福島擁する女子400メートルリレー、五輪決勝へ必要な個の力=陸上
五輪へ意識が高まる各選手
1走候補の北風、すねの違和感もなくなり、調子を上げる 【写真:北村大樹/アフロスポーツ】
メンバーの組み方が複雑になった発端は、昨年5月のセカンドベストを出した大会以降に北風の古傷が思わしくなくなったことと、昨春に一気にニューヒロインに躍り出た市川が6月以降に足の負傷で代表レースから離脱してしまったことにある。2人が抜けた影響は、昨年7月のアジア選手権(神戸)で優勝はしたが44秒台だったことや、9月の世界選手権(テグ)で惨敗したことに如実に表れた。やはり、1走から北風−高橋−福島−市川で組める体制に持ち込むことが現状のベストということになる。
最新の状況は、トップ選手が顔をそろえての今季初戦となった4月29日の織田記念女子100メートルが1つの判断基準になる。記録はやや物足りなく、けれども昨年の谷間よりは良くなっている、そして生きの良い若手が存在感を増してきた、というのがおおまかな印象だった。日本人順位は上から福島、土井、高橋、北風、市川。この結果がそのままリレー2戦の起用に結びついた。
五輪への出場と決勝進出のためには、個々のレベルアップがもうひと声欲しいところだ。その点を、市川はよく理解しており、意識が高い。リレーチームが強くなるためには、個人種目でも複数が五輪に出場できるくらいのレベルにあることが求められることをよく理解しており、昨年から一貫して「絶対にA標準記録を突破します」という強い気持ちを持ち続けている。この冬もフィジカルトレーニングなどが充実しており、青戸慎司監督も「狙える準備ができています」と自信をのぞかせている。
1走候補の北風は、昨季まではやや残っていた左すねの違和感が今冬はすっかり消え、練習も思う存分積めていることもあり、パフォーマンスは確実に上がっている。「日本選手権ではB標準(11秒38)を狙います」と表情が明るい。
2走の高橋は、絶不調だった昨季前半を乗り越え、苦手のスタートを意識し過ぎない気持の切り替えで、持ち味のダイナミックな走りを素直に表現できるようになっている。静岡では、福島が受けるバトンパスのスタートのタイミングをいつもより一段階早める試みをした。「狙いは記録に挑戦するためです」と言った口調からは、ロンドンに懸ける強い意欲がみなぎっていた。
楽しみな芽はいくつも生まれている。それをロンドンで開花させるため、6月の日本選手権が勝負になる。五輪前にもう一度リレーの記録を狙わせてもらうため、それ以上に五輪での決勝進出という大きな目標達成のため、福島以外に1人でも2人でも標準記録を突破する選手が出てきたら、最高の展開になる。
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