイコ・フォーゲル監督の「2人が入団したとき、北朝鮮から『試合中にほかの選手たちと写真を撮るのは構わないが、2人で一緒にインタビューしたり写真を撮影したりすれば、それはすなわち戦争を意味する』と警告を受けた」というコメントが掲載されていた。これを韓国メディアが取り上げたのだった。

1/2ページ

著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

新着記事

編集部ピックアップ

西郷真央は31位で決勝へ 畑岡奈紗、古江…

ゴルフダイジェスト・オンライン(GDO)

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント