エースの木村沙織を支えた東レ優勝の影の立役者=女子バレー
セミファイナルで流した悔し涙
高田(右から2番目)の堅実なプレーがエース木村沙(中央)の守備負担を軽減させた 【写真は共同】
自身が出場し続けて、初めてのファイナル進出を決めたうれし涙ではない。
悔し涙だった。
実はこの試合で、高田のボールジャッジをめぐり、チーム内でひと悶着(もんちゃく)が生じていた。消極的な判断を周囲から叱責(しっせき)され、思わずカッとなった。悔しさをプレーで晴らそうとするも、気負いは力みにつながり、第3セットの途中で峯村沙紀との交代を命じられた。
第4セットからは再びコートに戻り、チームは3−1で勝利を収めはしたが、腹の虫は収まらなかった。
「自分のふがいないプレーと、イライラと、いろいろな感情が積み重なって爆発してしまいました。試合中は切り替えようと意識していましたが、試合が終わったらまた込み上げてしまって……」
試合を終えてチーム拠点の滋賀に戻り、1日のオフで気持ちを切り替えた。
決勝では同じ間違いを繰り返さない。1週遅れで悔しさを晴らすことができたのが、久光製薬との決勝戦だった。
「やっと、自信がついた」
前後に揺さぶるサーブの標的となりながらも、それでも「自分の仕事はサーブレシーブ」と高田は集中を切らさず、中道の元へボールを返すことだけを意識した。
久光製薬の平井香菜子はこう言った。
「思っていたよりも高田さんが崩れなかった。思い通りにいかないことに少しずつ焦りが出てきて、気づいたら東レのペースにはまっていました」
菅野監督が言うように、多彩な攻撃でここぞという場面で得点した木村が優勝の立役者であることは間違いない。だが、決して派手な活躍ではないが、高田の堅実なプレーが木村の守備負担を軽減させ、勝利を引き寄せる一因になったのも確かだ。
勝利の瞬間、悔し涙に暮れたセミファイナル最終日とは異なり、コートの中で喜びの笑顔がはじけた。
「今までのシーズンも自分が出る機会はあったけれど、なかなか勝つことができず、『自分がスタートで出るとよくないのかもしれない』と思ったこともありました。みんなに助けてもらって優勝できた。やっと、自信がつきました」
MVPに輝いた荒木も、影の功労者をたたえた。
「とにかく、ありさがよかった。セミではみんなで泣かせてしまったけど、決勝は本当に頑張ってくれた。ありさのおかげで勝てました」
<了>