賛否両論すっきりしない五輪代表選考 その基準の長所、短所とは=マラソン

加藤康博

新たに浮かんだ“追試”問題

横浜国際女子マラソンで尾崎(右)は木崎(左)に敗れたが、名古屋ウィメンズマラソンに出場し、代表の座を手に入れた 【写真は共同】

 このロンドン五輪代表選手発表の席で、尾縣貢日本陸連専務理事は今後も複数の選考レースを継続していくことを明言した。その理由を「強い選手を選べること」と「マラソンの普及、強化を考えた長期的な戦略」としている。しかし、今回の選考でも新たな議論のテーマが浮き上がった。それは選考レースに複数回出場する選手、いわゆる「追試」を巡る考え方である。

 結果的に選考レースを2回以上走った選手は直近のレースが判断の材料となり、明暗を分けた。福岡国際マラソン(11年12月)で日本人トップの川内優輝(埼玉県庁)は東京マラソン(12年2月)で失速し評価を下げ、横浜国際女子マラソン(11年11月)で沈んだ尾崎は名古屋ウィメンズマラソン(12年3月)の結果で代表の座を手にした。

 また世界選手権で7位入賞の堀端宏行(旭化成)、同5位入賞の赤羽有紀子(ホクレン)も再度の選考レースに挑み、その結果が大きく影響して補欠に回った。これまで日本陸連は「追試」の結果に対しては厳しい目で見ていたが、今回は新たな選考の指針を示した。尾縣専務理事は「今回の基準の成否は、ロンドンの結果を見て判断するしかない」と語っているだけに、今後もさらなる議論はされるだろう。また今回該当者の現れなかった「世界選手権3位入賞以内で日本人最上位者を代表とする」という基準も、世界大会でのメダル獲得の難易度が上がっている以上、再考の余地はありそうだ。

マラソン選考がもめるのは人気の証し

 また、レースの内容を選考基準にするのであれば、選考レースはペースメーカーを置かないことも検討すべきだ。五輪本番にはペースメーカーはおらず、スタート直後から駆け引きが始まる。その能力を計るべきだろう。「一発選考」がかなわず、タイムや順位だけでの判断が難しいのであれば、選手の強さやレース運びに関する情報は多ければ多いほどいい。

 いろいろな意見が飛び交い、議論されるのはマラソンが人気種目である証し。その中で万人が納得する選考は非常に難しい。だからこそ、事前に基準を明確にし、選手に示す必要がある。その点ですっきりしない選考だった感は否めない。今大会の結果がどんなに素晴らしいものであっても4年後のために、五輪終了後は選考基準の再検証、そして説明がなされることを強く期待したい。

<了>

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著者プロフィール

スポーツライター。「スポーツの周辺にある物事や人」までを執筆対象としている。コピーライターとして広告作成やブランディングも手がける。著書に『消えたダービーマッチ』(コスミック出版)

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