桜花賞の栄冠来るか、京大卒の豪州人オーナー=ハナズゴールの馬主、M・タバート氏インタビュー

乗峯栄一

ハナズゴールに携わる職人たちを紹介

[写真7]追い切り前のハナズゴール、その向こうには名門・角居厩舎軍団の姿も 【写真:乗峯栄一】

 チューリップ賞の追い切り日、マイケル夫妻は加藤和調教師の招きで栗東まで見学に行った。[写真4]は前日(2月28日)宿泊施設の栗東会館で食事したあと、花代夫人の撮影でみんなで撮ったものだ。いわば“チーム・ハナズゴール”のメンバーである。前列左から、C.デムーロ騎手、M.タバート・オーナー、後列左から、松田調教助手、加藤和宏調教師、藤岡佑介騎手(もしチューリップ賞で権利が取れて、クリスチャンの免許更新がうまくいかなければ本番は彼の騎乗という話もあった)、栗林代表(外厩RYU RACING RANCH)、野本厩務員となっている。
 ぼくは迂闊にも、このときはマイケルの馬がこんなに有望で、しかも栗東にいるとは知らなかった。ぼくがマイケルの馬と関係者を集中的に撮りだしたのは、チューリップ賞で馬券外した上に、勝ったハナズゴールという馬はマイケルの馬なんだと知った(実はそのとき初めて知った)ときからだ。

[写真5]はチューリップ賞の直後、関東出張馬房に出向いてハナズゴールと野本剛史厩務員のツーショットを撮ったものだ。「チューリップ賞の前はこっちに来てグンと馬の体調が上がってたんですか?」と聞くと、野本厩務員は「いやあ、たまたまハマッたってことじゃないですか」とハニカみながら答える。作業服の汚れと馬を見る視線が“ひたむきに仕事する男”という雰囲気を出している。

[写真8]追い切り直後「どうだったかなあ?」 【写真:乗峯栄一】

[写真6]は桜花賞一週前、3月28日早朝、坂路坂上で撮ったものだ。加藤和調教師が坂を上がってくるではないか。実は大昔の騎手時代、東京で一度ごちそうになったことがあるのだが、もちろん調教師はそんなことは覚えてないだろう。「今度タバート・オーナーのインタビューをするんですが、その記事のために写真を」と頼むと、快諾してくれる。右の人は誰と思っていると、丁寧にも向こうから名刺を出して挨拶してくれた。[写真4]にも出ている、美浦近郊にある外厩RYU RACING RANCHの栗林代表だ。マイケルによると、この外厩の存在も大きいらしい。これも山上先輩オーナーからの紹介で加藤和調教師と相談して、レースの合間とか、ソエが出たときなどはここの外厩を使うようになり、これがいい方向に出ているという。

[写真7]は追い切り前のハナズゴール、後ろを歩くのは角居軍団と和田騎乗ミッキードリームだが、滞在一ヶ月以上になってくると、どんな馬がいても平然としている雰囲気がある。

[写真8]追い切り直後の様子。ハナズゴールは「どうだったかなあ?」と首をかしげているようにも見えるが、53秒8、ラスト12秒2と好時計をはじき出している。

[写真9]は行きも帰りも、いつも一緒のハナズフォーティとのツーショット。フォーティもいい仕事をしている。

オーストラリアからの競馬好き留学生、栄冠は届くか

[写真9]逸材に間違いないハナズゴール、豪州からの新人オーナーに桜の栄冠をもたらすことはできるか 【写真:乗峯栄一】

 何度見返しても、チューリップ賞のハナズゴールは強かった。
「エピセアロームと坂下でぶつかってるんですよね、それでもひるまないところに強さを感じるし、坂上がってからもジョワドら内の馬を突き放しているし・・・・・・、何とかならないですかねえ(笑)」

 GI有力馬のオーナーというのは誰でもそうなんだろうが、自慢なのか、不安なのか、日本語ペラペラのマイケルも混濁したようなことを言う。「表彰式や記念撮影でサングラスをしていたのは、もし涙が出てきたら困るから」とほんとか嘘か分からないことを言う。「イタリア人のクリスチャン(デムーロ)はそんなに英語が得意じゃないけど、二人で話すときはもちろん英語で話します。チューリップ賞で引き上げてくるときにはハナズゴールの首筋を撫でながら“シンカンセン、シンカンセン”とこっちに叫んでましたから(シンカンセンて英語か?)」と話はますます分からない。

 しかしオーナーが若かろうと、キャリアが短かろうと、ハナズゴールが逸材であることは間違いない。オーストラリアからの競馬好き留学生、馬主資格を取ってやっと2年の新人オーナーに果たして栄冠は届くだろうか。

<了>

3/3ページ

著者プロフィール

 1955年岡山県生まれ。文筆業。92年「奈良林さんのアドバイス」で「小説新潮」新人賞佳作受賞。98年「なにわ忠臣蔵伝説」で朝日新人文学賞受賞。92年より大阪スポニチで競馬コラム連載中で、そのせいで折あらば栗東トレセンに出向いている。著書に「なにわ忠臣蔵伝説」(朝日出版社)「いつかバラの花咲く馬券を」(アールズ出版)等。ブログ「乗峯栄一のトレセン・リポート」

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント