フィギュア団体戦に存在意義はあるのか!?=国別対抗戦で見えた問題点と可能性

野口美恵
 フィギュアスケートの2011−12シーズン最終戦となる、国別対抗戦が4月19〜22日、東京の国立代々木競技場第一体育館で開かれた。日本、カナダ、ロシア、米国、イタリア、フランスの6カ国が参加し、日本が優勝。2014年ソチ五輪から採用される新種目「団体戦」につながる大会としても注目された。

選手にとって国別対抗戦は“披露の場”

国別対抗戦で初優勝を果たした日本チーム 【坂本清】

 国別対抗戦は、2009年に始まり2度目。世界選手権後に行われたため、リラックスしたムードの中で、各選手がシーズンに取り組んだことを見せあう“披露の場”となった。

 ルールは、今季の国際スケート連盟(ISU)大会の上位6カ国が出場。男女シングルは2選手ずつ、ペア1組、アイスダンス1組が、ショートプログラム/ショートダンス(SP/SD)、フリースケーティング/フリーダンス(FS/FD)を滑り、順位ポイントの合計で争う。
 もともとは、各国が4種目すべての選手をバランス良く育て、真のフィギュアスケート大国を目指すことを目的として始まった大会。国別対抗戦に出場することで、各国の強化が進んでいない種目の選手は、国際大会で力を試すチャンスを得る。また、観戦する側も、普段は注目していない種目や選手に触れる機会となる。

 今回の国別対抗戦は、男子、女子、アイスダンスは世界選手権の全メダリストが出場する豪華な顔ぶれ。一方で、ペアは世界選手権の3、5、6、8、11位、不出場というエントリーで、強豪と言われる国でいかにぺアが手薄になっているかがうかがえた。

「国」対「国」の戦いという新しい魅力

チャンを上回り男子1位となり、優勝に貢献した高橋大輔 【坂本清】

 結果としては、各種目とも、世界選手権とは大きく順位が入れ替わる拮抗(きっこう)した戦いが展開された。
 男子は、今季出場した全大会で優勝のパトリック・チャン(カナダ)が4回転で転倒するなどミスがあり260.46点。一方で、高橋大輔がほぼノーミスの演技で276.72点と、点差を付けてトップに立った。高橋は「全く(チャンに勝つ)希望が無いところから近づいて、勝てたことは自信になる」と振り返る。ここ2シーズンは、高得点をたたき出すチャンにどう追いつくかが世界男子の目標だっただけに、世界選手権後とはいえ、男子情勢に影響を与える価値ある勝利だった。

 女子は、世界選手権10度目の出場にして悲願の女王となったカロリーナ・コストナー(イタリア)が、FSで今季珍しくジャンプミスを連発し総合2位。銀メダリストのアリョーナ・レオノワ(ロシア)もジャンプミスで7位に終わった。2人とも「シーズンの最後で疲れが出た」と言い、全選手ともジャンプで合計3つ以上ミスのある展開で、女子にとっては体力的にハードな一面も感じられた。
 その中で、キラリと光ったのは、今季が国際大会初出場ながら世界ジュニア銀メダルを獲得したグレイシー・ゴールド(米国)。ジャンプミスはあったものの、高さのある3回転ルッツや3回転フリップを見せ5位と、堂々のシニアデビューを飾った。

 アイスダンスも、世界選手権2位のメリル・デービス/チャーリー・ホワイト組(米国)がFDで、すべてのエレメンツで全ジャッジから「+2」「+3」を獲得する、至上まれに見る高評価を受け勝利。普段の試合とは違う高揚感が生んだ、名演だった。

 ペアは、SP4位だったメーガン・デュアメル/エリック・ラドフォード組(カナダ)が健闘し、大会最終日のFSで2位に浮上。このポイントが、前日終了時に5位だったカナダを3位の表彰台へと押し上げた。世界選手権5位のペアが、大会全体の順位を左右するという躍進劇は、チーム戦ならではの見どころとなった。

 大会全体としては、種目が終わるごとに各国の順位がめまぐるしく変化し、「国」対「国」を強く意識させたことは、新しい魅力だった。チーム席での選手同士の応援合戦も、国別対抗戦ならではの楽しさ。日本は男女の活躍がチームをけん引し優勝を飾り、会場は大いに盛り上がった。

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著者プロフィール

元毎日新聞記者、スポーツライター。自らのフィギュアスケート経験と審判資格をもとに、ルールや技術に正確な記事を執筆。日本オリンピック委員会広報部ライターとして、バンクーバー五輪を取材した。「Number」、「AERA」、「World Figure Skating」などに寄稿。最新著書は、“絶対王者”羽生結弦が7年にわたって築き上げてきた究極のメソッドと試行錯誤のプロセスが綴られた『羽生結弦 王者のメソッド』(文藝春秋)。

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