家長昭博がKリーグを選んだ理由=助っ人外国人選手としてACL・FC東京戦で凱旋

キム・ミョンウ

アジア制覇を狙う蔚山、攻撃陣の補強で顔ぶれ充実

家長には助っ人外国人選手にふさわしい活躍が期待される。かつてKリーグでプレーした日本人選手を上回ることができるか 【Getty Images】

 さらに、蔚山がACLに出場することも家長にとって大きな魅力だったに違いない。蔚山は今季、リーグ戦とACLの両方を戦わねばならず、そのためにも長丁場を戦い抜く戦力が必要だった。中でも最も力を入れたのが攻撃陣の補強だ。


 昨季の蔚山は、身長196センチの長身FWキム・シンウクや02年ワールドカップ・日韓大会の韓国代表FWソル・ギヒョンなどを擁するも、昨年のリーグ総得点は33。16チーム中11位と決定力に悩まされていた。最終順位も6位と振るわなかったが、その後に6位までのチームで争うプレーオフでチャンピオンシップまで上りつめた。最終的にリーグ戦1位の全北現代に敗れるも、年間順位を2位としてACL出場権を得ている。

 しかし、アジア制覇のためには昨季悩まされた得点力不足は必ず解消しなければならない。そこでキム・ホゴン監督は今季、攻撃の要となる家長を獲得し、さらにJリーグのG大阪からFWイ・グノとキム・スンヨンも呼び寄せた。もちろん、新戦力以外の選手の顔ぶれも充実している。昨季でソル・ギヒョンはチームを離れたが、元京都サンガF.C.で韓国代表経験のあるDFカク・テヒ、元大宮アルディージャのMFイ・ホが在籍しており、Jリーグを熟知した選手が主力としてプレーしている。さらにカン・ミンス、イ・ジェソン、さらにGKのキム・ヨングァンら代表経験者も健在だ。

 今季の蔚山はリーグ戦で負け知らずと、その好調ぶりからも見て取れるように、本気でリーグとACLの両タイトルを狙っている。蔚山は1996年と05年にリーグ戦を制覇しているが、是が非でも新たなタイトルを手中に収めたいというわけだ。

汚名返上へ、助っ人にふさわしい活躍を

 蔚山のサッカースタイルはファンの間で「鉄槌(チョルテ)サッカー」と表現される。その名の通り、破壊力ある攻撃スタイルを駆使することからそう呼ばれているが、家長もその一端を担っていることは言うまでもない。
 蔚山の爆発的な攻撃の起点となり、自らゴールを決めることができれば、監督とチームの信頼を勝ち取ることができるし、ファンもその実力を認めるだろう。

 かつて海本幸治郎(城南一和)、前園真聖(安養LG→仁川ユナイテッド)、大橋正博(江原FC)、戸田和幸(慶南FC)、岡山一成(浦項スティーラーズ)、高原直泰(水原三星)らがKリーグでプレーしたが、「目立った活躍はできなかった」というのが、韓国での印象だ。

 韓国のスポーツ紙記者も言う。
「外国人なので助っ人の役割を担っているわけですが、チームを救うほどの活躍ができたかと言えば、そうではありません。高原は重要な試合でゴールを決めた印象がありますが、すぐにリーグを去っています。家長も1年契約ですが、韓国サッカーファンの脳裏に刻まれるようなゴールを期待したい」

 現在、Kリーグには家長のほかにも、昨季途中から大田シチズンに移籍した馬場憂太(元FC東京など)、今季から江原FCに加入した島田裕介(徳島ヴォルティスから移籍)がプレーしているが、実績からしても当然、家長に注目が集まる。

 これまでKリーグでプレーしてきた日本人選手の“汚名返上”という意味でも、家長には奮闘を期待したいところだ。一方で、ACLのFC東京戦で活躍する姿を見せ、ゴールを決めることができれば、日本への絶好のアピールの場となるのは間違いない。
 家長はさまざまな思いと覚悟を胸に秘め、国立競技場のピッチに立つ。

<了>

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著者プロフィール

1977年、大阪府生まれの在日コリアン3世。フリーライター。朝鮮大学校外国語学部卒。朝鮮新報社記者時代に幅広い分野のスポーツ取材をこなす。その後、ライターとして活動を開始し、主に韓国、北朝鮮のサッカー、コリアン選手らを取材。南アフリカW杯前には平壌に入り、代表チームや関係者らを取材した。2011年からゴルフ取材も開始。イ・ボミら韓国人選手と親交があり、韓国ゴルフ事情に精通している。

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